上 下
92 / 695
第2章 魔ノ国の調査隊

第207話 弟と兄の差と落ちぶれたセリッジ!

しおりを挟む
またしても転移装置で闘技場に移動してきたアレク達。今回は、観客席に観客はおらずアレク達だけが座って観戦するのだ。

「セリッジとパスクワーレ、準備はよいか?もしお互いに言いたいことがあるなら話すがよい」

パスクは、黙ったままセリッジを見据えるだけであった。

「貴様は、何故生きている?使い物にならないよう両足を切り落としたはず。それに、呪いを受けているはずだろうが!」

セリッジは、魔王に全て分かられているのなら隠す必要はないと話し始めるのであった。

「兄上、あの時は嵌めて頂きありがとうございます。まんまと騙されましたよ。何故生きているのか?兄上が再三に渡り睨みつけているアレク様に助けて頂いたからですよ」

セリッジは、観客席にいるアレクを睨みつける。

「死んでいれば良かったものを...ふぅ~なんだ?俺を倒して侯爵になろうというのか?」

パスクは、それを聞いて見当違いも甚だしいと思うのであった。復権するならまず父上であるし、そもそもパスク自体が侯爵になる気など更々ないのだ。

「何を言っているのですか?父上が侯爵として戻るに決まっているでしょう。それに私は、侯爵になる気などありませんよ。今は、アレク様に仕えることしか頭にないですから」

「き、貴様~人間に仕えるというのか!?魔族の誇りはないのかぁぁ」

ワァワァと喚き散らすセリッジに面倒臭いのと馬鹿だなと思うパスク。

「兄上...いや、お前ごときに魔族の誇りとか語って欲しくない!もういいだろ?始めよう。魔王様、始めて下さい」

それを聞いたセリッジは、こめかみに血管を浮き上がらせて怒りを露わにする。

「き、貴様ぁぁぁぁ!兄に向かってその口の聞き方はなんだぁぁぁ。許さん!殺してやる!」

ラヴァーナは、パスクとセリッジの器の差を見て大声を出して笑ってしまう。

「フフッフハハハハ、あ~なんと滑稽な。おもしろい!この戦いを提案した妾を褒めてやりたい。では、始めるとしよう。両者準備はよいな?」

「はい!いつでも大丈夫です」

「ハッ!魔王様にパスクワーレとの差を見せつけてやりましょう」

両者が、戦闘に備えて臨戦態勢を取る。ちなみに審判は、ラヴァーナが務めるとのことだ。

「では、始め!」

始めと同時にセリッジが走り出す。そして、剣でパスクに斬りかかる。

「死ねぇぇぇぇ」

だが、次の瞬間パスクが剣を軽く振るったと思いきや、セリッジの剣が折れるのだった。そして、カランカランと虚しい音を出して折れた剣が転がる。

「兄上、その遅い剣速はなんですか?鈍ったんじゃないですか?」

「きさまぁぁ、ぐほぉ...」

セリッジの隙だらけの腹に蹴りを入れるパスク。その蹴りに悶絶して跪くセリッジ。
あまりの弱さにアレク達は、逆に呆然としてしまうのだった。

「兄上、もう負けを認めたらどうですか?あまりにも弱すぎます」

「グギギギ貴様ぁぁぁぁ」

のうのうとその地位にあぐらをかいていたセリッジと研磨を積んでいたパスクとの差はあまりにも大きかったのだ。

「セリッジ、降参するか?」

ラヴァーナが、セリッジに向かって降参をするか尋ねる。

「魔王様...降参はしません!」

そう言って立ち上がったセリッジは、パスクを睨むように見据える。

「パスクワーレ!ブッハハハハ、どうだ?動けないだろう?」

パスクワーレと叫んだ瞬間、セリッジの目が緑色へと変化したのだ。

「兄上、その魔眼は効きませんよ。兄上と私とではレベルに差がありますからね」

セリッジは、パスクに対して体を硬直させる魔眼を使ったのだが、自分より弱い相手にしか通用しない魔眼なのである。

「ちくしょぉぉぉ、何故動けるんだぁぁぁ」

もうパスクの声は耳には届いていないようで、パスクは自分より弱いと思いこんでいたセリッジにとって、この状況を受け入れられないのであった。

「兄上、降参して下さい。今ならやり直せますから」

「うるさいうるさい黙れぇぇぇ」

そう言いながらセリッジは、パスクに殴りかかってくるのだ。しかし、あっさりと躱して腕を掴んで絞め上げて、そのまま骨をへし折るのであった。

「ギャァァァ」

折られたセリッジは、その場でのたうち回ったあと蹲る。

「ぎざまぁぁぁ、許さんぞぉぉ」

次に何をするかと思えば懐から魔道具を取り出して起動させたのだ。その瞬間、プシューと煙が立ち込める。

「貴様もこれで終わりだ。道連れにしてやる」

「ここまで落ちぶれていようとはな。空間結界」

ラヴァーナが、咄嗟に介入して魔道具と煙を結界内に閉じ込めたのである。

「なっ!なにを」

セリッジは、ラヴァーナの行動に驚く。

「自らの力で戦わずして恥ずかしくはないのか!貴様の負けだ。パスクワーレ、妾からの命令だ。セリッジを眠らせるのである」

「ハッ!」

そう言ったパスクは、セリッジを持ち上げて頬に往復ビンタを食らわして、腹を一発殴る。そして、場外へと投げ飛ばすのであった。セリッジは、顔を真っ赤に腫らして今度こそ気絶してしまったのである。

「フフッ、パスクワーレは甘いな。もっとやってもよかったのだぞ」

「あれで構いません。落ちぶれた兄上を見た瞬間から気が削がれてしまいました。魔王様、家族としての最後のお願いを聞いて貰えませんか?」

パスクは、復讐を誓っていたが、あまりにも自分との差があったので一気にその気がなくなってしまったのだ。

「なんだ?申してみよ」

「兄、セリッジを一生牢屋に閉じ込めて自分がしてきた行いに対して悔い改めるようにして下さい。よろしくお願いします」

パスクは、ラヴァーナに頭を下げてお願いをする。

「フフッ、よいぞ。その願い聞き届けよう。では、ジキタリスの方がどうなったか見に行くとしようか。アレク、ノックス、オレール、降りて参れ。帰るぞ」

そう言って転移装置で、また王城に戻るのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

前世で家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる 俺だけが使える氷魔法で異世界無双

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
家族や恋人もいなく、孤独に過ごしていた俺は、ある日自宅で倒れ、気がつくと異世界転生をしていた。 神からの定番の啓示などもなく、戸惑いながらも優しい家族の元で過ごせたのは良かったが……。 どうやら、食料事情がよくないらしい。 俺自身が美味しいものを食べたいし、大事な家族のために何とかしないと! そう思ったアレスは、あの手この手を使って行動を開始するのだった。 これは孤独だった者が家族のために奮闘したり、時に冒険に出たり、飯テロしたり、もふもふしたりと……ある意味で好き勝手に生きる物語。 しかし、それが意味するところは……。

全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳
ファンタジー
テオ・ローゼは、捨て子だった。しかし、イルムガルト率いる貴族パーティーが彼を拾い、大事に育ててくれた。 テオが十七歳になったその日、彼は鑑定士からユニークスキルが【前世の記憶】と言われ、それがどんな効果を齎すのかが分からなかったイルムガルトは、テオをパーティーから追放すると宣言する。 イルムガルトが捨て子のテオをここまで育てた理由、それは占い師の予言でテオは優秀な人間となるからと言われたからだ。 イルムガルトはテオのユニークスキルを無能だと烙印を押した。しかし、これまでの彼のユニークスキルは、助言と言う形で常に発動していたのだ。 それに気付かないイルムガルトは、テオの身包みを剥いで素っ裸で外に放り出す。 何も身に付けていないテオは町にいられないと思い、町を出て暗闇の中を彷徨う。そんな時、モンスターに襲われてテオは見知らぬ女性に助けられた。 捨てる神あれば拾う神あり。テオは助けてくれた女性、ルナとパーティーを組み、新たな人生を歩む。 一方、貴族パーティーはこれまであったテオの助言を失ったことで、効率良く動くことができずに失敗を繰り返し、没落の道を辿って行く。 これは、ユニークスキルが無能だと判断されたテオが新たな人生を歩み、前世の記憶を生かして幸せになって行く物語。

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。 異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....

娘の命を救うために生贄として殺されました・・・でも、娘が蔑ろにされたら地獄からでも参上します

古里@電子書籍化『王子に婚約破棄された』
ファンタジー
第11回ネット小説大賞一次選考通過作品。 「愛するアデラの代わりに生贄になってくれ」愛した婚約者の皇太子の口からは思いもしなかった言葉が飛び出してクローディアは絶望の淵に叩き落された。 元々18年前クローディアの義母コニーが祖国ダレル王国に侵攻してきた蛮族を倒すために魔導爆弾の生贄になるのを、クローディアの実の母シャラがその対価に病気のクローディアに高価な薬を与えて命に代えても大切に育てるとの申し出を、信用して自ら生贄となって蛮族を消滅させていたのだ。しかし、その伯爵夫妻には実の娘アデラも生まれてクローディアは肩身の狭い思いで生活していた。唯一の救いは婚約者となった皇太子がクローディアに優しくしてくれたことだった。そんな時に隣国の大国マーマ王国が大軍をもって攻めてきて・・・・ しかし地獄に落とされていたシャラがそのような事を許す訳はなく、「おのれ、コニー!ヘボ国王!もう許さん!」怒り狂ったシャラは・・・ 怒涛の逆襲が始まります!史上最強の「ざまー」が展開。 そして、第二章 幸せに暮らしていたシャラとクローディアを新たな敵が襲います。「娘の幸せを邪魔するやつは許さん❢」 シャラの怒りが爆発して国が次々と制圧されます。 下記の話の1000年前のシャラザール帝国建国記 皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません! https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/129494952 小説家になろう カクヨムでも記載中です

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

望月かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。