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第2章 魔ノ国の調査隊

第192話 魔王様のお遊びに付き合わされるようです!

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アレク達一行は、玉座の間に入り言われた通り、並べられた椅子の横まで行く。

「良くぞ参られた。妾は、44代魔王アナベル・リー・ラヴァーナである。ウズベル王国の使節団一行を歓迎しよう。さぁ、座るがよい。発言も許可しよう」

赤髪のロングヘアで、顔は異様に整っており、グラマラスなボディは誰が見ようと絶世の美女である。だが、時折見せる鋭い眼光が魔王であることを示しているかのようであった。

「この度は、急なお願いにも関わらず聞き入れて頂き、誠にありがとうございます。私は、使節団代表のアレク・フォン・タカハシと申します。陛下よりお預かりした物がございますので、お出ししてもよろしいですか?」

アレクと陛下は、事前にスペイビズに魔王は男性か女性か聞いており贈り物を決めていたのだ。そして陛下は、アレクが身に着けている物を見て、これだと思ったのだが、アレクはそれを初めての人に贈るのかと思ったのだ。しかしこちらの世界では、そのような仕来りはないので、まぁいいかと半ば納得したアレクであった。

「構わぬぞ。何をくれると言うのだ」

魔王は、初めて訪れる国の物が気になって仕方ないのだ。
アレクは、魔法鞄から綺麗に装飾された箱を取り出して、近くにいたジキタリスへと渡す。ジキタリスは、手をかざして危険な物ではないか魔法探知器なるもので確かめる。そして、危険な物ではないと分かり魔王に渡す。

「どれどれ...うむ...綺麗な物だが、これは一体なんなのだ?」

箱を開けて出てきたのは、いろんな宝石をあしらった指輪だったのだ。しかし、指輪など見たことがない魔王は、なにか分からずにいた。

「これは、指輪と言いまして、このように指につけて着飾る物になります。更に、どの宝石も魔力が通りやすい物になっていますので、指輪に付与しやすくなっています。どうか受け取って頂けませんでしょうか?」

陛下と話し合って、わざと付与をせずに渡そうと決めたのだ。

「フッ、フフフ!ウズベル王国の王は、おもしろい。見栄を張って付与をした物を渡さないとは...聞いていた話と違うではないか。これは、妾を騙したのか?フフフ!おもしろいわ。ジキタリス、今すぐあ奴の証言がどのような狙いか探るのだ」

付与の技術は、ウズベル王国より魔ノ国の方が高いとスペイビズが聞いて知っていたアレクは陛下にそれを宣言したのだ。すると、すんなりと受け入れて、そのまま渡そうと決めたのである。一国の王が見栄や下手したてに出ること自体簡単に出来ることではないが、陛下はそれを行い、見事魔王はその振る舞いを気に入ったようである。

「ハッ!すぐにお調べ致します。では、失礼」

そう言ってジキタリスは、転移でその場を去るのであった。

魔ノ国の誰かが、何か嘘を言って魔王を騙していたようである。

「タカハシ...いやアレクと呼ばせてもらおう。話を遮ってすまなかった。妾の国も裏でコソコソと暗躍している連中がいるようなのだ。それより、この指輪は有り難くちょうだいしよう。そしてこちらからは、魔道具を送ろうではないか」

「ありがとうございます。どんな魔道具があるのか楽しみで仕方ありません。それとラヴァーナ様、進言したいことがございます」

魔王は、進言したいと言った発言にも一切嫌な顔をせずに、終始にこやかであった。

「なんだ?申してみよ」

「滞在している間に、ラヴァーナ様と一対一の謁見をお願いしたくございます。ラヴァーナ様にお聞きしたいことと、非公式にお伝えしたいことがございます」

魔王は悩む顔をして、すぐにニヤッと笑う。

「ただ許可を出すだけではおもしろくない。妾を楽しませよ。そうだな...親善試合をしようではないか!そなたらは、マクガリアスに勝ったと聞いている。おもしろい余興になるはずだ」

「え?親善試合ですか?しないといけないですよね?」

「ん?妾の決めたことに反対をするのか?どうなんだ?アレク」

急に真面目な顔になって、睨みつける魔王。アレクは、一瞬にして凄い重圧をその身に受けるのだった。だが、アレクは平然な顔をする。

「フフッ!おもしろい!妾の威圧を食らって平然としておるとはな。どうだ?アレク、妾の物にならぬか?」

いきなりのことにアレクの目は点になる。

「へ?急に何を言い出すのですか!私は、結婚する予定なのでお受けできませんが、親善試合はお受けします。しないと謁見してもらえなさそうですし」

「フフッ、見事に振られてしまった。だが、おもしろい余興は見られそうだな。それと今宵は、歓迎の祝だ。存分に楽しむがよい。そして明日は、親善試合をしよう」

アレクは、半笑いを浮かべて受け入れるしかないのかと諦めるのであった。
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