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第2章 魔ノ国の調査隊

第190話 いざ魔王城へ!空の旅より脳筋に驚く!

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ドリガン子爵は、歓迎の意味を込めて来客用のいい部屋と豪華な食事で出迎えてくれた。そして、次の日の朝を迎えて別れの挨拶をしている。

「またよろしければ、いつでも訪ねて来て下さい。いつでも歓迎致します」

「こちらこそ、急に訪ねたにも関わらず、ここまで良くして頂き、本当にありがとうございました。それと、また必ず伺わせて頂きます。そして、いつかウズベル王国に来る機会がありましたら、いつでもおっしゃって下さい。歓迎致します」

ボコボコにへこんだ訓練場で、アレクとドリガンは別れの挨拶を交わしていた。
何故、こんなところで別れの挨拶をするのだろうかと考えていると。

「お!迎えが来たみたいだぜ」

マクガリアスが、上空を見て声を上げる。その方向をアレクが見ると、大きな翼を羽ばたかせた魔物が10体くらい近付いてきたのだ。

「あれは!?」

アレクは、上空を飛んでくる魔物に驚くのであった。

「ワイバーン部隊だ。それより、あれに乗るのは初めてか?」

マクガリアスが、アレクに問いかける。
そしてアレク以外も、ワイバーン部隊の壮観さに驚くのだ。

「はい!王国では、魔物を運用する術がありませんので、このような光景や機上する機会はありませんでした」

それを聞いたマクガリアスは、いつものように大笑いをする。

「そうなのか...あと魔ノ国では、地上の運送にハーピーやケンタウロスを使っている。あいつらは言葉も交わせるからもってこいなんだぜ。まぁ、初めてなら楽しんでいってくれ」

魔物を運用する術を持つ魔ノ国と王国との差に驚くアレクだったが、ずっと疑問に感じていることがあった。それは、マクガリアスの人族に対する対応だ。戦争を仕掛ける相手にこのような態度を取れるのかということだ。
だが、魔道具技術を学ぶ為という名目で来ているので、今聞くわけにはいかないのだ。

「マクガリアス様!お迎えに上がりました。まさか、お出掛けになるというのが、使節団一行をお出迎えすることだったとはと、魔王様がおっしゃっておりました」

7体のワイバーンが着地して、一人のフルプレートに身を包んだ魔族の男がマクガリアスに声をかける。他の機上していた魔族達も降りてきて腕を胸のとこに持っていき礼をする。

「ガリル隊長、ご苦労だったな。まぁ、強そうなやつか見極めにな。見事合格したこいつら5人を頼む。俺にとって大事な客だ。丁重に扱えよ」

「は、はい!畏まりました。それと、タカハシ伯爵様は、いらっしゃいますか?」

「はい!タカハシですが?」

呼ばれたので、ガリル隊長の前に行くアレク。まさか子供が伯爵だと思わず、一瞬驚くが顔には出さないようにしている。

「タカハシ伯爵様、お初にお目にかかります。ワイバーン部隊隊長のガリルです。あなた方を、王城まで護衛させて頂きます。タカハシ伯爵は、私の後ろにお乗り下さい。他の方々も、指定されたワイバーンにお乗り下さい」

アレク以外のメンバーも、ワイバーン部隊の兵士に案内されて機上していく。アレクも、隊長の後ろに乗って鞍に繋がり、手綱をしっかり握って落ちないようにする。マンテ爺は、アレクにしがみついて落ちないように身構える。

「ドリガン殿、ありがとうございました」

「こちらこそ、貴重な経験をさせて頂きました。また是非お越し下さい」

アレクが、手を振って別れを告げると、ドリガンもまた手を振って返してくれた。

「それでは、タカハシ伯爵様しっかり掴まっていて下さい」

ガリル隊長が、ワイバーンの首元を撫でるとバサバサと翼を動かして飛び上がる。

「うわぁ!凄いですね。一瞬で、こんな上空まで」

「普通のワイバーンより翼の力って、そんな身を乗り出したら危ないですよ。それと、今から飛ばしますので落ちないようにして下さい」

「あっ!ごめんなさい」

あまりの急上昇に、興奮したアレクは身を乗り出して見てしまったのだ。

「では、行きます」

そう言ってまたワイバーンの首を撫でると、凄い速さで飛び始める。しかし、先程の急上昇の時にも思ったことなのだが、まったく風の抵抗がないのである。

「ガリル隊長、もしかしてシールドか風魔法を使って風の抵抗を受けないようにしていますか?」

以前マンテ爺の時に、風魔法で全て受け流していたことを聞いて知っていたアレクは、その応用か同じ原理ではないかと思ったのだ。

「はい!ワイバーンの首にかかっている魔道具でシールドを発生させております。よくお気付きになられましたね」

「マンテ爺...マンティコアを従魔にしていまして、風魔法で抵抗を感じないように工夫していたので、同じ原理かなと。それより、便利な魔道具ですね」

「マンティコアを従魔にですか!!素晴らしいですね。王城にも数体マンティコアがおりますので、よろしければ会ってみて下さい。それと、魔道具に関して魔ノ国に来られたとお聞きしております。王城に行けば専門の魔道具職人もおりますので、お話を聞けるとおもいますよ」

アレクは、魔道具に対してあまり興味がなかったのだが、便利な道具がこれ以外にもいっぱいあるのなら一度話を聞いてみたいなと思うのであった。

「はい!王城に行くのが楽しみで仕方ありません」

「おっ!楽しんでるみたいじゃねぇか。王城に着いたら俺と戦えよ」

マクガリアスが、真横で話しかけて来たので、その方向を見るとなんと羽を広げて飛んでいたのだ。その光景に驚いたアレクは、思わず二度見してしまう。

「えぇぇぇぇ!マクガリアスさん飛べたのですか?」

「俺の母さんが、妖精女王でな。その影響で羽があるんだ。普段は隠してるんだがな」

ゴリゴリ筋肉マッチョな魔族の背中に綺麗な羽は不釣り合い過ぎると思うアレクであった。

「おい!似合わねぇって今思っただろ?顔に出てんぞ」

「え?え?そんな顔してましたか?ごめんなさい」

「ブッハハハハ、構わねぇ構わねぇ。魔王様にも四天王の連中にもからかわれて、もう慣れちまったしな。今となっちゃ、便利だからこれはこれでありだと思ってるぜ。ほんじゃ、俺は先に行って色々説明してくるぜ」

そう言って、凄まじい速さで飛んでいくマクガリアスであった。

「え?あんな速く飛べるものなのですね」

精霊や妖精などは、優雅に飛んでいるイメージだったので、あんな爆速で飛んで羽が千切れないのかなと思うアレク。

「マクガリアス様が、特別なのです。羽も鍛えりゃ筋肉と変わらんとか言いながら、何回も千切れかけてを繰り返してあのような羽を手に入れたのです」

あぁ~本当に脳筋だわぁと思いながら「あはは」と、空笑いを浮かべるアレクであった。
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