上 下
109 / 694
第2章 魔ノ国の調査隊

第185話 国境を越えたアレク達!

しおりを挟む
あれから2週間が経ち、魔ノ国の国境が近付いてきた。馬は、相変わらず薬のお陰で元気いっぱいである。しかも、毛並みが異常な程よくなり、筋肉も出発時より肥大化している。バトルフォースやバイコーンにも引けを取らない馬になっているのだ。

「そろそろ、国境付近だな。パスクとスペイビズは、あの薬を飲んでくれ」

一応フードを被って角が見えないようにはしているが、国境が近付いてきたからか、魔族をちらほら見かけるようになったので念の為に変身薬を服用してもらう。

「わかりました。父上飲みましょう」

「あぁ~そうだな。足裏の痒みが気になるが、仕方ないだろう」

アレクが、痒みに効く薬を渡してはいるのだが、スペイビズは未知数の痒みの恐怖を感じているのである。

そして2人は、飲んだ瞬間にピカッと光る。光が収まると、そこには別人のパスクとスペイビズがいた。

「おいおい...こりゃすげぇな。どっからどう見ても人間だな。それに、別人過ぎて誰だかわからんねぇよ」

ノックスの言うように、容姿の面影は一切残っていないのだ。しかも、パッとしない顔である。

「この顔なら疑われることはないね。本当に研究者に見えるよ」

パスクとスペイビズは、気になるのか、ぺたぺたと自分の顔を触る。だが、触っただけでは、よくわからない感じで不思議な顔をするのだ。

「どんな顔か、想像がつきません。父上は...言ってはなんですが、平凡ですよ」

「何を言う!お前こそ平凡だぞ」

「「・・・・・プッハハハハハ」」

2人は、何故か顔を見合わせて爆笑するのであった。

それから全員、馬に跨り国境に向かって馬を走らせる。

「よし!国境が見えてきたぞ」

国境は、遠くまで横一列に高い塀で仕切られており、攻め込まれてもなかなか攻め落とすことが出来なさそうである。

「商人...には見えないですね。商人以外の人族とは珍しいですが、魔ノ国に入国する目的を教えて頂けませんか?」

街道沿いに検問所があり、国境警備隊のような魔族が、入国審査をしているのだ。

「少し待って下さい。えっと...こちらをご覧下さい」

アレクが渡したのは、王国から使者として訪れたことが書かれた王印入りの書面と魔ノ国から使者を受け入れると書かれた魔ノ国の国印入りの書面であった。
それを見た国境警備の1人が青ざめて焦り始める。

「タカハシ伯爵様、ようこそお越し下さいました。このまま通って頂いて構いません。それから、ウズベル王国と魔ノ国との良い出会いとなることを願っております」

「ありがとうございます。私共も、これを期に良い関係を築けることを願っております。では、失礼します」

子供であっても、一切の疑いや嫌味などを言うこともなく、気持ちよく通してくれた警備兵にお礼を言うアレク。

「何も疑われず、すんなり通ることが出来ましたね。もっと難癖をつけてくるかと」

「アレク伯爵、ウズベル王国の王印と魔ノ国の国印が捺された書類を出されては、流石に文句をつけるような真似はしないでしょう。ですが、魔王様の側近や貴族の一部は、強さこそが全てと考えている連中ばかりです。お気を付け下さい」

スペイビズが、話していなかった情報を伝えてくる。

「え?もしかして、戦いを挑まれたりすることがあるのですか?」

「有り得ます。ですが、勝つことが出来れば、友好的に接してくれます。強い者が正義です。ですので、悪いことばかりではありません」

出来れば、戦わずして友好関係を結べたら1番有り難いけど、そんな簡単には行かないだろうなと思うアレクであった。

「スペイビズ、模擬戦なら大歓迎だ。四天王の強さも気になるしな。アレク坊、もし戦うなら俺を1番にさせてくれ」

戦闘狂のノックスは、ウキウキした表情で馬を走らせていた。全員が、この人の戦闘狂ぶりに、人族ではなくて魔族の血を引いているのではないかと思うのだった。

「わかりました。もし、そうなったら任せますよ。それより今日は、どこまで行きますか?」

「そうだな。ここから1番近い街の宿に泊まってから、明日魔ノ国の魔都に向かおう。ここからは、スペイビズ先導を頼む」

魔都とは、王国でいう王都のことである。

「任せて下さい。こちらです」

馬の方向を変えて近くの街に向かう一向であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど

富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。 「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。 魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。 ――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?! ――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの? 私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。 今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。 重複投稿ですが、改稿してます

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

七年間の婚約は今日で終わりを迎えます

hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。