上 下
51 / 732
第1章 伯爵になったアレク

第166話 久しぶりの実家は、やはりいいものだった!

しおりを挟む
アレクは、転移をしてストレン領の屋敷へと帰ってきた。
屋敷の庭に転移したのだが、ちょうどカリーネがノアとカレンと一緒に散歩をしているのを発見した。

「お母さん、ただいま~」

その声を聞いたカリーネは、すぐさま振り向く。

「え?アレクちゃん!?いつ帰ってきたの?」

あの事件が終結した時以来、1年振りに帰宅したのだ。その所為もあってカリーネは、かなり驚いている。

「今さっき転移で王都から帰ってきたところだよ」

そう言うとカリーネは、双子の乗った乳母車を押しながらやってきて、アレクをギュッと抱きしめるのであった。

「アレクちゃん、お帰りなさい。ずっと待っていたのよ」

カリーネは、泣きながらアレクの帰宅を喜ぶ。

「お母さん、遅くなってごめんなさい」

それでもなかなか泣き止んでくれず、背中をポンポンと優しく叩いていると、ヨゼフとセバスがやってきた。

「お~アレクもマンテ爺も帰っておったんじゃな。ん?馬車もないがどうやって帰ってきたんじゃ?」

アレクが転移を使えることをまだ打ち明けていなかったので、疑問に思うヨゼフ。

「セイランさんという方に転移魔法を学んで、転移で帰ってきたんだよ」

「ヨゼフ、久しぶりじゃな。あとで軍棋をやるぞい」

マンテ爺は、アレクとカリーネの胸の間から顔を出して言う。

「転移じゃと!またアレクは、凄くなりよったのぅ。ホッホマンテ爺、ワシを前のワシだと思わんことじゃ。返り討ちにしてやるわい」

「ほぉ~それは楽しみじゃな。その自信ごと粉砕してくれるわ」

何故かマンテ爺とヨゼフは、笑いながら火花を散らせている。思わず仲良すぎだろと思うアレクであった。

「お帰りなさいませ。アレク伯爵様!セバスは、嬉しゅうございます。こんなにご立派になられて」

セバスは、ハンカチを目頭に当てて嬉し涙を拭っていた。

「もう、セバスまで~伯爵はやめてよ。なんか恥ずかしいでしょ。それより、そろそろお母さん離してよ。ノアとカレンにただいまの挨拶をしたいんだから」

カリーネは、「ゔぅ」と渋りながらも離してくれた。そして、乳母車に乗るノアとカレンの前に行って屈むアレク。

「ノア、カレン、ただいま。元気にしてた?」

ほっぺたをツンツンとしながら話しかける。「えへへ」と笑う2人に、アレクはメロメロになるのであった。

「今日は、泊まっていくんじゃろ?」

「うん。1週間くらいはいる予定だよ。その後は、叙任式があるから王都に帰るかな。あと、大事な話があるから夜時間を空けてくれないかな?」

アレクは、ヘルミーナとの結婚を考えていることと、まだ打ち明けていない秘密を話そうとしているのだ。

「なにかのぅ?ワシだけが聞けば良いのかのぅ?」

「お父さんとお母さんとセバスと師匠とパスクとオレールさんとマンテ爺とナタリーには話しておきたい」

「うむ。わかったのじゃ。セバス、ノックスとパスクとオレールとナタリーには、夕食後会議室に集まるように言っておいてくれんか?」

「畏まりました。では私は、お伝えして回りますので失礼致します」

そして、忍者のようにスッと消えるのであった。

「そうじゃった。ノックスもパスクもオレールもアレクに会えるのを楽しみにしておったぞい」

「俺も楽しみだよ。冒険者として鍛え直すって言ってから1年だもんね。でもちょうど帰ってきてたんだ。よかった」

あの出来事があってから、いつかルシファーとの戦いがあるとわかった3人はスベアを連れて各地を回って鍛え直しに出掛けた。
そして、1年が経ち冒険者ギルドに届いた叙任式の通知の手紙を受け取って戻ってきたのだ。

「2日前に戻ってきておったぞい。なんでもS級になったという話じゃ。それより、中に入ってお茶でも飲みながら話さんか?」

「そうだね。色々話したいことも沢山あるからね」

「私は、ノアとカレンともう少し散歩をしたら戻るわね」

「わかったわい。少し肌寒くなってきよったから、体を冷やす前に戻るんじゃぞ」

カリーネは、「は~い」と返事をして散歩の続きに戻る。アレクは、いまだに仲がいい2人を見て自然と笑みが溢れるのであった。

それから、ヨゼフと屋敷の中に戻ると、メイドがアレクの帰宅に驚いていた。教育が行き届いているのか?すぐに姿勢を正して「アレク様、お帰りなさいませ」と挨拶をする。アレクも笑顔で「ただいま」と言ってヨゼフの書斎へと向かうのだった。

書斎に着いてアレクとヨゼフが席につくと、すぐにメイドがやってきてお茶の用意をしてくれる。

「そうじゃった!家名はどうするんじゃ?」

アレクは、伯爵となりヴェルトロ家からは独立したことになる為、新しい家名を付けなければならないのだ。

「夜みんなに話す内容でわかることなんだけど、高橋って付けようと思ってるんだ」

「タカハシ?珍しい家名じゃのぅ。じゃが、アレクにとっては意味のある家名なんじゃろう。詳しくは夜に聞こうかのぅ」

高橋とは、生前の名前である。もし、家名をつけるなら前からこれだと決めていたのだ。

その後は、他愛もない話をして、マンテ爺vsヨゼフの軍棋対決を観戦するのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした

せんせい
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ―――

貧乏男爵家の四男に転生したが、奴隷として売られてしまった

竹桜
ファンタジー
 林業に従事していた主人公は倒木に押し潰されて死んでしまった。  死んだ筈の主人公は異世界に転生したのだ。  貧乏男爵四男に。  転生したのは良いが、奴隷商に売れてしまう。  そんな主人公は何気ない斧を持ち、異世界を生き抜く。

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。

黒ハット
ファンタジー
 前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。