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第11章 王国に迫る脅威

第153話 オストケルン領のスタンピードの殲滅と救助!

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「俺達が食い止めている間に運んで下さい。こっちが重症者用のエクストラポーションで、こっちが軽症者用のハイポーションです。それから、回復した人に運ぶのを手伝ってもらって下さい。じゃあ、俺達は行きますのでよろしくお願いします」

アレクは、マンテ爺を元のサイズに戻して、マンテ爺に乗り魔物達の方にかけていく。

「お、おい...ってもうあんなところまで行きやがった。お前らあんな子供が頑張ってくれているんだ。俺達も出来ることをするぞ」

近くで聞いていた冒険者達は、ケルビンの言葉で立ち上がり動き始めるのであった。

「マンテ爺、人間に被害が出ないような雷魔法で抜けてくる魔物を倒してくれないか?」

「また難しい注文をしおるのぅ。じゃが、やってやるわい。一点雷光フォーカスライトニング

一本の雷撃が、何体もの魔物を貫いていく。
それを、何発も放って魔物を寄せ付けないようにしている。

多風槍ウインドランスマルチプル

アレクは、上空から抜けてくる魔物達を殲滅していく。
アレクとマンテ爺だけで、魔法師何百人分くらいの攻撃を平然と行っているのを、多くの冒険者と兵士が目撃する。

「ありゃ、えげつないぜ。だが、長くは持たないだろう。お前ら気合い入れて怪我人を運べ」

「「「「「お~!」」」」」

アレク達の頑張りを見ていた冒険者と兵士は、一丸となって自分達の務めを果たそうとしていた。

「そろそろ限界じゃ...アレクあとは任せたぞい」

しかし、何十分もの間、魔法攻撃を放っていたマンテ爺は、魔力の限界に達してしまい、その場に倒れ込む。

「クソ!数が多過ぎる。これ以上持ち堪えられない」

マンテ爺が倒れてしまい、被害の出さない魔法だけでスタンピードを抑え込むのにも限界を迎えているアレク。

「もう巻き添え覚悟で放つしかないのか!?」

アレクが、もう巻き込む覚悟をした時、遠くから無数の魔法が飛んでくる。アレクが、振り向くと復活した冒険者や兵士が、アレクを助ける為に魔法で援護をしてくれたのだ。

「アレク、殺ってやれ~」

ケルビンが、拡声器の魔法で合図を送る。

「よし、間に合った。加具土命カグツチ

アレクは、広範囲殲滅魔法放つ。
そして、マンテ爺の前に立って土魔法最大のバリアを張るアレク。
加具土命カグツチは、威力が衰えることなく魔物を全て飲み込み殲滅する。しかし、余波が起き、アレク達や街にも襲いかかる。

「くっ...みんな大丈夫か?これは...」

ケルビンは、余波で吹き飛ばされたが、無事生きていた。しかし、門も街の壁も瓦礫と化しており、アレクがいた辺りは何もなくなっていて砂地と化していた。

「あぁ~ケルビン、俺達は無事だ...それにしても...こいつは...」

「おい!アレク達を探しに行くぞ!動けるやつはついてこい」

ケルビンは、アレクの姿が見えず、あの至近距離で爆風を食らって死んでしまったのではないかと心配する。


その頃、アレクはというと。

「ぷはぁ!はぁはぁはぁ...死ぬかと思ったよ。マンテ爺大丈夫?」

アレクのバリアで二人共、爆風からは逃れられたが、砂に埋もれてしまったのだ。

「大丈夫じゃ。魔力が尽きただけじゃわい。流石のワシも、あの至近距離で魔法を放たれて死ぬかと思ったぞい」

「アハハハ、確かに!俺も死んだかなと思ったよ。マンテ爺、回復薬と魔力回復薬だから飲んで」

マンテ爺に、回復薬を飲ませてアレクも最後に取っておいた魔力回復薬を飲む。そして、「疲れたぁぁぁ」と言いながらその場に寝転がるのであった。

「お~い!アレク~生きているなら返事をしてくれ~」

ケルビンや他の冒険者達が、アレク達を探しにやってきてくれたのである。
アレクは、ゆっくり起き上がりながら「ケルビンさん、こっちで~す」と返事をする。

「お~アレク、生きていたか!それに、マンテ爺も無事みたいでよかったぞ」

「なんとか...色々間に合いましたね。ケルビンさんのお陰で広範囲殲滅魔法を放てましたよ」

「こちらこそ街を守ってくれて感謝する。本当にありがとう」

「「「「ありがとうございます」」」」

ケルビンの言葉に続いて後ろにいた冒険者達もアレク達に感謝を言う。その後は、アレクの周りに集まって「スゲェーな」とか「あんな魔法見たことねぇ~よ」とか言ってくる。

「アレクさ~ん、ご無事ですかぁぁ」

そこに、セイランがやってくる。後ろには、貴族らしい格好をした人物と護衛が着いてきていた。

「この度は、オストケルンをお守り下さり、本当にありがとうございました。セイランさんから、全てお話は聞いております。そして、申し遅れましたが、私はこの街の領主をしております。ラモンス・フォン・レーグと申します」

馬から降りたレーグは、綺麗な所作でアレクに挨拶をする。

「私は、アレク・フォン・ヴェルトロです。レーグ様、よろしくお願い致します。それとこの街が救われたのは、皆さんが踏ん張ってくれたお陰です。そうでなければ壊滅していましたよ」

「そう言って頂けると嬉しい限りです。復興が終わった暁には、冒険者や兵士達に特別手当てを出さなくてはいけませんね。それにしても、まさかヴェルトロ伯爵様のご子息様とは...後日必ずお礼に上がらせて頂きます」

ヴェルトロ伯爵家のご子息と聞いて、周りの冒険者は「俺失礼な事言っちまった」とか「ヤバい、斬首刑だぁぁぁ」などと狼狽えていた。まさか、貴族だとは思わなかったようである。

「え、え、えぇぇぇぇ!アレクさんが貴族...しかも、伯爵様のご子息様~...あっ!アレク様~お許しください!私問い詰めるとか酷いこと言いましたよね。どうか、斬首刑だけはぁぁぁ」

セイランも、貴族の息子とは知らなかったのだ。しかし、王城にいたり陛下と面識がある時点で、貴族だと考えるのが普通なのだが、どこか抜けているようである。

「ブッハハハハ、セイランさん斬首刑って...そんなことするわけないじゃないですか!レーグ様が正式な挨拶をしたので答えましたが、今は冒険者のアレクなのですから」

セイラン含め冒険者達も、その言葉を聞いてホッとするのであった。
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