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第9章 学園での再会と新たな出会い

第123話 恋も順調!そして、王都に向けて出発!

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今日は、ある人物がお見舞いに来てくれるということで、勉強はお休みにしてもらえた。そろそろ、ある人物が訪れる頃だ。アレクは、ベッドに上半身を起き上がらせる。

トントントン

「ヘルミーナ様が、お見えになりました」

「入ってもらって下さい」

ガチャとドアが開くと、そこには相変わらず綺麗なヘルミーナが立っていた。アレクは、久々の婚約者に心臓がドキドキする。

「アレク様、お見舞いに来るのが遅くなってごめんなさい。2年前の事件から人の流れが増えたお陰で仕事が立て込んでしまいまして。それよりもお元気そうでよかったです」

「仕事なら仕方ないですよ。それよりも、寝込んでいる間、何度もお見舞いに来てくれたと聞きました。本当にありがとうございます」

復興の為に、王都からの人の流れや物流の流れも増えてストレン領は発展したのだ。今では、田舎の静けさを求めてやってきて、そのままストレン領の住民になる人も多くいる程だ。

「当たり前です。だって婚約者なんですから。でも2年は、少し寂しかったですけどね」

「ごめんなさい。無茶し過ぎました。こんなに待たせるなんて婚約者失格ですね...」

ヘルミーナは、少しと言っているが、屋敷の人から聞いた話では何度も大泣きをして悲しんでいたと聞いていたアレクは、こんな駄目男じゃヘルミーナの婚約者として相応しくないなと思ってしまう。

「え?今更私を捨てるのですか?そうですよね...若くない行き遅れですもんね...」

ヘルミーナは、わざと落ち込むようなフリをする。内心捨てられたら悲しいという気持ちは当然思っている。

「ちょ、ちょっと待って下さいよ。捨てるわけないですよ。それに、十分若いですからね。ただ、こんなに待たせてしまって男として失格だなと...」

「ふふっ!慌てるアレク様かわいいですね。失格なんて言わないで下さい。ヨゼフ様やカリーネ様から全て話は聞いています。街を守ってくれて感謝しているわ。ありがとう」

不意の砕けた言葉遣いでありがとうと言われたのと頭を撫でられたことで顔を赤くするアレク。

「全て聞いていたのですね。あの時俺に、もっと力があれば誰も死なずに済んだかもしれないのにと思ってしまいます。次は絶対に誰も死なせません」

「アレクくん!またこんな状態になったら私はアレクくんを嫌いになるわ。だから、もう無茶はしないで...お願い...確かに死んだ人はいるかもしれないけど、私はアレクくんを失いたくないの...お願いだから居なくならないで」

思わず敬語ではなく、本心をさらけ出して話すヘルミーナ。震えて涙を流しながら話す姿にアレクは、なんでヘルミーナの気持ちを思い遣ることが出来なかったんだと情けなくなる。

「ごめん...ヘルミーナを悲しませる気はなかった。ただ、後悔している自分がいてね。でも、俺をこんなにも大事に思ってくれている人が近くにいるとわかって反省したよ。もう無茶はしない。あ!でもヘルミーナを守る為なら無茶しちゃうかな」

そう言うとヘルミーナは、アレクをギュッと抱きしめて「バカ」と照れてながら言う。アレクも、ギュッと抱き締め返して「ヘルミーナは大事な人だからね」と言うのであった。

淡い淡いなんとも言えない空気が部屋中に流れるのだった。





それから、半年はあっという間に経ち、王都へ入学試験を受ける時期になった。なんとか入学試験の試験範囲を暗記したアレク。授業でやっているだろう項目は魔法科に入る予定なので、訓練と冒険者時代にノックスとオレールから習ったことで十分補えている。ヘルミーナとも、あれから正式に婚約をして、学校を卒業したら結婚するということになった。

「アレクちゃん、忘れ物はないわよね?ハンカチは持った?路銀は忘れてない?着替えはあるわよね?えっとそれから...」

「ハハハ、お母さん大丈夫だよ。全部持っているし、昨日パスクと一緒に何度も確認したからさ」

「なら大丈夫ね。でもなんだが心配だわ」

あの事件以来、カリーネはアレクに対して凄い過保護になり、心配性にもなってしまった。

「カリーネ、アレクなら大丈夫じゃよ。それに、パスクとオレールとスベアさんとマンテ爺もついて行くんじゃ。何も心配することは起こらんじゃろう。そうじゃ、試験が終わってから陛下に会いに行くんじゃぞ。城門でこれを見せたら入れるからのぅ」

ヨゼフは、王印が捺された手紙を渡す。

「え?陛下にですか?なんの用でしょうか?」

「ワシもわからんのじゃ。手紙には、話があるから王城に来てくれと書いてあるだけだったのぅ。くれぐれも粗相のないようにのぅ」

「はい!わかりました。陛下に呼ばれていると思うと緊張しますが、なんとか乗り越えます。それから、ノアとカレン寂しくなるけど、お兄ちゃん頑張ってくるからね。帰ったらいっぱい遊ぼうね」

ノアとカレンと言うのは、双子のことである。アレクが話かけるとキャッキャッと2人は笑うのであった。

「では、父上母上行って参ります!」

「頑張ってくるのじゃぞ」

「アレクちゃん、何かあったらすぐ逃げるのよ~」

馬車が進み初めて見えなくなるまで、アレクは手を振るのであった。
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