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第1章 転生したら少女になった

第5話 フェンリルと香菜の共同作業!フェンリルも、調理しちゃうよ!

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「まずは、玉ねぎを切っていこう」

玉ねぎを大量に用意して、軽快にみじん切りしていく。しかし、いつものように涙で目が真っ赤になってしまう。

「うぅ......目が痛いよぉぉぉ!まだまだ玉ねぎいっぱいだよ」

いつもならば、玉ねぎ100gくらいをみじん切りにすればいいだけなのだが、今回はそうも言っていられない程の量を用意しなくてはならないのである。

「うむ!辛そうであるな!それを細かく切ればよいのか?」

「え!?もしかして、フェンリルさん!?」

香菜は、驚きながら声のする方を見ると、そこには小さい真っ白なモフモフのワンちゃんがいたのだ。

「そうだが!ん?あぁ、この姿か!俺くらいになると大きさなど自由に変えられるのだ!それで、こいつをこのように切ればよいのだな?」

「うわぁぁぁぁ!可愛いぃぃぃ」

香菜は、包丁を置くと、すぐに小さくなったフェンリルを抱えてモフモフしだす。

「ぐふぉ!おい!やめるのだ!離せ~」

フェンリルは、抵抗するが香菜は一切離す気がない。フェンリルも、香菜が悪意を持った行動ではないとわかっているので、攻撃ができないでいる。

「ヤダ!モフモフを堪能するまで離さないもん」

香菜は、長い時間モフモフを堪能して、やっとフェンリルを離す。

「ハァハァハァ、やり過ぎだ!やられる方の身になってみろ」

フェンリルは、ヨタヨタ歩きでグッタリとしてしまう。

「ごめんなさい!こんなふわふわで可愛いワンちゃん初めてだったから......」

香菜は、悪いことをしてしまったなと、下を向いて落ち込む。

「次から気を付けるのだぞ!それと、俺は神獣である!そこらの獣と同じではない!わかったな」

「気を付けます!でも、我慢できない時は、モフモフさせてください!ん?神獣?ってなに?」

フェンリルは、肉球を額に当ててヤレヤレといった感じで呆れてしまう。

「もうよいわ!神獣については、あとで教えてやる。それよりも、料理を作っていたのであろう?これを、切ったらよいのだな?」

フェンリルは、香菜に何を言っても駄目だと察して、話を戻すことにした。

「あっ!料理をしていたのすっかり忘れていた!えっと......フェンリルさんが、玉ねぎを切るの?その手だと包丁握れないよ?」

「包丁など使わん!ここに、玉ねぎとやらを放り込むのだ!投げてみろ」

フェンリルが、前足を上げると空中に、球体が現れた。中をよく見ると竜巻のように風がクルクルと回転している。

「うん!よくわからないけど投げるね」

香菜は、球体に向かって玉ねぎを投げる。すると、球体が勢いよく回転して、気付いたらまな板の上にみじん切りになった玉ねぎが出来上がっているのだ。

「えっ!?えぇぇぇ!どうなってるの!?」

香菜は、玉ねぎが一秒くらいでみじん切りになっている光景を目の当たりにし、目を丸くして驚く。

「風魔法である!そんなことはよい!さっさと玉ねぎを投げるのだ」

「魔法!凄い凄い!私も、魔法使いたいよぉぉぉ」

香菜は、どんどん球体に玉ねぎを放り込んでいき、山のような玉ねぎのみじん切りが出来上がっていく。

「お主には、無理であるな!魔力が一切ない!それと、武の才能も皆無である。何故、この森で生き残っておるのかが、不思議なくらいであるぞ」

「そっか......魔法使いたかったけど、ないなら仕方ないね。ん~と、ここに来た経緯は、あとで話すね」

香菜は、女神の言葉を思い出す。自分が魔法や戦闘に必須なスキルを一切願わず、生きるために特化したお願いをしたことで、魔力がなく武の才能もないことを理解するのだ。

「うむ!あとで、聞かせてもらうとしよう!それより、もう玉ねぎとやらは良いのではないか?」

気付くと、玉ねぎのみじん切りは大量に出来ており、まな板からはみ出るくらい山盛りになっているのだ。

「あっという間に出来上がったから、ついつい楽しんじゃったよ。やり過ぎちゃったね」

香菜は、エヘヘと笑って照れた顔をする。それから香菜は、バターをフライパンに入れて溶かす。その後、玉ねぎを入れてあめ色になるまで炒めるのだ。

「うむ!不思議なことをするのであるな!俺は、生でしか食さんのでな!これが、人間の言う調理なのだな」

フェンリルは、香菜の行動をジーっと見ながら観察をしている。

「よりおいしくするために調理をするんだよ。あとは、人間は弱いから、物によっては、生で食べるとすぐお腹を壊しちゃうからね」

「ほう!弱いからこその知恵と探究心の賜物というわけであるな!」

フェンリルは、頷きながら感心しているようだ。香菜は、そんなフェンリルを見て可愛いなと思いながら、牛豚合い挽きとパン粉と卵を入れてかき混ぜる。すると、フェンリルがひょこっと顔を覗かせて見てくるのだ。

「俺も、手伝ってやろう」

「え?嬉しいけど、毛が入っちゃったら駄目だから、今回は見ていてくれると嬉しいな」

流石に、フェンリルの可愛い肉球とモフモフでは、こねる作業を任せられないと思う香菜。

『香菜とリルちゃん、これをプレゼントしちゃうね!あ!ちゃんと、私の分もお供えしてね。じゃ、またね~』

どこからともなく女神の声が聞こえたと思ったら、フェンリルの手にフェンリルの可愛い似顔絵付きの料理用手袋がはめられていたのだ。

「え?女神様!?」

「うむ!女神様であったな!それよりも、女神様が待っておるのなら、早く作らねばならぬ!香菜よ、急ぐのだ」

初めてフェンリルが、香菜と名前で呼ぶ。そして、女神様から授かった料理用手袋をキュッとはめ直して、フェンリルはやる気満々の顔をするのだった。
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