異世界のんびり料理屋経営

芽狐@書籍発売中

文字の大きさ
上 下
182 / 203
第7章 魔境村の日常生活

第179話 威風龍は和菓子が大好き!

しおりを挟む
威風龍のハオは、いつもと同じように宮殿で妻のシャオリンとミンユーとのんびり過ごしていた。

「みたらし団子が懐かしい...あれはうまかった...」

あれ以降、古龍は遊びにもこない。一回くらいみたらし団子を持参して来てくれてもと思うハオ。

「アナタ、毎日口に出ていますわよ。確かに美味しかったから気持ちはわからなくないけれど」

「ミンユーもみたらし食べたいアル。ハオくん、あの時食べに行く言ったネ。いつ行くアルか?」

妻達も食べたいらしく、ハオに寄り添いながら食べに行きたいと要求する。

「そうかそうか、シャオもミンユーも食べたいのだな。では、みたらし団子を食しに参ろうぞ」

踏ん切りが付かなかったが、二人に言われたら仕方がないなと立ち上がり、位は宰相にあたる長官に数日出掛ける旨を伝えて飛び立つ。どこに行くかもいつ帰ってくるかも伝えていないので国はパニックになっていた。

「アナタ、ちゃんと伝えなくてよかったの?今頃みんな慌てているわよ」

「いつも余に頼っておるのだ。偶には、自分達で解決すればよかろう。これも試練ぞ」

「ハオくんも人が悪いアルヨ。みんなそれなりに頑張ってるネ。でも訓練だと思えば後々活かされるしいい考えヨ。特に子供達にとっては」

ハオには、5人の子供がおりそれぞれ責任ある職に就いている。それに、ミンユーが言う通り、ハオが離れたことで長官達が子供達のところに行き子供達も慌てふためいているところであった。

「ほほう...余の子供達にもいい勉強になっておるであろうな。定期的に、このような試練を与えるのもよかろう」

もし、この話を子供達が聞いていたら、ストレスで全員が禿げるか精神的苦痛に苛まれていただろう。

それから、4日程飛び続けてやっと魔境にたどり着いたハオ達。道中、久々の生肉や生魚を食べてきたのだが、そろそろまともな食事に有り付きたいと考えるようになってきた。

「まだかしらね?どこら辺にあるか聞いているの?」

「魔境の中心とは聞いておるが詳しくは知らんぞ。ただ、あの辺りに複数の巨大な反応がある故あそこであろうと推測しておる」

「どれアルか?ってあの巨大な密度はなんでアルか?世界を滅ぼしかけない力アルヨ」

身震いする程の力を感じて恐怖するミンユー。シャオリンは、戦闘には不向きな竜なので反応すら感じていない。

「あそこが怪しいのは間違いない。さぁ、行こうではないか」

威風龍は流石というか、気にせず巨大な反応がした方に飛んでいく。シャオリンもミンユーも、ハオが行くならばと後をついて行く。
暫くすると、向こうからデカい龍がやってくる。

「ハオではないか?何をしに来たんだ?」

警戒中のグラデュースが、強い力を感じてやってきたのだ。

「みたらし団子を食べに参った。余と妻を案内してくれまいか?」

「営業時間前だから無いかもしれないぞ。それと、みたらし団子を作った拓哉と娘達の前で偉そうな素振りをしたら俺が潰すから肝に銘じておけ」

「至高なるみたらし団子を作った者に、無礼を働くわけにはいくまいな。それにしても、古龍にここまで言わせるとは、相当な御仁であるな」

「それなら構わない。行くぞ」

開拓地にある竜達専用の離着陸場に降り立つ。前までは土しかなかった場所もちゃんとオリハルコンが敷き詰められて竜が離着陸しても壊れない仕様になっている。
そのまま、憩い亭に案内をされるハオ達。

カランカラン

「拓哉はいるか?」

奥で仕込みの準備をしていた拓哉は「は~い」と返事をしてホールに姿を現す。

「え?グラさん!こんな早い時間に珍しいですね。で、そちらの方々は誰ですか?」

いつも来ない時間に尋ねてきたグラデュースに、どうしたのだろうと思う拓哉。

「みたらし団子を渡した威風龍を覚えているか。その威風龍だ。なんでも、みたらし団子を食べたいらしいんだ」

拓哉は思わず「え?」と声が出てしまう。不老不死になる為に血を分けてくれた張本人が来たからだ。

「あの節は血を分けて頂きありがとうございました。みたらし団子と大福もご用意しますのでお座り頂いてお待ち下さい」

それを聞いたハオは、わざわざ古龍自ら血を集めるほどに大事にしている人なんだと再確認する。
「畏まった」と言って席に座って待つハオ達。暫くして、拓哉がみたらし団子と大福を持ってやってくる。

「お待たせ致しました。まだまだありますので、おかわりが欲しければ言ってください」

みたらし団子といろんな色の大福が置かれたが、まずは本命のみたらし団子から食べるハオ達。

「うま~い!これぞ余が求めておったみたらし団子!この甘いタレに香ばしい団子。それにもちもちの食感が堪らないではないか。いくつ食べても飽きぬこの味が余を堕落させていきよる」

「アナタ、みたらし団子もおいしいけど、この大福も食べてみてほしいわ。噛んだら甘酸っぱい果肉がじゅわ~っと中から出てくるのよ。いろんな味があって楽しいわ」

フルーツ大福を食べたシャオリンは、満面の笑みになり次から次へといろんな味の大福を食べる。

「おぉ!凄いではないか。黒いのも甘くてしっかりした食感ともちもちの生地とよく合っておるな。何度余を虜にすれば気が済むのだ」

普通の豆大福を食べたハオは大福にもハマってしまう。

「みたらし団子も大福もおいしいアル。まだまだ食べたいネ。追加をお願いするヨ」

ミンユーは、意外にも食いしん坊でパンパンになるまで口に入れる。負けじとシャオリンもハオも食べる手を止めない。
どんどん食べるので営業時間までおかわりラッシュが続くのであった。
しおりを挟む
感想 1,410

あなたにおすすめの小説

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...