異世界のんびり料理屋経営

芽狐@書籍発売中

文字の大きさ
上 下
181 / 203
第7章 魔境村の日常生活

第178話 宰相ダミアンと手羽先とやみつきキャベツ!

しおりを挟む
魔国宰相のダミアンは、自室の机に座りながら昔を懐かしんでいた。

宰相になって何百年経ちましたかなぁ?ヴァレリー様を補佐してからは、様々な出来事がありました。1番辛かったのは、戦闘がからっきしの私を戦場に連れていき指揮を取れと言われたことでしょうか?あの当時のヴァレリー様は、若さ故に無茶ばかりで血気盛んでしたなぁ。自分ができることは、周りもできると思い込んでおり、私の元に毎日嘆願書が届き苦労したものです。しかし、ある日、急に性格が丸くなられて、内政にも目を向けるようになり、部下達を気にかけるような発言や行動をするようになり、私も部下達も何があったのですか?とあの時は焦りましたなぁ。その理由が憩いの場を見つけて心に余裕ができたからという単純な事に私は思わず笑ってしまいましたなぁ。しかも、料理が絶品というおまけ付き。確かに、拓哉様の料理や酒は絶品でしたなぁ。あのヴァレリー様とセバスとジュドーとの飲み会は楽しかったですぞ。あ~また飲み食いしたくなってきましたなぁ。最近、ヴァレリー様の意向で部下達が長期休暇を取るようになりましたが、私も取れないでしょうか...ヴァレリー様に聞いてみますかなぁ。

早速、ヴァレリーのもとに向かう。

トントントン

「魔王様、ご相談があるのですが...」

「ダミアンではない。どうした?ソファーに座りながら話そうではないか」

昔のヴァレリーからは、想像できないような取っつきやすい性格になったなと思うダミアン。

「それで、相談とはなんだ?」

「あのですなぁ...私にも休みを頂けないかと思い参りました」

「なんだ。そんなことか。申請すればいつでも...ちょっと待て」

資料が積まれた中から1枚の紙を取り出してダミアンの前に置くヴァレリー。

「最近、部下から労働環境に対することを言われてな。俺なりに調べた所、悲惨な現状であった。それを踏まえて、この機会に労働環境を見直そうと考えたのだ。これが、素案だ。ダミアン含め、文官全員の休みを定期的取るよう調整し、年間で長期休暇を何処かで取れるようにしてはくれないか?武官は、各隊の将軍に調整依頼をするつもりだ。そして、ちゃんと実行されているかは、俺自ら監査し、行われていない場合は、責任者に懲罰を与えるつもりだ。とりあえず、2週間後で構わないから明日から3、4日は休暇を楽しむといい」

ダミアンは、感動していた。まさか、労働環境にまで目を向けるようになるとは思わなかったからだ。

「お任せ下さい。必ず部下が働きやすいように労働環境を整えて参ります」

「頼んだぞ。だが、とりあえずはダミアン自身が休み、英気を養ってから取り組んでくれ。疲れた体や頭では、いい案も浮かばんだろう」

ダミアンは、ヴァレリーの成長と優しさに思わず涙が溢れてしまう。

「どうしたのだ?そんなに労働環境が辛かったのか?すまぬことをしたな」

泣くダミアンを、労働環境が悪かったからだと勘違いして慌てるヴァレリーであった。
これから、数ヶ月後、部下達のやる気とヴァレリーへの忠誠度も上がり、仕事の生産性も上がったらしい。

そして、休みを取ったダミアンはというと、憩い亭に来ていた。

カランカラン

「いらっしゃいませ。ってダミアン様、お久しぶりです」

最近、魔国からよく珍しいお客さんが訪ねてくるなと思うラリサ。

「お久しぶりですなぁ。何か適当にお酒と料理をいくつか頂けませんか?」

「は~い!畏まりました。適当にお座り頂いてお待ち下さい」

ダミアンは、適当に席に座る。ヴァレリーから事前にどこに行くか聞かれて憩い亭と答えると、休暇中は会っても挨拶も会釈も要らないから思う存分楽しむようにと言われていたので、ヴァレリーの横を通り過ぎる時もお互い言葉も交わすことはなかった。ヴァレリーなりの配慮である。

「お待たせしました。手羽先とビールです」

席に座って暫くすると、あの時呑んだビールと見たことがないが、いい匂いがする料理が届く。「ありがとうございます」と言い、早速ビールを呑むダミアン。

「おぉ~このなんとも言えない辛口にキリッとした感じに素晴らしい喉越し。ですが、前呑んだものよりも泡がきめ細やかでおいしいですなぁ。って気付いたら飲み干してしまいましたぞ。ラリサさん、すいませんがおかわりをお願いします」

「は~い」と言って、注文を受けるラリサ。ダミアンは、次に手羽先なる料理を口にする。

「ん?ん?この食感と肉の旨味にピリっとくる香辛料...おいしいですなぁ。それに、パリっとした皮がまたなんとも言えません。これに、ビールが合わない訳がないじゃないですか。ぷはぁ~やっぱり...この組み合わせは暴力的ですぞ」

ラリサが次の料理と呑むだろうと予想して3杯目のビールを持ってくる。先読みされていたなと思わず苦笑いを浮かべるダミアン。

「ビールのおかわりとやみつきキャベツです」

次に来たのは、なんの変哲もないキャベツ。それを見たダミアンは少しガッカリする。

「ん?ただのキャベット?まぁ、頂きますか...え?これがキャベットですか?シャキシャキとして香辛料?いや?食べたことない優しい塩気を含んだ味わいに手羽先で、こってりした口の中をさっぱりとさせてくれるではありませんか。それに、ビールがまた合いますなぁ。くぅ~この考え抜かれた組み合わせを見抜けなかった過去の私を殴ってやりたいですぞ」

普段見せないようなコロコロ変わる表情や動きを見ていたヴァレリーは、こんな一面もあったのだなと思わず笑ってしまう。
ダミアンも、久しぶりの休暇を思う存分楽しむのであった。
しおりを挟む
感想 1,410

あなたにおすすめの小説

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...