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第7章 魔境村の日常生活

第164話 拓哉とオルトロスの日常とビーフジャーキー!

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拓哉の楽しみが最近増えた。何かと言うと、アニカ達が授業を受けている間、オルとロスと遊んだりのんびりすることである。

「オル、ロス遊ぶぞ~」

オルトロスは、いつも議会所の入り口で寝そべりながらアニカを待っている。

「拓哉さん、こんにちは。是非遊びましょう」
「俺様も、遊んであげなくもない...です」

拓哉様呼びを以前はしていたが、拓哉が辞めてほしいと言ってからは、拓哉さんと呼ぶようになった。ロスは、いまだに敬語が慣れないようである。

「今日やる遊びはフリスビーってやつだぞ~広場に行こう」

「お供致します」
「俺様もお供しよう...です」

開拓している場所にまだ広い空き地があり、そこに向かう拓哉達。

空き地に向かうと水を得た魚のように、大はしゃぎして走り回るオルトロス。
拓哉は、フリスビーを取り出してオルトロスに注意事項を言う。

「フリスビーを飛ばして、オルかロスがキャッチする遊びなんだけど、フリスビーは柔らかいから注意してキャッチしてくれよ」

「了解です」
「任せておけよ。そんなヘマはしねぇ...です」

本気で口に咥えたら、フリスビーが粉砕するだろうから注意している。

「よし!じゃあ投げるぞ。ほら取ってこい」

犬と違い初速が凄まじく早く一瞬でキャッチしてしまう。
オルとロスも、全然楽しそうではない。

「流石に遅すぎたかな?」

「拓哉さん、もっと本気でお願いします」
「俺様達を馬鹿にしてるのか?あんな速度寝てても取れるぜ」

とうとうロスは、無理矢理な敬語すら使うのをやめて、拓哉を軽く挑発する。拓哉も、黙ってるわけにはいかないと身体強化を使って飛ばす。
有り得ない速度で飛んでいくフリスビーを、オルとロスが追いかける。見事にジャンプしてキャッチして見せるが、最初のような余裕はない。

「オル、ロス、まだまだいけそう?」

次は、拓哉が挑発する。

「まだまだいけますよ。やっと調子が出てきました」
「俺様にかかれば余裕よ。早く投げてくれ」

余裕というオルとロスに対して、身体強化を更に上げてフリスビーを飛ばす。

「取ってこ~い」

ビュンフシュービューンという聞いたこともない音を出しながらフリスビーが飛んでいく。オルとロスでさえ追いつけていないスピードでフリスビーだけが、無情にも遥か彼方に飛んでいく。だが、オルとロスは、諦めようとはしない。何故だが、さっきより速くなっているような感じだ。そして、フリスビーもオルとロスも、遥か彼方に消えてから暫く経ってフリスビーを咥えたオルとロスが帰ってくる。

「拓哉さん見ましたか?僕達新しいスキルを身に着けたんです」
「俺様にお似合いのスピードスターってスキルだぜ」

なんとあのフリスビーに追い付こうとしている間に、新スキルが解放されたようだ。

「凄いじゃないか?フリスビーも役に立ったってことだね。ってフリスビーが限界みたいだ」

フリスビーを受け取るとパキっとヒビが入り、パキパキっと割れてしまった。

「もう終わりみたいですね...もしよかったら僕達に乗ってみますか?」
「新スキルを習得できたのは、拓哉のお陰だし、しゃーねぇなぁ。乗らしてやるよ」

相変わらず大人しい性格のオルと偉そうなロスであるが、拓哉は一切気にしていない。

「じゃあ、お言葉に甘えて乗せてもらおうかな」

そういうとオルトロスは、伏せの体勢を取って拓哉が乗りやすいようにしてくれている。
拓哉が跨ると、のそりと立ち上がって、ゆっくりと走り出す。

「気持ちいいな。オルとロスはいつもこんな景色とスピードで気持ちよく走ってるんだね」

オルとロスの優しさだろう。拓哉に負担をかけないようにゆっくり走る。微かに風を感じるかなり気持ちいい騎乗である。

「もっとスピード上げられますが、どうしますか?」
「アニカ様のお父様だぞ。平気に決まってるだろ。行くぜ!スピードスター」

急に速くなって、しがみついているだけで精一杯の拓哉。絶対防御で風圧などは感じないが、目が回るほどの速さに驚く。

「ハァハァハァ、ストープ。景色を堪能する余裕もないわ!」

「すいません。拓哉さん」
「えへへ...流石にやり過ぎちまったかねぇ」

「次からは、普段くらいの速さで走って。じゃないと周りを見る余裕すらないよ。それにしても、速さなら誰にも負けないんじゃないか?」

竜には勝てないかもしれないが、あの速さがあれば、他の魔物になら余裕で翻弄して勝てるだろうと思う拓哉。

「今なら余裕で逃げられますよ」
「そうよ!余裕で撒けるぜ...あれ?それじゃ俺様達全然強くなってねぇ~じゃねぇかよ~」

スピードだけで強くなっていないことに気付いたオルとロスは、「うわぁ~そうだった~」と嘆くのだった。拓哉は、それを見て大笑いする。その表情が可哀想なのでジャーキーをあげることにした。

「そんな嘆いてないで、このジャーキーを食べてみてくれ」

そう言ってオルとロスの口にジャーキーを放り込む。モグモグするオルとロス。

「うわぁ~おいしいです。噛めば噛むほど味が滲み出てきます。こんな濃厚なの初めてです」
「こりゃすげぇ~力が漲ってくるぜ。こりゃ普通の肉じゃねぇ~。なんの肉なんだ?」

「火竜と地竜とキマイラのジャーキーだな。バラバラだがら、何に当たるかは運次第だ」

火竜と地竜とキマイラの残った肉をジャーキーにして混ぜ混ぜで袋詰めしてあるのだ。なんと贅沢なジャーキーだと怒られそうである。

「確かに、こっちは、ピリと辛さがあるぜ。こっちは、燃えるように力が漲ってくる」
「こっちのは、深い味わいでお肉って感じで口を蹂躙してきますよ。このジャーキーの虜になりそうです」

「まだまだあるからいっぱい食べていいぞ」

その後、寝そべりながらモグモグ食べているオルとロスにもたれ掛かりながら、拓哉もジャーキーを食べる。涼しい風で眠たくなったのか?拓哉は、モフモフのオルトロスに包まれて寝てしまうのであった。
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