異世界のんびり料理屋経営

芽狐@書籍発売中

文字の大きさ
107 / 203
第4章 新たな出会いと充実していくスローライフ

第104話 (後編) ミノタウロス牛丼とマリーがヤミンに堕ちる!

しおりを挟む
宿に訪れた拓哉。
トントン!!(ドアを叩く音)

「ヤミン君、起きてる??」

中から「うん」と言う返事と共に、ドタドタと勢いよく走ってきてドアが開く。

「たっくん、どうしたのぉぉ!?」

拓哉のことを、たっくんと呼ぶヤミン。 
拓哉的には、呼び名とかどうでもいいんだが、何故なのか聞いてみる。

「あ! えっと...ヤミン君は、食事はできるの?? それと、何故!?たっくん呼びなの??」

食事と聞いて、パァ~と顔が明るくなるヤミン。

「うん! 食事できるよぉぉ。 おいしいの食べたいなぁ!? あと、たっくん呼びは、なんか可愛いからぁぁ??ん~やっぱり可愛いからかな。 嫌かなぁぁ.....??」

上目遣いで、目を潤ませながらたっくん呼びについて聞いてくるヤミン。 男の娘だと知らなければやられているあざとさだと思う拓哉。 心の中で、この子は男の子!この子は男の子!と何回も念仏のように唱える。

「そ、それならよかった。 18時になったらマリーさんと一緒に憩い亭においで。 嫌ではないけど、聞き慣れないからなぁ!まぁ好きに呼んでいいよ。 じゃあ、18時にな」

許しをもらったヤミンは、「やった~」と言って喜んでいた。 その仕草をカワイイと思ってしまった拓哉は、ダメだと思い足早に去っていく。

開店前
憩い亭厨房

「あるじ、新しく来た人に何を作るの??」

最近は、ラリサとアニカに店の掃除と給仕を任せて、桜花は拓哉と一緒に厨房を担当している。 まだ難しいことは任せられないが、下ごしらえなどは、文句の付けようが無いほど完璧にこなしてくれるので、忙しくなってきた憩い亭に欠かせない存在になっている。 だからと言ってラリサとアニカを蔑ろにしているわけではなく、あの二人がいるからこそ調理に専念できるのだ。

「シンプルでおいしい牛丼にしようかなって思ってる。 ヤナが昨日ミノタウロスを狩ってきてくれたから、ちょうど使ってみたくて。 明日の昼間は、ヤナを誘って焼肉丼にしよう」

焼肉丼と聞いて「やったんだよぉぉ」と喜ぶ桜花。

「あるじ、牛丼作りで手伝うことあるかな!?」

そこまで難しい工程もないので、桜花にすべて任せようと思っている拓哉。

「牛丼は、桜花にすべて任せようかなって。 レシピは、これだから今から1食分作ってみて。 大丈夫そうなら店で出そう」

少しずつ桜花が作れる品を増やしていき、色々任せられたらなと思う拓哉。 最近、少し将来のことを考えることが増えた拓哉、それは、また別の機会に語ろうと思う。

桜花が言う。
「え??僕が....! 出来るかな??」

簡単な料理や下ごしらえをするようになって、料理の奥深さを知るようになり、不安さも感じるようになってきた桜花。

「失敗は成功のもと...何事も挑戦してみないことには始まらないし、失敗してもそこから学んだらいいからさ。 とりあえず作ってみろ」

そう言うと桜花は、「うん!」と言って作り始めた。 拓哉は、減ってきたカレーやビーフシチューのストックを作り始める。 
暫くして、桜花が作り終えたのかこちらにやってくる。

「出来たんだよ! あるじの好きな紅生姜もちゃんと付けたんだよ。食べてみて」

綺麗に盛り付けられており、香りも某牛丼屋というよりは、優しい感じがする。
まずは、肉と米を掬って口に運ぶ。

「ん! 桜花、完璧じゃないかぁぁ!! どちらかというと上品な味付けだけど、俺は好きだよ。 それに、ミノタウロスの肉の味が濃くて前面に押し出されて、紅生姜もあるから変に濃い味付けにしなくて正解だ。 ヤミン君に出す時は、もう少し濃い味付けにして、生卵を乗せてあげたらいいかも。 桜花、合格だ! 自分で作ったの食べてみ」

不安そうな顔から一変して、パァーっと明るい顔をする桜花。
自分自身で作った牛丼を食べていると、ラリサとアニカも匂いにつられて厨房にくる。 初めは、黙って食べていたことに怒られたが、説明をしたら作ってくれたら許すと言われて、桜花の練習にもなるしヤミンに出す予定の濃いめの味付けの牛丼を桜花が作ってあげていた。 二人ともおいしいと言っており、桜花は安堵の顔と素直にうまいと言われて恥ずかしそうにしていた。 そうしていると、18時になり営業が始まる。

開店と同時に4人の挨拶が飛び交う。
「いらっしゃいませ~」

村の住人と常連さんが、続々と入ってくる!
マリーとヤミンも、1番後から入ってきてくる。 今日は、二人の対応を桜花にすべて任せているので拓哉は他のお客さんの料理を担当している。

「マリーさん、今日僕が二人の料理を作るんだよ。 ヤミン君もよろしくだよ。 これが、二人に食べてほしい料理。 ミノタウロスの牛丼生卵乗せスペシャルだよ!」

マリーは、桜花のネーミングセンスはどうかと思ったが、牛丼の香りが空腹のお腹を刺激して、食べたい欲求を我慢できなくなっている。

ヤミンも、初めての魔力以外の食事に、目をキラキラさせながら、すぐスプーンを手に取り口に入れる瞬間まできている。

「おいしいぃぃ~!」

「マリマリ、ミノタウロスの味がドバ~ってきて、濃いタレが生卵でまろやかになって、お肉の味を更に昇華しているよぉぉ。 白いつぶつぶ(米)がお肉と食べると...ふわぁぁぁぁ!マリマリ、僕毎日ここに来たい」

マリーのことは、マリマリという愛称を付けたみたいだ。 マリーもそれを許しており、ヤミンの口の周りについたタレをハンカチで拭いてあげている。 姉と弟?妹?のようだ。

「本当においしいわね。 仕方ないからヤミンのお代は私が出すわ。 それにしても、桜花ちゃん料理上手になったわね。 味付けも焼き加減も拓哉さんに全然負けてないわよ」

嬉しさのあまり思わず、一筋の涙が溢れる桜花。

「嬉しいんだよぉぉ。 マリーさん、ヤミン君ありがとうなんだよぉぉ」

ヤミンが桜花の頭をナデナデしながら笑顔を向けてくる。

「桜花の愛称つけないと...!考えておくよ。 それにしても、すんごくおいしかったぁぁ。 できたら桜花におかわり作ってほしいなぁぁ!? マリマリおかわり食べてもいいかなぁぁ??」

マリーに対しても、目を潤ませながらおかわりを頼んでいいか聞くヤミン。 あざといが、可愛いと思ってしまうマリー。

「す、好きなだけ頼みなさい。お金は出してあげるわ。 桜花ちゃんおかわり持ってきてあげて~」

マリーは、貢ぎやすい体質なのか?ヤミンのあざとさが凄いのか? すでにヤミンの術中にハマりつつあるマリーであった。
しおりを挟む
感想 1,411

あなたにおすすめの小説

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

処理中です...