異世界のんびり料理屋経営

芽狐@書籍発売中

文字の大きさ
上 下
92 / 203
第4章 新たな出会いと充実していくスローライフ

第89話 (後編)三色丼の魅力!100年の眠りから覚めたゴーレム!

しおりを挟む
ヤナは、バルトと小次郎に任せて拓哉と桜花は、ヤナに食べさせる料理と常連客の料理の準備に取り掛かっていた。 桜花には、ミスしても修正ができる野菜の皮剥きとひと口大に切る作業をお願いしている。

「このピーラー凄い楽だよ。 どんどん皮が剥けて行くから楽しいよ」

包丁で野菜の皮剥きを教えていたが、薄く剥けず苦労していたので、ピーラーを渡した拓哉。

「ピーラーは、ベテラン泣かせのアイテムだからな。 新人でも、ベテランと変わらない速度で剥けるしね。 でも楽しく剥く作業だけしないようにな。切る方も頼むよ」

拓哉が、籠を見ると剥いたじゃがいもの山が出来ていて、どんだけハマってるんだよと思うのだった。

「ふっふっふっ切るのも任せてよ。あるじに内緒で密かに練習してたんだよ。 僕の練習の成果を見せるよ」

トントントンとリズミカルにひと口大に切っていく桜花! 拓哉が「おぉぉぉお!!凄いな」と言うと調子に乗った桜花は更に早く切っていく。 ザクザクザクザクとじゃがいもを切った音じゃない音が聞こえる。 桜花の「あっ...!」と言う声が聞こえる。

「おぉ~~い!またまな板切ってるよ桜花ぁああ~!」

拓哉の声が厨房に響き渡る。
いつになれば、桜花がまともに調理する姿を見れるのだろうか?

18時営業開始
桜花が看板を出しに行き、集まってる人に「いらっしゃいませ」と声をかけて出迎える。 中に入ると拓哉が「いらっしゃいませ」と言い、常連のお客さんが決まった席に腰を下ろして注文を桜花と拓哉に伝える。 それから、桜花がお酒やソフトドリンクを用意する。 最近の憩い亭の流れである。 桜花は、料理は全然出来ないがお酒に関しての知識は段々身についてきており、おすすめを推せるようにもなり成長が伺えるようになった。(モラル的に桜花にお酒を呑ませるようなことはしていません。)

「桜花、ヴァレリーさんのキマイラのたたきとバルトのマグロの刺身と師匠の秋刀魚の塩焼き出来たから出してくれ」

それを聞いて、桜花は注文された品をどんどん提供していく。
その間に、ヤナ用の三色丼を用意する。 鶏ミンチを甘辛くしたそぼろとほうれん草は出汁が効いたしょうゆ風味に卵も出汁が効いたトロふわに仕上げて丼に乗せる。

他の人の注文を桜花に運んでもらい、拓哉はヤナの元に三色丼を持っていく。

「ヤナ君、お待たせしてごめんね。 三色丼て言う料理だ。 最初は、別々に食べて最後は混ぜて食べてもおいしいから味わって食べてみてほしい」

綺麗に三色分かれた物から、嗅いだことないいい匂いがしてくるのを鼻で感じるヤナ。 自然とスプーンを手に取り茶色の物と知識にあるライスと言う物を口に運び入れる。 口に入れた瞬間、鶏肉の香りと甘辛い何かが鼻から抜ける。 黙ったまま、咀嚼をして舌で味わったことのない旨味を感じながら静かに飲み込む。そのまま一言も発することがなく、ほうれん草と卵も食べて最後に鶏そぼろと卵と米を混ぜて食べる。どんぶりの中は空になる。まだ黙ったままどんぶりを見つめるヤナ。 その様子を静かに見守る拓哉は、内心ドキドキしていた。 暫くして、ヤナは拓哉の方を向く。

「と、止まりませんでした。 初めて食事をしましたが、こんなに素晴らしいとは... 知識でおいしいと言う表現はありましたが、これがおいしいなんですね。 拓哉さん、一言だけ美味しすぎます! おかわりをください!」

心の中でよっしゃー!!!と叫ぶ拓哉。 正直、不安しかなかった。 ゴーレムに食べてもらう。 ましてや、食事を初めてする人(ゴーレム)に何を言われるかドキドキしていた。

「ふぅ~よかったぁぁぁ」

心の底から安堵する。

「待ってろ。 すぐおかわり持ってきてやるからな」

横にいたバルトや他のお客さんが、注文しようと声をかけるも聞こえていないかのように厨房に去って行く。 桜花が、それをカバーするように。

「すいませんなんだよ。 あるじは、あぁなると周りが見えなくなるから。 注文聞いていくから順番に言ってください」

桜花が、ひとりひとりに丁寧に注文を取っていく。 お客さんも常連様と拓哉をよく知る人物なので一切怒ることはなく、逆に桜花を褒める。

「ピザを頂けますか? それよりも、桜花さんは、もう看板娘ですね。 しっかり拓哉さんを支えていて驚きましたよ」

「ほんとだよね。 僕も驚いたよ」

桜花は、照れているのか「えへへ看板娘とか何を言ってるんだよ」と言い、バシン!!とボーンの背中を叩く。

「ぶへぇっ!!? 桜花さん、私骨だから痛くありませんが、他人にしたらダメですよ! 人間なら内臓破裂しますからね。 見てください...背骨にヒビが入ったじゃないですか。 まぁ~魔力ですぐ治しますが」

ほわぁ~んと背骨が光るとヒビが治る。 周りは、ノーライフキングの魔力防壁に覆われた背骨にヒビが入る威力の平手打ちに冷や汗を掻きながら見ていた。

「ごめんなさいだよ。 嬉しくてつい...」

謝る桜花に、ボーンは大丈夫だからと言い優しく頭を撫でる。
そうしていると拓哉がおかわりを持ってくる。

「おかわりの三色丼お待たせ!ってあれ?みんな汗を掻いてどうしたの?」

桜花が怖いとは言えないみんなは、聞こえないフリをして酒を呑んだり料理を食べる。
拓哉はおかしいなと思いながらも、ヤナの前にどんぶりを置く。

「ん~~~おいしいですね~。 甘辛く濃く煮られたお肉とさっぱりした甘みのあるライスがちょうどよく合います。 濃いなと感じたら、野菜と卵と混ぜて食べたらまろやかになって更に食べたいって思えてくるんですよ~。 はぁ~~もうぅ満足です~~!」

ヤナが、エネルギー満タンになり満足した表情を浮かべる。

「それにしても、ヤナのお代はどうするんじゃ? 何も持っておらんじゃろ?」

あ!そう言えばと拓哉も張本人のヤナも気づく。 ヤナは、おろおろしだす。

「ヤナ君、宿を貸すから住んでみるか? お代は魔物を狩ってくるか?バルト達について行って鉱物か薬草を採ってきてくれ。 それを俺が買い取るから」

ネットショッピングで、売って宿代と食事代の差額が出たら、硬貨で返してあげたらいいと考えた。

「いいのですか? 俺にはいいことしかないですよ。 えぇっと、本当にありがとうございます。 しっかり頑張りますね」

やる気に満ちた顔をしているヤナ。

「全然構わないよ。 やることしてくれたら基本自由でいいからな」

はい!と答えるヤナ。

「拓哉よ、そろそろ俺たちの注文も頼みたいのだが......」

あ!営業中だっと拓哉は思い出して、桜花から注文を受け取って厨房に走って行く。 それをみんなは、大笑いをして見るのであった。
しおりを挟む
感想 1,410

あなたにおすすめの小説

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...