異世界のんびり料理屋経営

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第3章 魔国での一幕

第60話 いざ魔国へ! 初の異世界旅行!

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拓哉家の前
村?の全員が集合している。

「わざわざ集まらなくてもよかったのに。もう全員分の祝い品は預かってるんだから、それに数日分の食事も渡しただろ?」

「ワシらに見送られるんが、そんなに嫌じゃったか? 悲しいのぅ。 せっかく、みんなからの贈り物としてこいつを渡してやろうと思ったんじゃが...いらんか」

高級そうな木で出来たまな板と薄青い光沢がなんとも綺麗な様々な包丁があった。 

「え?なんですか?これは! もらっていいのか?」

「渡そうと思ったんじゃが、ワシらの見送りはいらんみたいじゃからな。 こいつらもいらんじゃろ? 悲しい~のぅ。せっかく小次郎が素材を集めてくれてシャーリーとビーチェが、魔力を込めた精霊石とミスリルを混合させた特別製の錆びない切れ味抜群欠けない逸品なんじゃがな~仕方ない!どこかの実力もない料理人にでも売るかのぅ」

内心は笑いながら顔は悲しそうにしながらバルトが言う。 みんなも悲しい顔をする。

「バルト...いや、みんなごめんなさい! 来てほしくないわけじゃなくてわざわざ申し訳ないなって」

拓哉が顔を伏せながら言う。

「がっははは、冗談じゃ! これは拓哉のもんじゃ! どうせ、ヴァレリーのことじゃ、飯を作れと言うに決まっとる! うまいもんを作ってやれい」

みんな黙って粋なことしやがって...薄ら涙を浮かべながら拓哉は聞く。

「みんなありがとう。 こんないい物を頂けるなんて」

拓哉がお礼を言う。

「俺も世話になっているからな。 普段のお礼だ。 それと向こうでも鍛錬は怠るなよ」

「いってらっしゃいませ。 畑は任せてください。 神獣様も無事に帰ってきてください」

「いってらっしゃいませ。 今よりもっとおいしい野菜と果実作っておきますね。 神獣様、拓哉さんをよろしくお願いします」

シャーリーとビーチェが任せてほしいと意気込み無事を祈る。

「わかったんだよ。 あるじは、何があっても守るんだよ」

そこに、転移してきたヴァレリーが話し出す。

「別れの挨拶はすんだか? 行けるようなら俺の肩に掴まれ」

桜花と拓哉はヴァレリーの肩に捕まり、手を振って別れる。

魔国の門前

「お~転移凄いな! もう着いたのか」

「そう言えば、転移は初めてだったか。 これから入国手続きをして城に転移で向かう予定だ」

「わかりました! もし可能なら街を探索してみたかったのですが、城に徒歩で向かったらだめですか?」

「はは、そう言うと思って1日前に呼んだんだ。 明日は、桜花とラリサとアニカと街を見て回るといい。 案内役を付けるから支払いは任せておけ。 じゃあ行くぞ」

そう言うと歩き出すヴァレリー。

「ありがとうございます。 気を遣わせてしまって」

「構わん構わん。 友人だからな」

「あるじ、よかったね。 わぁ~おっきい門なんだよ」

「本当に、俺たちは恵まれてるな。 それにしても、でかいな。 うぉ~サイクロプスか!?」

門から出てきたのは、10mはあろうかというサイクロプスであった。

「ハハハ、サイクロプスを見るのは初めてか。 あ~見えて普段は気遣いができて穏和な種族だ! だが、仲間がやられると狂人化して破壊し尽くすほど強くなる」

へぇ~と聞いていたら、そのサイクロプスは門番と笑いながら気さくに話をして、入国を待っている人へ邪魔にならないよう避けながらぺこぺこ頭を下げ出て行く。

見た目で判断してはいけないなと思う拓哉だった。

3人で歩いて行くと向こうから走ってくる2人の兵士がいた。

「魔王様、護衛も付けずにどうなさいましたか? 人間もいるようですが?」

慌てた様子で話かける兵士だったが、拓哉を見て目を細めて言う。

「あぁ!?城から伝書を送ったはずだが!? 俺の友人を結婚式に招くとな! 聞いていないのか?」

兵士が拓哉に訝しげな目をしたことに気づいたヴァレリーは、威圧を込めて言う。 兵士たちは、尻餅をつき震える。

そこに息を切らしながら走ってきたのは、小太りの兵士だ。

「魔王様が直々に来られるとは!お前ら早く魔王様をお通ししろ! さぁどうぞお入りください」

へこへこする小太りの兵士。

「おい! これはどう言うことだ? 数日前に伝令はされていたはずだが? 部下に伝わっていないとはどう言うことだ」

ヴァレリーが怒る。

「いや~それがですね~。 言ったはずなんですが...」

なんとも歯切れが悪い兵士。

「もうよい! 仕事に戻れ」

「は、はい~! お前ら丁重にご案内しろ」

逃げるように去っていく小太りの兵士。

その後すぐに滞在証が発行されて門を潜る。

イライラした様子のヴァレリーに声をかける拓哉。

「本当にヴァレリーさんがいてくれてよかったですよ。 俺と桜花だけなら門前払いでしたね」

「あるじとヴァレリー、あいつ嘘ついてるんだよ」

丸わかりな嘘だったもんな。 汗だくで慌てふためく姿を思い返すと笑えるな。

「すまんな。 2人には、恥ずかしいとこを見せた。 魔国も一筋縄ではないってことだ。 しかし、普段門など通らんから気づかなかったが、末端の兵士まであの状態とはな。 すぐに、諜報局と内務監査局に命令をせねば。 拓哉と桜花は気にせず楽しんでくれ。 あとこのバッジをつけておいてくれ」

「ヴァレリーさんも大変ですね。 えっと!このバッジはなんですか?」

あまり深く関わってはダメだと思いバッジの話をする。

「これは、国賓待遇で招いたという証だ。 200年前から火乃国を除いた人間の国とは、交易はおろか人間の出入りすら禁じている。 火乃国も遠いからな。滅多に人間が街を歩くなどないんだ。 これを付けていないと怖がられるか、奇妙な目で見られるか、襲われる。だから外すでないぞ」

マジか...交易すらしていないのか! ますます、火乃国以外には行きたくないな。 

拓哉と桜花はバッジを胸元につける。

「また掴まれ! 転移する」

2人はヴァレリーに掴まり転移した。

城の玄関前

拓哉の目に飛び込んだのは、綺麗な大きな庭とデカい綺麗な城だった。

「凄い綺麗な庭に豪華な城ですね。 イメージでは、禍々しい雷鳴轟く邪悪な城だと思っていました」

拓哉が前世のイメージを言う。

「おい! そんな城、地獄ではないか!? 俺をなんだと思っているんだ。 一応これでも綺麗好きなんだぞ」

冗談ぽく怒るヴァレリー。

「ははは!ごめんごめん。 冗談ですよ」

「拓哉はまったく」

プンプンと怒っているヴァレリー。

そんな冗談を言い合っていると、玄関のドアが開いて部下であろう人と執事とヴィクトリアさんと、その後ろにラリサとアニカがいた。

「貴方、少し遅かったじゃない?なにかあったの?」

「ちょっと門でな。 ダミアン、今すぐ諜報局局長と内部監査局局長を私室に呼んでくれ」

先程の件が話し合われるようだ。 

「拓哉、すまんがダミアンの紹介は後ほどする。 あとは、ヴィクトリアとセバス頼んだぞ」

そう言うと、ヴァレリーは足早に去っていく。 ダミアンも会釈をして去っていく。

「拓哉さん、ごめんなさいね。 あの様子だと相当なことがあったようね。 部屋までは私が案内するから滞在中はセバスになんでも言ってね」

ヴィクトリアが謝る。 何度か拓哉の店に行き話し方もフランクになっている。

「ご紹介に預かりましたセバスと申します。 拓哉様、桜花様、何なりと私めにお申し付けくださいませ」

執事のセバスが言う。

お~本物の執事に、まさかの名前もセバス! 絶対優秀だな。 しかも絶対強いはず。

内心興奮する拓哉。

「こちらこそ、わざわざお出迎えありがとうございます。ヴィクトリアさん。 それとセバスさん、滞在中ご不便をお掛けしますが、よろしくお願いします」

「拓哉様、私めに敬語は不要でございます」

「はい!わかりました。 急には難しそうなので徐々に変えていきます」

それを聞いたセバスは微笑みながら頷く。

ちょっと、イケおじな執事の笑みはカッコ良すぎるから! ダンディー過ぎるぞ。

「では、拓哉さんと桜花ちゃん参りましょうか」

そのまま部屋まで案内される。

その間も、ラリサとアニカは、すました顔で抱き着いてこようとしない。拓哉は何故?と不思議がるのと寂しくなる。

「ここが拓哉さんと桜花ちゃんの部屋ね。 夕食時に、セバスが呼びにくると思うからそれまでゆっくりしてて」

ヴィクトリアがそう言うと去っていく。 セバスも会釈をして去っていく。

「それにしても広い部屋だな。 貴族になったみたいだ」

後ろから急に声がする。

「パパ~」 「お父さん」

2人が抱きついてくる。

「お、おう、急にどうした?」

拓哉は驚く。

「ざみじがっだの~」 「え~ん」

ラリサとアニカが泣き出す。

「よしよし。 俺も寂しかったぞ。 さっきまですました顔してたのに...」

頭を撫でながら言う拓哉。

「だっでヴィクトリア様が、すました顔して驚かじなさいっで言うんだもん」

「ぶは、そういうことか!てっきりもうお父さんは忘れられたかと思ったぞ」

「パパ~ずっど一緒にいるの! 忘れてなんかないの」

「よしよし。 2人に忘れられてなくてよかった。 それにしても顔がぐちゃぐちゃじゃないか。 顔洗ってきなさい。 お菓子を食べながら色々話そう」

拓哉が言うと2人は顔を洗いにいく。

その間に、ティーセットとお菓子を用意する拓哉。 
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