異世界のんびり料理屋経営

芽狐@書籍発売中

文字の大きさ
上 下
60 / 203
第2章 日常の憩い亭

第57話 アドルフが婚約!?綺麗な奥さんと来店!

しおりを挟む
魔王城の寝室

「アドルフ様、おはようございます」

赤いロングの髪に、ツノと先がハートマークの尻尾を生やした美人なサキュバスが声をかける。

「おはよう。ヘルカってもうそんな時間か?」

起こしにきてくれたヘルカに挨拶するアドルフ。

「はい!もう夕暮れですね。早く準備してくださいね。 お店に行く時間ですよ」

今日も朝からヴァレリーの修行という名の地獄を味わったアドルフは力尽きて寝てしまっていたのである。 しかし、修行のおかげで今や人類トップクラスと言ってもいいくらいに成長し、魔境を上 中 下で区分した場合、中の区域にいる変異種以外のモンスターなら負けることはなくなった。 

「着替えたら中庭に行くから先に行っててくれ」

「はい!お待ちしております。アドルフ様」

満面の笑みを浮かべて出て行くヘルカ。

アドルフはため息をつく。

はぁ...改めて思うけど、なんであんな美人が俺なんかを好いてくれたのやら...ヴァレリー殿も、とんとん拍子で婚約を進めてしまうし。 ヘルカの親へ挨拶しに行った時なんか地獄だったなぁ。ってこんなこと思い出してる場合じゃあないな。早く準備しないと。

慌てて着替えを済ませて中庭に向かう。

そこには既にヴァレリーとヘルカが待っていた。

「すいません。お待たせしました」

焦りながら言うアドルフ。

「気にするでない。 では、行くとしようか」

ヴァレリーが言うと2人を転移させる。

憩い亭の店前

「また帰る時は迎えにくる。 2人とも楽しんでこい。 それと、アドルフしっかりヘルカをエスコートし、拓哉に招待状を渡すんだぞ」

「はい! わかりました。ヴァレリー殿ありがとうございます」

「魔王様、ヴィクトリア様に凄くおいしいと聞いてますので2人で楽しんできます」

それを聞いたヴァレリーは転移で帰って行った。

「アドルフ様...手を握ってもらえませんか?」

恥ずかしそうに言うヘルカ。

「お、おう! じゃあ行こうか」

顔を少し赤くしながら手を握るアドルフ。 
アドルフがヘルカの手を引き店へと向かう。

カランカラン

「「いらっしゃいませ」」

拓哉と桜花が出迎える。

「あ!お久しぶりですねアドルフさん。 あと、そちらの女性はもしかして?」

手を握っている2人を見て以前焼肉の時に話していた人かなと思う拓哉。

「あぁ~婚約をしたヘルカだな。 仲良くしてやってくれ」

照れ臭そうに言うアドルフ。

「初めまして! アドルフ様が、いつもお世話になっております。 ヘルカと申します」

礼儀正しく挨拶するヘルカ。

「ご丁寧にありがとうございます。拓哉と言います。よろしくお願いします。こっちにいるのが桜花です。 それと、ご婚約されたということでおめでとうございます」

「ありがとうございます。 えっと、拓哉さん、是非結婚式に参加してもらいたく招待状をお持ちしました」

「拓哉、頼む!きてくれないか?」

「構わないですけど、桜花も一緒にいいですか?」

「招待状に桜花さんの名前も書いてあるから問題ない。 あと、ラリサとアニカも当日は拓哉と一緒に参列したらいいとヴァレリー殿が言ってたしな」

当日は、みんなで参加できるみたいだな。
あ!やばいぞ...前世で結婚式なんか行ったことない。 どうしよう? 結婚式の参加マナーみたいな本でも買うか!?

「それならよかった。 そろそろラリサとアニカが居なくて寂しかったしなぁぁ。 でも、結婚式なんか行ったことないけどマナーとか知らないぞ。大丈夫かな?」

「ははは、適当にしてくれたらいい。 それと今日来たのは、招待状を渡すのと俺とヘルカのデートも兼ねてきているから何かうまいもん食わせてくれ」

おいおい!俺の店はオシャレなイタリアンレストランじゃないぞ。 コース料理なんか作れないわ!  婚約してお盛んだろうし、ニンニクたっぷりのあいつを出すか。

「わかりました。 座って待っててください。 先にビールを持ってきますから」

いつものように桜花がビールを運ぶ。

ゴクッゴクッ

「ぷはぁ~やっぱりここの酒は最高だな。 ヘルカどうだ?うまいだろ?」

「はい!苦味がありますが、冷えていてスッと入っていきますし、後味もおいしいです」

お酒に弱いのか少し赤めた顔で話すヘルカ。

「料理も最高なんだぞ! 驚くくらいな」

「フフッ」

微笑むヘルカ

「急に笑ってどうしたんだ?」

「改めてアドルフ様が旦那様でよかったなと思いまして」

ヘルカが恥ずかしげも無く言う。

「バカヤロウ! 急になにを言って...」

赤らめながらそっぽを向くアドルフ。

そんな様子にもお構いなく話しかける拓哉。

「お熱いですね。 こんだけ熱いなら冷えた物をお出しするべきでしたでしょうか?」

微笑みながら言う拓哉。

アドルフとヘルカが顔を真っ赤にさせている。周りにいる人も微笑ましく2人を見る。 普段なら話しかけるであろう常連も気を使って揶揄(からか)うようなことはしない。

「ごめんなさい。冗談ですよ。 今日の料理はアヒージョです。 こちらのバケットに具材を乗せてアヒージョのソース(オリーブオイル)をつけて食べてください。 あと白ワインが合いますから一緒に味わってください。 では私はこれで」

2人の時間を邪魔しないように、料理の説明をしてすぐに去る拓哉。

「はは、恥ずかしいところを見られてしまったな。 熱いうちに食べよう」

2人は、バケットにエビを乗せてオリーブオイルをつけて食べる。

「うめぇ~サクサクしたパンにしっとりしたちょっとピリ辛なソースが合うな。 それに食べたことないキノコの風味ともよく合う。 くぅ~この辛口の白ワインともよく合うな。キノコの風味がより際立つ」

「ふわぁ~おいしいです。 このプリプリしたエビに、ミラガー(唐辛子)とニンニクの風味のソースが合いますね。 これは貝(牡蠣)でしょうか? ん~これもプリプリで中から、濃厚な貝の味がジュワーっと出ておいしいです。 サクサクのパンにも合いますね。 それに、こんなおいしいワインは飲んだことありませんよ。 赤だけだと思っていましたが、白ワインというのもあるんですね」

ヘルカが呆けた顔で言う。

「俺もワインは赤い物だけと思っていた。 さっき呑んだビールもだが、ここには普通では呑めない酒がゴロゴロあるからな。 それにしてもパンとこのソースだけでもうまいからいくらでも食べれそうだ」

「そうですね。 食欲がこんなに湧いたのは初めてです。私も頑張って料理を覚えて、アドルフ様にいっぱい食べてもらわないとです」

意気込みながら言うヘルカ。

「それは嬉しいな。 俺には、もう親がいないから料理を作って待っていてくれる人がいるのは嬉しいことだ」

笑いながら言うアドルフ。

「そうでしたね。 いつかご両親のお墓参りを一緒に行きたいです」

「だな! 人間と他種族がもっと理解し合えたらいいんだけどな。 言って俺もヴァレリー殿やここに通う他種族。それに1番はヘルカとの出会いで考えが変わったんだけどな」

思い出しながら話すアドルフ。

「フフッ私もですよ。 アドルフ様に出会って人間も魔族も一緒なんだと知りました。 いつか手を取り合う日が来ればいいですね」

「そうだな」

2人は料理を食べながら、理想の未来の話をする。

店にいるみんなが、そうだなと思うのと小さな声で2人に「おめでとう」と呟くのであった。  
しおりを挟む
感想 1,410

あなたにおすすめの小説

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...