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第2章 日常の憩い亭

第50話 初めての異世界焼肉パーティー!

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パーティーをする前に、神様が現れるという事件があったが、みんなもなくなく納得してくれた。
若干名(精霊達)は、拓哉を使徒様と呼ぶようになってしまっている。

「皆さん、色々ありましたが、只今より焼肉パーティーを始めたいと思います」

その掛け声とともに、みんなが「おー」とやる気のある声で答えてくれた。

「最初は、地竜の舌です。 1番高級なタン元だけを用意しました。早速焼いていきましょう。 食べる時は、塩 胡椒 レモン汁のタレをつけてくださいね」

あちこちで、一斉に焼き始めてジュ~といい音が響き渡る。 焼き色が付きひっくり返すと旨そうな脂が滴り落ちていい匂いが風に乗ってみんなの鼻孔を刺激する。

「そろそろいけそうですね。 食べましょう」

待ってましたと言わんばかりに、肉汁が滴れるタンを口に運ぶ。

ひと口噛んだみんなは目を見開き同じような顔をする。 

「こんな肉食ったことがないぞ。 噛む度に肉汁が溢れ出て、味も今まで食べた肉とは別物だ。 ただただ、うまい」

「うみゃ~だにゃ。 柔らかいのに独特の食感があるにゃ。 肉汁が飲み物のように溢れてくるにゃ」

「ワシも、こんな肉は食ったことがないわい。 別物じゃが、しっかり肉を食っておるという強い刺激が口いっぱいに広がるのぅ。 うまいの一言じゃ」

他のみんなも、各々感想を言い合っている。

みんなが、2、3枚食べ終わった辺りで次の肉に移る。

「そろそろ新しいお肉に移りますね。 一通り食べて貰ったら好きなお肉を焼いて頂いていいので。 次はカルビという部位です。脂が乗っていて非常においしいですよ。 この特製ダレに付けて食べてください」

タンより脂が多い為、先程より大きくジュ~っと音が鳴る。 ザ・肉だと主張するような匂いが充満して、みんなの目が肉に釘付けとなる。

「皆さんそろそろ焼けましたよ。 食べましょう」

パクッモグモグ

「えっ!? 確かに、脂の旨みと肉汁は凄いけど、牛のカルビみたく脂っぽくてしつこさが一切なく、強烈な肉の旨味と脂の甘さが永遠と口に残るだけだ。 こんなに、いくらでも食べれるカルビ初めてだ」

拓哉が思わず感想を言う。

「拓哉さんの言う通り、脂が滴り落ちるほどなのに全然脂っこくないですね。 エルフとしては、脂っこい物を食べたいなと思ってもどうしても体が受け付けないので、肉汁とおいしい脂身を楽しめるお肉は初めてです」

サリアが、うまそうに食べている。
それを聞いた拓哉が、サンチュとキムチを取り出して、サリアとリーリヤに巻いて食べてもらう。

「ん~~これいいわ。 シャキシャキした野菜にピリっと辛いザクザクした野菜が、お肉の味とタレの味と合わさってより美味しさが増したわ。 拓哉、もっとこの野菜ちょうだい。 全部これに巻いて食べるわ」

リーリヤが、かなり気に入ったのかバクバク食べている。

「拓哉さん、こんな食べ方もあるのですね。 勉強になります。思ったのですが、巻く具材を変えたら色々楽しめそうですね」

サリアも気に入ってくれたのか、サンチュを巻くと肉単体の時よりは食べているが、料理人だからなのか顎に手を当て思案しながら食べている。

あと子供達にも大人気なようだ。

「これ凄くおいしいの。 口の中に肉汁が押し寄せてくるの。 幸せなの」

「ふぁ~濃厚なお肉に旨味が口いっぱいに広がってアニカの言う通り幸せ。 ベアお姉様もカルビお好きですか?」

「ええ。とっても好きよ。 こんなにおいしいお肉食べたことないわ。 ラリサとアニカは、羨ましいわね...お父様が拓哉様で」

こんなにおいしい物を、いつも食べられて羨ましいと思うベアトリス。

「はい!早くお父さんとまた暮らしたいです。 今は頑張って修行しないといけませんが、桜花さんが羨ましいです」

色々な所に行き焼けたお肉を食べ回る桜花を見ながら言うラリサ。

「ふふっ、早く修行終えて帰らないとね。 これからも私と一緒に魔法の修行頑張りましょう」

「はい!お姉様よろしくお願いします」

本当の姉妹のように話すラリサとベアトリス。

次の肉に移ろうとした時、神様が話し出す。

「いつになったらワシにミスジを食わしてくれるんじゃ。 ずっと待っておったが、一向に食べさせてくれんではないか。 嘘じゃったのか?爺さんを騙すとは酷いのじゃ」

念話
『焼肉には、順番があるんだよ。 さっきまで、精霊達にあ~んしてもらって、鼻の下伸ばして楽しんでた癖に! 次焼いてやるから少しは神様らしく威厳を保てよ』

『な~にが威厳じゃ、欲望のままに生きたいんじゃ。 こんな尽くしてくれるおなごは久しぶりじゃて、神界の女神なんぞ、全然可愛げがないんじゃ...すぐ殴ってくるしのぅ』

創造神がそんなだから聖王国の人間も欲まみれになるんだよと思う拓哉。 
あとそんな考えだから女神に殴られるのではとか思うが、もう呆れて何も言えなくなる。

「神様がこう言ってますし、希少部位のミスジを食べますか。 ステーキで食べることが多い腕のお肉ですが、非常においしいので早速焼きましょう。 タレをつけて食べてください」

個人的にも、希少部位の割に安いし、サシがあるのに赤身に近くて好きなんだよなと思う拓哉。

ジュ~と相変わらずいい音がしているが、カルビ程、鼻孔をくすぐる匂いはしてこない。 
だが、食べたら驚くぞと思う拓哉。

「神様、焼けましたので1番にどうぞ」

箸をうまく使い口に運ぶ神様。

「ほほ~こりゃええのぅ! 柔らかくて、見た目は脂が多そうに見えるが、赤身の奥深い味が口いっぱいに広がるのう。 ワシみたいな年寄りには、これくらいがええわい。 みんなも食べなさい」

神様は笑顔で満足そうに食べている。 神様の一言で一斉に食べ出す。

「創造神様のおっしゃる通り、赤身の濃厚な味がするのに、凄く柔らかくておいしいですね。 普段あまり食事をしない精霊にも食べやすいお肉です」

キャリーナが頬に手を当てて幸せそうな顔をする。 

精霊は食事をしなくとも、空気中のマナを吸収すれば生きてはいけるのである。(顎をあまり使う習慣がないので、そこまで強くないのだ)

「私達、妖精にも食べやすいわ。 身体が小さいから噛む力も弱いし、お肉を食べる時はすぐ溶ける脂身ばかりだったの...みんなすぐに気持ち悪くなっていたわ。 でもこれならいくらでも食べれそうよ」

普段は、果実がメインだが飽きると他の物を食したくなる。 だが、精霊と同じで噛む力が弱く満足の行く食事ができていないのだ。

「フレデリカ様、私もこの歳でこんなおいしいお肉を食べるとは思ってもみなかったですぞ。 ここ最近は、食に対して楽しみなことばかりです。 長生きしてよかったですぞ」

宰相プラムは感動して涙を流す。

「ミルおいしいね」 「そうだねニル」

相変わらず仲のいいニルとミル。

妖精も精霊も美味しそうに食べている。

「そろそろ次行きましょうか。 次はハラミです。 おじさん連中はハマること間違いなし。 あっちのテーブルにビールとジュースを置いたから好きに呑んでください」

そろそろ呑みたくなっただろうと酒を出す拓哉。

相変わらずジュ~っといい音をさせながら焼いて行く。 
ハラミを食べてビールで流し込んだらうまいんだよな。 生前、病気になる前はよくハラミで晩酌していたな。

「そろそろいけそうですね。 タレにつけて食べてください。 ちょっとしつこく感じる人はサンチュに巻いて食べてみてください」

パクッモグモグ

うまっくぅ~!ビールに合うな。 牛より旨味が何倍も凄い。 1人寂しく晩酌している時は感じなかったけど、大勢のうまそうな顔を見ると、よりうまく感じるなと思う拓哉。

「これは、うまいぞ。 赤身と脂のバランスがいい、それにビールとの相性も抜群だな」

「ぷはぁ~うめぇ~。 甘みのある脂身に柔らかいけど、歯応えのある肉! 最高のツマミじゃねぇか」

元気になったアドルフもおいしそうに食べる。

「本当ですね。 焼肉とは奥が深い物ですね。 ステーキもおいしいですが、色々楽しめる焼肉もいいものです。 アドルフさんと小次郎さんの言う通りビールに合いますね」

「流石拓哉だな。 こんな色んな部位があることを知っているとは。 口に入れた瞬間は、あっさりした印象であるが、口の中に旨味が広がり満足させてくれる。 それをビールで洗い流し、また一からハラミを楽しめる。 最高の組み合わせだ」

エルドレッドとボーンが仲良く一緒に食べている。

やっぱりおっさん達のハラミ好きは異世界でも同じだな。 
いつの間にか、華のある集まりと酒盛りし合うおっさん達で別れている。
次のホルモンは食いたい人だけ集まって貰って、あとは自由に食べて貰おう。

「次は内臓系を焼いていきますので、食べたい人はこっちに集まってください。 食べたくない人は、好きに焼いて楽しんで下さいね。 ちなみにさっき食べて貰ったタンもハラミも一応は内臓に分類されます」

タンとハラミが内臓と聞き「え~」っと言う驚きの声が響き渡る。 
確かに、俺も初めて食べた時は驚いたもんな。見た目は普通の肉と変わらないし。

それを聞いて、みんな一旦は集まりだしたが、ドロッとしたホルモンを見て女性達は去って行く。

残ったのは、ヴァレリー ラリサ アニカ 桜花 小次郎 バルト ボーン フェン サリア アドルフである。

「結構時間がかかるから、ミノ レバー ハツ シマチョウ マルチョウを全部焼いていきますね」

他にも色々ホルモンはあるが、有名な食べ親まれた部位をチョイスした。

「サリアさんは、女性なのに残るとは思いませんでしたよ」

「これでも料理人ですから、内臓とか見慣れていますし、茂三さんのとこでホルモン焼きというのを食べましたからおいしさは知ってますよ」

そうか少なからず、ヴァレリーさんとサリアさんは、昔茂三さんとこの常連様だもんな。知ってて当然かと思っていると。
ホルモンが縮こまり、焦げ目も付いてきていい感じに焼けてきた。

「いい感じに焼けてきましたので、好きなやつを食べてみてください。 タレでいけますよ」

パクッモグモグ

「あ、これは食べなきゃ損するやつだわ。 レバーは一切臭みもないしパサつきもなく、レバー独特の変な癖もなく、濃厚な味わいだけが広がる。 ぷはぁ~ビールとの相性もいいし、濃厚な味とビールの苦味が合う」

拓哉が思わず感想を口にする。

「このコリコリした食感にあっさりな感じがいいですね。 それでいて、ちゃんと味もありますし、女性にも好まれると思いますよ。ビールにも合いますね」

「サリアお姉ちゃんの言う通り、コリコリした食感がおもしろいの。 でも全然口に残らないしアニカはこれ好き」

「まるちょうと言ったか?プリプリして甘みがあってうまいぞ! 口の中の脂をこのビールで、ぷはぁ~うまい」

「僕はこのハツが好きだな。 ミノと一緒であっさりして臭みもないけど、独特な旨味があるしおいしいよ」

フェンが口をモキュモキュさせている。

「私は、レバーですね。 噛むと濃厚な味が口いっぱいに広がるのが堪りません。 スッと口から消えて後味も嫌味がないですね。 ぷはぁ~ビールの苦味とよく合いますね~」

「俺はしまちょうだな。 脂の甘みとうまさがあるのもだが、この食べているっていう歯応えと食感がいい」

「僕は全部好きなんだよ。 日本で食べた牛さんのホルモンより濃厚で甘くて変な臭さもなくて最高だよ」

周りを見渡すと、女性陣の集まりはロースやイチボやサガリなどをサンチュに巻いて食べている。
男性陣は、ホルモンやハラミやタンを食べながらビールを呑んでいる。
子供達は、カルビやタンを食べながらワイワイしている。

そこにヴァレリーが近寄ってくる。

「これだけの色々な種族が集まって和気藹々としているなど、今まで見たことがないぞ。 だが、本来はこうあるべきなのかもしれんな」

しみじみと語るヴァレリー。

「いいことだと思いますよ。 初めは、神様から言われて始めましたが、この世界に来て、みんなと触れ合ううちに、俺もこういう光景を見たいなとずっと思っていましたもん」

「ワシもこんな早くこういう光景が見れるとはおらんかったわい。 拓哉よ、感謝しているのじゃ。 じゃが、まだ第一歩に過ぎんからのぅ。これからも色んな客が拓哉の料理を求めてきよる。 頼んだぞい」

神様からお礼と頼みを言われる。

「悪い人でない限り、どんなお客様も大歓迎ですよ。次のパーティーはもっと盛り上がりそうですね」

そんな話をしていると、天から光が差す。

「創造神様、何をなさっているのですか? 仕事が溜まっているのですよ。 1人だけおいしそうな物を食べて早く帰りますからね」

光を放っている縄のような物でグルグル巻きにされる神様。 口には猿轡をされてうんうん唸っている。

「拓哉様、この度は大変ご迷惑をお掛け致しました。私は、補佐をしておりますルカと申します。 うちのバカ...いえ創造神様が勝手に下界へ降りるなどあってはならないことなのです。 すぐ連れて帰りますので続きを楽しんでください。 しっかりお仕置きをしておきますから」

「はぁ~ルカ様も大変なのですね。 あ!そうだ。鼻の下を伸ばして精霊さん達にあ~んとかさせてましたよ。 十分なお仕置きをお願いします」

創造神に対して、悪い笑みを浮かべながら告げ口をする拓哉。

念話
『なんてことを言うんじゃ。この薄情者めが、ワシと精霊達との楽しいひと時をバラしよってからに』

『.......』

聞いてないフリをする拓哉。

「創造神様とあろうお人がなんて破廉恥なことをしているのですか? これは帰ったら他の神様達も呼んで教育が必要ですね」

涙目になりながらうんうん唸っている創造神。

「拓哉様、それでは失礼致します」

「お迎えお疲れ様でした。 ルカ様もお時間ありましたら食べに来てくださいね」

「いずれ伺わせていただきますね」

簀巻きにされた創造神とルカが消える。

「使徒様、創造神様は大丈夫でしょうか?」

心配するキャリーナ。

「大丈夫でしょ。あれでも創造神ですし、死にはしませんよ」

軽く答える拓哉。

一時期は、騒然としていたが、時間が経つにつれてそれぞれの場所に戻りパーティーの続きを始める。

その後、満足した人達から帰り始めて、拓哉は、一組一組と別れの挨拶を済ませる。 

みんなが帰り、片付けをしている時、桜花が話し始める。

「あるじ、楽しい毎日をありがとうだよ。 凄く感謝してるんだよ」

桜花から思わぬ一言を言われる。

「こちらこそ、桜花がいてくれて楽しい毎日だ。ありがとうな。 明日からまた忙しくなるぞ。 手伝いよろしくな」
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