異世界のんびり料理屋経営

芽狐@書籍発売中

文字の大きさ
上 下
47 / 203
第2章 日常の憩い亭

第44話 待ちに待ったドラゴンステーキ!

しおりを挟む
未だに責められている拓哉を放っておき、ヴァレリーは置いてあったナイフで解体を始める。

「アニカ、あやつらは放っておいて解体を始めるぞ。 まずは、足を全て切り落とす。それからケツの方から皮を剥いでいく。ドラゴンは皮膚が硬いから、気をつけて剥ぐんだ」

デカいドラゴンの足をスパスパ切る度に、アニカは「お~」と感嘆の声を漏らす。

うむ、流石はオリハルコンナイフであるな。最(いと)も簡単に切れる。 

「このまま慎重に、ケツの方から皮を剥いでいく。剥がし終わった皮から鱗を剥がす作業は本来後でやるのだが、手伝ってみるか?」

「うん!やってみたいの」

「戦闘用ナイフだがこれを使いなさい。まず、皮と鱗の間にゆっくりとナイフを入れて剥がしていく。 力任せにすると傷が付くのでな。 ではアニカ、やってみなさい」

アニカは言われた通りに剥がしていく。

おぉ~やるではないか! アニカには才能があるかもしれんな。 

「うまいぞアニカ、この調子で剥がしてくれ。もし、わからないことがあればすぐ言うんだぞ。」

なんだかんだ面倒見のいい魔王様である。

ヴァレリーが、次の作業に取り掛かろうとした時、拓哉が声をかける。

「すいません...ヴァレリーさん、ご迷惑をお掛けしてしまって」

申し訳なさそうに謝る拓哉。

「気にするな。 アニカも才能があるようだし、手伝ってくれている。 次は内臓を取り出す作業だ。手伝ってくれ」

人生経験が長いのか?男女のことに関わりたくないのか? ヴァレリーは、解体の話をすぐするのだった。

ヴァレリーと拓哉は、内臓を取り出していく。

「前回、ワイバーンの内臓を料理で出してくれたが、ドラゴンも食えるのか? 本来はドラゴンの内臓は薬に使うのだがな」

元々異世界では、ホルモンを食べる習慣がないが、何気なく聞くヴァレリー。

「一応、今鑑定したところ食用可になっていますね。元々師匠が仕留めた獲物ですし、食べるか売るかは聞いてみてからにしましょう」

本当は食べたくて仕方がない拓哉だが、小次郎の物を勝手にする訳にはいかずそう答える。

「うむ!許可が出れば、俺も食いたいから声をかけてくれ」

「わかりました。 それにしてもアニカはうまいこと剥がしていくな」

「アニカもやればできるの。パパに褒められたの」

偉いぞと頭を撫でる拓哉。 アニカは尻尾を揺らしながら「えへへ」と言っている。

内臓を取り出したあとは、拓哉が部位ごとに切り分け始める。

「細かく切り分けるのか。 普通は適当に切り分けて焼いて食うからな」 

おかしなことをするなという感じで見てくるヴァレリー。

「肉質を見た感じ、適当でも十分おいしいと思いますが、部位ごとに分けた方が味の違いや切り方1つで美味さが変わってくるんですよ」

「奥が深いのだな。 今まで気にしたこともなかったぞ」

そりゃそうだよな。こっちの世界に焼肉屋や鉄板焼き屋なんてないもんな。 異世界で焼肉屋したら儲かるのでは!と思う拓哉。

「まぁ今日はステーキにする予定ですが、後日焼肉パーティーでもしましょう。 色々な部分を味わってみてください」

異世界人にも違いをしっかり知ってもらいたいしな。 あとは、今まで来てくれた人に振る舞えたら最高だし日程を決めてパーティーやりたいな。

「その日を楽しみにしよう。 ラリサとアニカは連れてくる様にするが、妻と娘もよいかな?」

「当たり前ですよ。 楽しみにしていてください」

そのような話をしていると、離れたところで話し合っていたラリサと桜花がこっちにきた。

「うわぁ~凄いですね。 おいしそうなお肉です」

「僕もこのお肉食べたいよ。 おいしそうなだよね。ラリサ」

えっ!?いつも間に2人は仲良くなったんだと思う拓哉。

離れたところで、ラリサと桜花は恨みっこなしの協定を結んでいたのだ。 
これ以上、悪化させたくない拓哉はわざわざこの話に触れることはなく解体を進める。

「2人共、焼肉パーティーの時に食べさせてあげるから」

2人は喜びながらはしゃいでいた。 アニカも話に入ってくると思ったのだが、ヴァレリーと真剣な顔をして鱗を剥がしているな。
頑張っているアニカを見て、その鱗でアニカの装備を作ってやりたいなと思う拓哉。
そんなことを考えていたら、バルトと師匠が帰ってきた。

「これはまた賑やかじゃのぅ。 また土産じゃ。 火竜がおったので倒してきたぞい」

「拓哉、こいつの解体も頼む」

お~い!今やっと地竜の解体終わったところに、なんちゅうもんさげて帰ってきてんだよ。 しかも地竜よりデカいし...

「バルトと小次郎やるではないか。 見事なレッドドラゴンだ」

ヴァレリーも褒める。

ラリサもアニカも桜花も「お~」とか「凄い」とか言っている。

嬉しいが解体する身にもなってくれと思う拓哉だった。

「わかったわかった。 後日、解体するから今から片付けて地竜ステーキをみんなで食べるぞ。 とりあえず、ラリサ悪いけどみんなにクリーンを頼む」

みんな血だらけか、埃まみれなのでクリーンをお願いした。
ラリサは、「は~い」と言ってあっという間にみんなを綺麗にする。
本当に魔法は凄いなと思う拓哉。

「アイテムボックスに仕舞い終わったから、みんなは店の席に座って待ってて」

楽しみだったのか、キビキビと動き出すみんな。
厨房に着いた拓哉は、一口サイズを塩 コショウで焼いて試食してみる。 

モグモグ

「うっ...うま~い!なんだこの脳天を突き抜ける美味さは!霜降りなのに脂っこさがなく、肉汁からでる肉の甘みが脳天を突き抜ける」

ひと口食べただけなのに、この美味さは凄い。 これは塩 コショウだけで味わってもらおう。

ジュワージュージュー

「焼いてる音もそうだけど、1番は焼いた時の匂いが牛を焼く何倍もの匂いを発してくるな! ドラゴンの肉世界一かもしれない」

ホールでも匂いが伝わり出す。

「まだなのか? この匂いを嗅いでしまってはヨダレがとまらんではないか。ジュルリ」

「早く僕にそのお肉を恵んでほしいんだよ。ジュルリ」

「ワシは、もう我慢できんわい。拓哉~まだなのかのぅ。ジュルリ」

「精神統一しなければ...負けて。ジュルリ」

「早く食べたいの。ジュルリ」

「皆さん、はした無いですよ。ゆっくり待ちましょ。ジュルリ」

もうホールでは、誰も待つことができない状態になっている。

拓哉がホールにステーキを持って現れる。

「まずは、狩ってくれた師匠とナイフを作ってくれたバルトから食べてください。 順番に持ってきますからね」

一回で持って来れない為、厨房にまた戻る拓哉。

小次郎とバルトは、すぐに口に運ぶ。

「うっうぉぉぉ!なんだこの肉は。昇天しかけてしまった...溢れる肉汁とこれでもかという肉の旨味が押し寄せてくる」

「なんじゃ~昔食べたドラゴンとは別物じゃ! あの時もうまかったが、この脳天に突き刺さる美味さはなかったぞい」

それはその筈だ。 部位など気にしない異世界では適当に切って焼くだけ。 今回は、サーロインを切り分けて焼いている。しかも拓哉は、焼き方も考えているのだ。違って当たり前である?

厨房から次々に持ってきてみんなに行き渡らせる。

「美味すぎる。この口に入れた瞬間、トロける肉とガツンとくる美味さ! やはりうちの専属料理人が調理するドラゴンよりうまいな。 塩 コショウだけで、この美味さとは素晴らしいぞ」

ヴァレリーが褒める。

「僕はもう幸せだよ。 神界にいたらこんなお肉食べれなかったんだよ。 肉汁がドバドバ溢れ出てすぐ口からなくなるんだよ」

桜花がとろけた顔で言う。

「お、おいしいの~柔らかいし、甘いし、肉汁が溢れ出るし、口の中が幸せなの~」

尻尾を凄いスピードで動かしながら言うアニカ。

「止まりません。 お肉がお肉が食べて食べてと訴えかけてきます。 頭と口の中が、お肉で支配されてしまいました。 お父さん次のお肉を焼いてください」

いつものラリサと違って、凄い勢いで食べ尽くしていく。
ラリサだけではなく、周りも同じようにもう皿には何も残っていない。
ドラゴンは死んでも尚、世界を支配し続ける最強種なのだと拓哉は思うのだった。
それから全員合わせて計120枚を焼かされることになり、後日拓哉は腱鞘炎になるのだった。
しおりを挟む
感想 1,410

あなたにおすすめの小説

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...