魔法の盟約~深愛なるつがいに愛されて~

南方まいこ

文字の大きさ
上 下
24 / 43
愛しの番

#24

しおりを挟む
 
 彼の男根がじわじわと抉じ開けて来る。既に全身が惚けているせいで、襞を押し広げ入って来る彼の性器がリュシアの弱い部分を掠めてくる。

「っひぅ……ん」
「大丈夫ですか?」
「もう……そんなこと、聞かないで欲しい……」

 リュシアの中はとろとろに解れているのに、大丈夫かなんて確認はしないで欲しかった。
 めいいっぱい彼の性器で満ち足りた肉孔が、きゅうと凝縮して彼の男根を締め上げた。

「あっ……あ……」
 
 自分で勝手に彼の性器を締め上げて喘ぐなんて、淫乱だと思ったが、番う相手に体が昂っていく高揚感は、どうにもならない物なのだとリュシアは思った。
 どうして……、と不安を覚えるほどに体中が、セレスを切望し震え始める。 
快楽よりも深い愛情という奈落にどっぷりと嵌ってしまったような感覚は、他人には分からない物だ。

「……リュシア……」
「うん……」

 つがいだと分からないわけがなかった。
 今まで自分は半身だったのではないかと思うほど、セレスと繋がっていることが当たり前のように感じた。それと――、彼が欲しいと心の底から願う卑しい心が湧いた。

「二人で一人って感じがする……」
「あなたは魔力が無いので、きっと私ほど感じないのかも知れませんが、満ち足りるとはこういうことだと思います……」

 考えて見れば、目が合うだけで番う相手だと分かるのだから、こうやって体を繋げれば、その想いはより強固になって行くは当たり前のことなのかも知れない。

 ――……僕の番……。

 深くて底の無い愛に目覚め、改めてセレスが〝つがい〟なのだと確信し、繋がった余韻にうっとり身を委ねていると、彼の茎がどくんと脈打つのを感じて、さらに愛しい気持ちが膨れ上がる。
 彼の何かを堪えるような熱い吐息に、絆されて「セレス……」と名を呼べば、それに応えるように彼が抽挿を開始した。

「……っ辛くないですか?」
「うっ、あぁ、ん……」

 返事をしたけど、喘ぎが混ざり合い、ちゃんと答えることが出来なくて、恥ずかしくなる。セレスも返事だと分かっているはずなのに、「本当に大丈夫ですか?」と何度も聞いて来るので、その度にリュシアは喘いだ。
 怒張でゆるゆると揺すられ、突き抜けるほどの刺激ではないけど、それが却って身悶えするほど気持ちが良くて息が上がる。
 時折、聞える「ふっ」と漏れる彼の吐息と、結合部分の濡れた音が快楽を押し上げた。

「あ、ぁ……ぅ、あぁぅ――」

 緩やかな動きだけれど確実にリュシアの弱い部分を狙って突いて来る。まるで、こちらの反応を愉しんでいるように、一突きごとに性器で襞をねぶられるようだった。
 彼から労わってもらっていることを感じて、身体よりも心が満たされて、つい――、「ごめんね……」とリュシアから謝罪の言葉が出た。

「こんな時に……っ、謝らないで下さい……」
 
 ずんっと最奥に腰を落ち着けたまま、するすると彼の手がリュシアの胸元へ伸びる。尖り切ってしまった先を指で弾かれて、思わず彼の手に縋り付いた。
 そのまま弄られ、最奥で留まっていた怒張が動き出すと、リュシアの視界が歪んだ。

「っ……ん、あぁあ……、ぁあ……!」

 労わるように抱かれ、彼の優しさが心の奥に深く突き刺さる。一緒にはいられないつがいなど愛してはいけないのに、理屈ではどうにもならないことを今更のように知る。
 切羽詰まったような、彼の途切れ途切れの呼吸音を聞き、たまらない気分にさせられ、次第に自分が何者であるかなど、どうでも良くなった。
 深く穿たれたまま、身悶えるほどの快楽を受け止め、彼の飛沫を最奥に受けた。
 最初で最後の番との交わりは、この世で最も残酷な暮夜ぼやとなった――。
 
 彼に抱き込まれ、うつらうつら、と微睡む意識の中で、リュシアは急に怖くなった。本当はこんなことをしてはいけなかったのかも……? と恐々とセレスに問いかけてみた。

「もしかして、これは魔の契りを交わしたことになるの?」
「いいえ、あなたは魔法が使えませんので、私の隷属魔法を受け取る器がありません」
「そっか……、契りを交わすって魔法契約なんだ……」 

 ほっとする反面、切なくて胸が苦しくなる。それは番の証を受け取る資格がないのだと言われたも同然だからだ。
 彼はそんなつもりで言ったわけでは無いことくらい分かるけど、契りを結べない番など意味が無いと思った。

 ――そっか……、僕に魔力が無いから……。

 だからセレスは、捨てるなら今のうちだと言ったのだと知る。
 子を産んで魔力が宿れば、自分に隷属魔法を受け取る器が出来てしまうから、そうなる前に捨てろと言ったことが分かり、自然と涙があふれて来た。
 
「セレスは……、優しい人だね、僕に隷属魔法をかければ、もう逃れられないのに……」
「いいえ、優しくはないですよ。本当は、このまま無事に子供が生まれて魔力が戻るのを待つ心算でした。あなたに器さえ宿ってしまえば、私から逃れることは無理ですから……」

 淡々と言う彼の言葉を聞きながら、どうしてそうしなかったのだろう、とリュシアは思った。
 その疑問を投げかける前にセレスから、「けれど、出来なかった」と言う。

「どうして?」
「……ただ、選んでもらいたかったんです」

 小さく息を飲む彼が、きゅっとリュシアの手を掴み指を絡めた。

「番の契りを交わして隷属させることで得る愛よりも、ちゃんとあなたに選んでもらいたかった」
「うん……」

 それなのに、その結果が彼との決別なんて、自分がどれだけ酷いことをしているのか身を持って知る。
 自分はセレスに何もかも忘れて幸せになってもらいたいと思ってた。
 本当に、そう思っていた。けれど、身体を重ねた瞬間、相手を求める気持ちの強さと絆の深さに、抗う術はないのだと知った。
 どれだけ拒絶しようとしても、勝手に愛しい気持ちが溢れて来るのが防げないなんて、とリュシアは〝番〟に出会うことに憧れていた自分を後悔した。

「セレスは国に帰ったあとどうするの?」
「……そうですね、サザンディオへ向かおうと思います」
「あ……、隣国の?」
「はい、あなたを逃がしてしまった責任を取ると言えば、父も心置きなく除籍してくれるでしょう」

 王国ベルヴィルより東に位置する小国で、その国も魔力持ちだけが住む国だが、魔力が枯渇した者ばかりが生活していることもあり、のんびりとした風情が漂う国だった。

「あの国なら、あなたの情報も入って来ることはありませんし……」
「……そっか……」

 ――僕を忘れてしまうの? 

 と彼ではなく自分の心に問いかけた。
 自分から忘れろと言っておいて、彼が目の届かない場所へ行くことを知ると途端に引き戻したくなるなんて、リュシアは自分がこんなに身勝手な人間だったとは思いもしなかった。
「さあ、もう寝ましょう」とセレスに掛け布をかけられ、彼に促されるまま眠りに付いた――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。 その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。 両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。 自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。 自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。 相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと… のんびり新連載。 気まぐれ更新です。 BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意! 人外CPにはなりません ストックなくなるまでは07:10に公開 3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話

屑籠
BL
 サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。  彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。  そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。  さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

処理中です...