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21.疑い深い
しおりを挟むベッドへ向かう誠人の後姿を眺めながら、海翔は、さきほど言われた言葉を何度も思い出した。『もう、とっくにお前のものだ』と言われたことが信じられなくて、嘘みたいだと思う。
スタスタと自分の元から離れて行く誠人を見て、本当に彼を独占出来たのか不安になった。
誠人がズボンのベルトに手をかけながら、ベッドの端に腰を落とし、「どうした? 来いよ」と言われて、海翔の胸が勝手にドクンと弾んだ。
――あ……誘われた。
あんなに待ち望んでいたことなのに、誘われて途惑うのは、まだ半信半疑だからかも知れない。気怠そうに匂い立つような色気を漂わせて、こちらを見る誠人の姿に海翔の体が熱く疼いてくる。
誘われるまま、ゆっくりとベッドへ向かう途中で、海翔は「俺が好き?」と聞いてみる。
「そうだよ」
「本当に? 本当?」
「意外と疑い深いな……、お前の方こそ……」
首を傾げた誠人が言葉を途中で切り、言うのを迷っているようだった。彼の眉に皺が寄るのを見て、海翔は抱き付きながら彼の膝の上に跨り「俺は、これが初恋だから……」と告白した。
その途端くるんと天地がひっくり返り、唇が重なった。呼吸も出来ないほど、口腔を貪られて、あっと言う間に自分の中心に熱が集まり、その部分がもたげはじめる。
誠人はすぐにそれに気がついたようで「酒飲んだわりには、元気がいいな……」と揶揄うように笑みを浮かべている。
「ン、だって、全然してない……」
「気分はどうだ? 大丈夫なら続ける」
「もう最高ぉ……、して欲しい……」
シャツ越しに胸を撫でられて、擽ったい気分になるが、そんなことよりも誠人に求められていることの方が重大だった。
――うわぁ……、どきどきする。
心臓が煩くて暴れる。そのおかげで酔いなんて一気に醒めた。初めて抱かれた時、どうしてあんなに平気だったのか不思議なくらい、胸が苦しくて、恥ずかしい気分だった。
熱の篭った目で、じぃと顔を見つめられ、またもや唇が重なり、口の中が誠人の舌で解されていく、たまに、きゅっと舌と唾液を吸われて、じんっと頭の芯まで痺れて朦朧としてくる。
「海翔、腰あげて……」
言われた言葉に抵抗出来ず、素直に腰を上げると、一気に上下を脱がされ、視線が身体中を這う。誠人の視線に劣情が籠っているのが、ありありと伝わって来て、思わず内腿をすり合わせた。
「何か、はずか……しい……」
「俺しか見てないのに?」
今まで裸を見られるのだって平気だったのに、変だ、こんなの……、と自分の体じゃない見たいな羞恥を味わうと同時に、すごく興奮した。
首筋に落ちた誠人の唇の熱さに火傷を負ったように、全身に熱が広がり始める。すっかり勃ちあがったペニスは痛いくらいで、早く触れて欲しくて腰が揺れる。
胸元へと顔が移動して、垂れた唾液と舌で先端を包まれて転がされると、甘い刺激が後孔の媚肉までも溶かし始めるようで、じっとしていられなかった。
――ぁあ、なに……これ……。
誠人の舌や這う手などが、以前とはまるで違っていた。全身で海翔を愛撫し「好きだ」と言いながら、時折、こちらの様子を覗き見る。
その顔が艶っぽくて誠人の顔をまともに見ることが出来ず、ふいと横を向いた。くすっと笑う彼の吐息が聞えて、これ以上ないほど尖りきった乳首をピンっと弾かれた。
「あっ、……ぁあ……っ」
「どうした? 我慢できない?」
「う、ん、触って、すぐ出ちゃいそう……」
誠人の視線が下へ降りて行くのを感じて、ドクっとペニスが脈打つのが自分でも分かる。
「これは、大変だな」
そう言った瞬間、誠人の頭が下腹部へ降りて行く、さわさわと茂みを撫でられながら、腹から徐々に舌が這いずりペニスに到達する。
これ以上ないほど興奮して反り返ったソレは、腹に張り付いているせいで、先端から零れている蜜の多さが自分でも分かり、さすがに恥ずかしくなって身を捩るが、力では敵うわけも無く、ぱくっと銜えられた。
「ン……、や、だ……、そんなの……だめ」
――どうにかなりそう……。
どれだけ我慢しても、最終的に誠人の愛撫に勝てるわけない、頭の中まで愛撫されているような蕩ける感覚に襲われながらも、このまま快楽に委ねれば、彼の咥内に自分の熱を放つことになる。
それだけは、どうしても嫌で「ねぇ……、だめっ」と手を伸ばし、なけなしの抵抗をするが、ふと顔を上げ、意地悪な笑みで「どうした達きたくないのか?」と尋ねられる。欲望を煽られて、海翔は「それ、ずるい」と涙目で訴えた。
「どうする、ここで止めてもいいぞ?」
指で裏側の血管を撫でられ、腰が浮き上がる。そんなふうに焦らされては苦しいだけだ。
「……イ、きたい」
素直に欲望に従った瞬間、容赦のない刺激に襲われた。ズン、と海翔のペニスが誠人の喉奥へと導かれ、ぎゅーっと舌と口の吸引で全体を吸われる。
熱く濡れた舌が割れた先端を行き来する度に、これ以上ないほどに硬くなった性器が、さらに膨れ上がっていくような感覚になる。
頭の芯が捩じられ、目の前がチカチカと光が飛び散る景色に変わっていくと堪らず腰を浮かした。
「んっぅ……達……くっ、……で、ちゃぅ……ッ!」
結局、為す術もなく射精を促され、そのまま熱を放出した。誠人にコクリと全てを飲み干されて、そのまま根元までゆっくりと舐め上げられ、一滴残らず彼の舌で綺麗にされて、その刺激にビクビクとペニスが揺れる。
今まで味わった快感など比ではないほど深い物で、海の底に溺れて行くような体のだるさに襲われた。
ぐったりと身体を放り出していると「後ろも欲しいだろ?」と言われる。
誠人は何処からか取り出したジェルの蓋を開けると、海翔の後孔へと指を忍ばせてきた。背筋がぞわりと快感で仰け反り、そのまま俯せにされ、腰を高くあげさせられた。
恥ずかしい恰好をさせられて羞恥が湧き、散々熱くなった体が、さらに火が点いたように熱くなる。
「やっ、だ……」
誠人の長い指がうねるように、後に入って来る。ゆっくりと確かめるように内襞を広げられ、ちゃぷっと舌が背筋を這ていく。
――こんなの……、また……。
果てたばかりの熱がまた集まり始めるのを感じて、膝が震えて体を支えられなくなるが、咄嗟に誠人の腕で持ち上げられる。
海翔はこんな風に、自分に快楽を与えようとする奉仕のような抱かれ方をされたことがなかった。
全ての悦楽を教え込むような、誠人の容赦のない愛撫に、快楽を追うことしか考えられなくて、口では嫌と言っても、誠人の愛撫に合わせて腰は揺れて、ペニスから先走りがとろりと垂れるのが視界に入る。
「あ、ぁ……、いい……」
海翔の中を暴れ回る指が、内襞のしこりを擦り上げる。弾けるような強い刺激はペニスにまで伝達して、たまらず自分の手で激しく扱きたくなる。
何度も同じ所を擦られたせいで、ひくつく後孔が、ぎゅっと誠人の指を銜えこむと、指の動きが止まってしまう。「どこがいい?」と聞かれて説明出来ないでいると、するっと指が抜かれそうになり、絶望的な気分になった。
「っ……や……」
嫌、嫌、と頭と腰を振ると、誠人が「なら言わないと」と、楽し気に言われてしまう。意地悪なことをしてくる誠人に仕返しをしたいのに、出来なくて「さっきの……ところ擦って」と精一杯のおねだりをした。
もう一本指が追加され、クイっと二本の指で中を広げられながら、くると中を擦られて、あまりの刺激に声にならない悲鳴をあげ、息が途切れる。
「ほら分かるか? ここ……」
「あ――、あぁ……ぅ」
海翔は促されるまま、こくこくと頷き、うわずった声をあげた。そんな部分が感じるなんて知らなかったし、骨ばった指で器用にそこを押さえ付けながら、別の指が肉胴を出入りする刺激に堪らず甘えた声が出る。
「いっ、い……、そこ、好き……っ」
何度も同じ場所を擦られ、もっとして欲しいと強請るしかなく、あられもなく腰を振った。目の前が白く点滅し、視界がぼやけてくると、海翔は身体を支えきれず、倒れ込みながら誠人の指だけで達っした。
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