恋語り

南方まいこ

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その後の二人~抜け人の町へ

#63

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「ん……、ぁっ」

 さっきまで寝る気満々だったのに、現在、まったく違う行動をしていた。
 シャールの性器をくわえて、興奮状態に陥っている。
 甘ったるく自分の名前を呼ばれ、身体中の血がカッと燃えるように上昇していく。どうしてこんなことになったのか、それは簡単なことだった。 
 寝ようとシャールを抱き込んだ後、ツイっとこちらに顔を向け「今日はしてくれないの?」と聞かれ、そんなことを言われて、しない男がいるなら見て見たい、と今に至る。
 
「あぁぅ、もっ、もれちゃう……」

 口淫の快楽にシャールが体を震わせて可愛い声をあげるのを聞き、さらに激しく口を動かしながら吸い上げれば、自分の咥内に吐精の熱が広がり、青い香りが鼻孔を焼いた。
 とろりとした液体をオーディンが全て飲み干すと、はふっと気怠げに吐息を洩らしながら、一息付いたシャールが「僕もする」と昨晩と同じ状況に陥る。さすがに今回は強く抵抗した。

「駄目だ……」
「どうして? 昨日は、また今度って言ってた」
「言ったけど……、まだ耐性が出来てない」
「……? 僕、それ分からない」

 そんなこと詳しく説明出来るわけないだろ、と心の中でオーディンは突っ込む。
 舐められたら直ぐに逝きそうなので、出来ればお前の中で果てたいと、羞恥を倍増させる発言を自ら言えるか! と身悶えつつ「とにかく、お前は何もしなくていいから」とシャールに言えば不貞腐れた。

「どうして僕のすることは反対ばかりするの?」
「反対してるんじゃない……」

 昨日まで、性に関して何も知らなかったせいか、シャールは好奇心が先行しているようだった。
 純真な眼差しを向けながら、艶かしいことをしようとする姿は、眩暈を引き起こしそうになるくらいオーディンを堪らない気分にさせた。

「あのな、出来れば……、ここに早く挿れたいんだよ」

 そう言って、ぐっと窄まりを圧せば、またもやシャールから甘い声が出てオーディンの下腹部が疼いた。

「ほら、もう大人しくしてろ……」
「う……ン……」

 温めた香油を指に取り、後孔へ挿れると、きゅうっと襞が指に絡みついてくる。何とも言えない色気が昇る表情を見せたシャールが、自分の名を呼ぶたびに、さざ波のようにオーディンの高揚感が駆け昇って来る。
 解れた後孔から粘着音が聞え、たまにシャールの身体がビクンと跳ねると、小さく形を変えた性器が、徐々に大きく育っていくのが見える。

「ん……あ、ぁ……オーディン、あのね……」
「どうした?」

 きゅるっと潤んだ瞳でシャールが「早くして欲しい……」と、甘ったるく言うのを聞き、こめかみに血液が集まりクラっとしてくる。
 シャールが体を起こし、ツっとオーディンの性器に触れて来る。その感触にぞわりと痺れが走り、堪らず呻き声をあげた。
 またもやシャールに煽られてしまい、更に余裕がなくなる。頬を蒸気させながら、とろりと目を伏せるシャールをそのまま抱き抱えた。

「ちゃんとしてやるから……」
「うん」
「それに、……するつもりで解してんだよ、さっきも言っただろ」

 唇を重ねながら、膝に乗せたシャールの後孔に再度指を捻じ込むと、その刺激にぐっと背中を反らす。徐々に形が整って来たシャールの性器が、オーディンの雄茎と擦れると、互いの先端がぷくりと雫を作り始めた。

「……っ、ぁあ……」
「うっ……」

 擦れて気持ちが良いのは、お互い様だが、シャールはその刺激が気に入ったのか、うっとり吐息を吐きながら腰を緩やかに揺らし始める。

「っ、腰……あまり、揺らすなよ……」
「う、……ん?」
「出る……だろ」
「ぁっ、……でも、ね……こうすると気持ちが良いよ?」
「わ、分かってるんだよ……、そんなの……」

 このままでは挿れた瞬間、達してしまいそうだと、シャールを膝から下ろし、四つん這いにさせる。ぷりんと揺れる双丘を眺め、背後から後へ指を入れ直しながら、自分の呼吸を整えた。
 一番反応のいい所を突っつくと、シャールの頭が左右に揺れる。
 切羽詰まった喘ぎ声が、オーディンの耳に焼け跡を残すように、その声がこびり付き、欲望がはち切れそうになる。
 
「このまま挿れる……」 

 細い腰を引き寄せ、自身の昂るモノを熱い中へと埋め込むと、ひくり、ひくりと肉襞が震え、シャールから悲鳴にも似た声が細々と聞えて来る。

「ん、ぁぅ……――!」

 奥までガツと入れた瞬間、シャールは射精したようだった。
 苦しそうな声をあげ、全身と肉襞を震わせながら、快楽に溺れて行くシャールの姿に、これ以上ない程に興奮する。
 視覚もさることながら、蠢く中の凝縮でオーディンもきそうになるが、何とか留まった。
 ぱたっと力が抜けたシャールを見下ろし、少し腰を引くと「や……ぁぁっ」と言いながら、腰を合わせてくる。

「……っ」

 その瞬間、きゅうとオーディンの性器が締め上げられ、じわりと襞の熱に包まれて堪らず腰が止まる。顔だけオーディンへと向けるシャールの表情に劣情が浮かび、ここぞとばかりに色っぽくなる様子をみて、頭の中がふわふわしてしまい、動けずにいると。

「あぁ……ぅ、きもち、いい……」
「シャール……」

 こちらが懸命に堪えていると言うのに、艶めかしい声を出しながら、ふるふると腰を揺らされて、思わず激しく突き上げたくなるが、もう少し中を堪能したくて、気を散らすようにシャールの胸元へ手を伸ばした。
 ツンと尖った飾りは、非常に可愛らしく人差し指で突けば「ン」と身悶える様子を見て、自分も悶える。

「あ……、っ、ぁ……!」 
「また、けそうか……?」
 
 しなやかな背中に舌を這わせながら、ゆっくりと肉襞を隅々まで擦り上げると、ビクっと大きく背を逸らせ、痙攣しながら果てるのを見て、オーディンも追うように快楽を貪る。甘く痺れる欲望に従い、そのままシャールの最奥で達した――――。 


 翌朝、気怠く起き上がると、隣でスヤスヤ眠る愛しい子を目にし、ほっとする。何故なら、ガイルやプラウからシャール達の一族が短命だと聞かされているからだった。
 御霊使みたまつかいは、死者の魂に触れ過ぎると精神が病むらしく、シャールの母が神殿で奇病にかかった時は、死者の喪霊そうれいによって精神を食いつくされていた状態だったからだと言う。

――御霊の力は使わずに過ごさせてやりたい……。

 シャールを森から出さなかった祖父の気持ちが、今は痛いほどオーディンにも分かる。だから、何れば言霊の森へ帰り、そこで一生を終えるつもりでいた。
 問題は今のままだと、あの小屋では調合が出来ないことだった。
 プラウいわく、今後も定期的にシャールの作る薬を分けてもらいたいと言われているし、シャール自身も作りたがっているので、まずは調合が出来るだけの空間が作れるよう技術を学ぶのが先だと考えていた。
 それと出来れば水晶無しでも行き来出来るように、自分だけが分かるような、道しるべも作りたい、と色々とやりたいことが多いが、それにはまずは技術と目利きが必要だった。
 
「っん……ぅ」
「起きたか?」
「うん、おはよう」

 オーディンは鼻から小さく息を漏らすと「お腹空いただろ?」と声を掛けた。

「うん、僕が作るよ」
「一緒に作ろう、それと……、昨日の昼は何食べたんだ? 家の物は減ってなかったし、食べなかったのか?」

 オーディンの問いに、シャールは笑みを浮かべると、ルシアンからチーズと卵の薄焼きパンを分けてもらったと聞き、半分もらったのなら、申し訳なかったなと思う。
 なので今日は朝飯と一緒に昼に食べれそうな物も作り置きすることにした。
 仕事に出かける前にシャールの髪をひとまとめにし、三つ編みを結んでやれば「オーディン上手」と褒められる。

「こんなの誰にでも出来る」
「僕、出来ないよ?」
「俺が出来るから、お前は出来なくてもいいんだよ」
「うん」
「じゃあ、俺はそろそろ仕事に行く」
 
 出かける準備を整え、オーディンはシャールの頬に口づけを落とした。
 少し離れてから振り返れば、小首を傾げながら手振っている姿が見える。昨日と同様に後ろ髪を引かれながら、今日も仕事を早く終わらせて急いで帰ろう、と心に誓い、そのまま振り返ることなく駆け出した――――。




抜け人の町へ~END.




◇◆◇あとがき◇◆◇

長い話に最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
今回も王家の兄弟物でした。好きなのです兄弟物。

途中、攻めの視点を多く書き過ぎたせいで、オーディンの事故死(仮)を書くのを躊躇してしまいました。
ですが、それが無いと意味がないので、ざっくりと行かせて頂きました。
それからシャール。
あの子は固定観念がないので、初めてオーディンの好意を受け取った時も、そういうものだと受け止めました。
男女の違いは分かっていても、性別に関する境界線が曖昧なので、今後の課題になるでしょう(何目線……)
一番難しかったのは、不自然のないようにシャールを成長させることでした。拙い言葉使いをどう正して行くのかが常に課題でしたが、まだまだ成長途中な感じですね。
Rに関しては、ちょっとドタバタして糖度が低い物でしたが、あの二人には丁度良い物だったのでは無いでしょうか。

あまりBLっぽくは無い物語りだったと思いますが、少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。それではまた♪
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