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04.
しおりを挟む「お疲れ様です。陛下」
またこれだ。
婚約してからもリードは幼少の時のように砕けた口調になるのは稀で、普段から臣下の距離を取っている。
少しだけ元のリードに戻ってくれるのではと期待したのが裏切られた。
「……お前はその態度……変えないのか?」
「……変えないとは?」
今夜は酒肴ではなく温かい紅茶を入れている。
リードが手を動かす度に二人の周りにはほのかに紅茶のいい香りが漂う。
彼手ずから入れたミルク入りの紅茶をフィオリアに手渡す。
(……ミルク入りとは……子ども扱いか?)
「その口調も態度も気に入らない」
「では変えた方が宜しいので?」
「出来るならそうしてくれ。子ども扱いは好かん」
フィオリアが紅茶には手を付けずにテーブルへと戻す。
その瞬間フィオリアに衝撃があった。
後頭部、背中と……背面にソファを感じる。
一瞬何が起きたか分からなかったが、痛いとかいうより目の前にリードの顔があり押し倒されたことに驚いた方が勝ったといったところか。
自分に覆い被さる形で見下ろすリードはいつも通りだ。
「なっ、何をする」
「嫌でしたか?」
「?!」
「陛下は私に性欲がないとでも?」
「せ!性っ?!」
「自分の妻に口づけをしない夫なんていないですよね」
この一か月手を出すどころか態度すら変わらなかった目の前の夫(予定)はしれっとそんなことを返して来た。
「子ども扱いするな言わせてしまった責任を取ろうと思ったが……」
呆然とリードを見つめることしか出来ないフィオリアに、口調を崩したリードが微笑む瞳には揺らぎが滲む。
「やはりまだ早かったか?」
今自分に起こったことがじわじわとリードから熱を帯びて浸食を受けている気がする。
リードを押し返そうにもびくりとも動かない。
腹から胸にかけて掛かる彼の重みで息苦しさも感じる。
「……どけ」
「俺を変えたいとか言わなかったか?」
「……っ」
「俺を変えたいなら先ずはお前が変われ。……我が女王」
言ってゆっくり近づいてくるリードから二度目の口づけを受ける。
それは先程の衝撃のような荒いものではなく優しく途切れぬ波のように、やがてフィオリアの息が上がるまで続くのだった。
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