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03.
しおりを挟む──── ◆ ◇ ◆ ────
「うるさい!!」
「では決められている婚儀をお進め下さい」
「くどい!」
「……分からず屋」
「っ!聞こえたぞ!」
「聞こえるように申しましたゆえ」
「何が望みだ?言われた通りに王配を決めたではないか」
「はい。陛下においてはかなり上々のご決定であると」
「ではなぜ毎日こう煩い?」
「陛下が職務放棄をなさるからです」
「……していない」
「しております」
「してない!」
「では来月には婚約の儀を、来春には婚儀となりますが宜しいですか?」
「決まっているなら聞くな」
「ご自分の婚儀ですぞ」
「したくてするんじゃない」
「……グレイセンも不憫な」
「!!」
なおもくどくどとお小言を言う宰相を下がらせやっと一息吐いた。
一月ひとつき程前に、あの夜の酔いに任せて契約させたリードを王配にしたことを公にしたが、今度は釣書きの嵐が婚儀進行の日程を調整しろと別の嵐が猛威を振るっている。
(……まったく)
決めろと言われたから王配を決め、しろと言われたから婚約までしたのに、その次、その次と雑事を押し付けられる。
フィオリアが辟易するのも無理がない。
頭痛の種を減らすはずがその芽は大きく葉を出し大木になりつつある気がする。
いっそのこと根こそぎ切り倒してやりたいが相手をリードに選んでしまった手前、無下には出来ない。
悩む頭を抱えながら椅子に深く沈み込むと部屋の扉が静かに開いた。
リードだ。
婚約以前は勤務の終わりや当直の交代の機会に合わせて自分のところへ顔を出していたが、婚約後はこうして必ずフィオリアの就寝前に来るようになっていた。
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