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では何が楽しみかといえば、魔術。
本当に魔力持ちで生まれて良かった!って常々思っているくらい。
大魔術師様!みたいに派手な大技とかは出来ないけれど、小さいこととはいえ四つ同時に別々の魔術を使うとか、自分でいうのも変だけど目の付け所はいいと思う。
いずれは派手目な魔術も出来るようになりたいし、何なら聖属性があるかどうかの判定を受けにいって、回復魔術とか出来るようになったら凄いことだしね!
……ただそれも私的にってだけだけど……。
基本的に魔術の勉強は今のところ、自学が主。
両親も魔力持ちだから候爵家とはいえそんなに大反対はされてはいないけれど、一応周りの空気を読めば表立ってはやらない方がいいという配慮は忘れてはならなくて。
だから弟のジィルトが王室付き魔術近衛騎士団に入団が決まった時は、祝う気持ちもあったけれど羨ましくて……こぅ……嫉妬心が……
お勤めとなれば、色々と大変なのはわかるつもりだけど、何といっても王立魔術学院アカデミーに在籍できるっていうのがね!もー特別な事なのよ!
私が在籍出来た暁には、国内外の魔術の勉強は勿論、魔力持ちのお友達だって出来るだろうし……魔術漬けの日々なんて憧れだわ~!
でも人目を憚る侯爵令嬢が魔術師なんて……夢のまた夢……。
ふふっ……辛いわね……。
あ、でも、結婚などせずに入学してしまえばこちらのものかもしれないし、とにかく入学を目指さなくてわね。
あ~そんな素敵なこと考えただけで顔がにやけて……。
「お嬢様?聞いてますか?」
紅茶のカップを手に飲みもせず、にまにま考えていると、サーシャの声で我に返る。
「えぇっと、なんだったかしら?」
やっぱり、という目をサーシャから向けられる。
「旦那様がご夕食の後に大事なお話があるとかで、残られて欲しいそうですよ」
「……何かしら?サーシャ、聞いてる?」
「いえ。ただ、大事なお話、とだけ」
(……そろそろ領地に帰る時期よね。帰る日取りでも相談するのかしら?)
「分かったわ。ありがとう」
サーシャに告げると、特に思い当たる重要なこともないので、別の話題をサーシャに振る。
彼女が切り分けてくれたフルーツタルトは、まだ酸味の残る甘酸っぱい林檎に、胡桃などの木の実が入っていてしっかりしているのに後を引く美味しさが、紅茶の香りを引き立てて、杯を重ねてしまう。
サーシャにも椅子を勧めて、同席を誘う。
本来なら侍女が主と同席でお茶するなんてことはあってはならないことだけど、そこは私との付き合ってきた年月がある。その上、主たる私が許しているのだからそこはそれ。ということだ。
他の誰より的確な話相手をなるサーシャをお茶に誘わない手はない。
ただ、彼女の手が空いていたらの話で、彼女の仕事に支障が出るまでの無茶はしない。
だから、今、着席をしてくれたということは、これからの優雅なお茶の時間は、女子トークの花で満開になることは必至なのである。
本当に魔力持ちで生まれて良かった!って常々思っているくらい。
大魔術師様!みたいに派手な大技とかは出来ないけれど、小さいこととはいえ四つ同時に別々の魔術を使うとか、自分でいうのも変だけど目の付け所はいいと思う。
いずれは派手目な魔術も出来るようになりたいし、何なら聖属性があるかどうかの判定を受けにいって、回復魔術とか出来るようになったら凄いことだしね!
……ただそれも私的にってだけだけど……。
基本的に魔術の勉強は今のところ、自学が主。
両親も魔力持ちだから候爵家とはいえそんなに大反対はされてはいないけれど、一応周りの空気を読めば表立ってはやらない方がいいという配慮は忘れてはならなくて。
だから弟のジィルトが王室付き魔術近衛騎士団に入団が決まった時は、祝う気持ちもあったけれど羨ましくて……こぅ……嫉妬心が……
お勤めとなれば、色々と大変なのはわかるつもりだけど、何といっても王立魔術学院アカデミーに在籍できるっていうのがね!もー特別な事なのよ!
私が在籍出来た暁には、国内外の魔術の勉強は勿論、魔力持ちのお友達だって出来るだろうし……魔術漬けの日々なんて憧れだわ~!
でも人目を憚る侯爵令嬢が魔術師なんて……夢のまた夢……。
ふふっ……辛いわね……。
あ、でも、結婚などせずに入学してしまえばこちらのものかもしれないし、とにかく入学を目指さなくてわね。
あ~そんな素敵なこと考えただけで顔がにやけて……。
「お嬢様?聞いてますか?」
紅茶のカップを手に飲みもせず、にまにま考えていると、サーシャの声で我に返る。
「えぇっと、なんだったかしら?」
やっぱり、という目をサーシャから向けられる。
「旦那様がご夕食の後に大事なお話があるとかで、残られて欲しいそうですよ」
「……何かしら?サーシャ、聞いてる?」
「いえ。ただ、大事なお話、とだけ」
(……そろそろ領地に帰る時期よね。帰る日取りでも相談するのかしら?)
「分かったわ。ありがとう」
サーシャに告げると、特に思い当たる重要なこともないので、別の話題をサーシャに振る。
彼女が切り分けてくれたフルーツタルトは、まだ酸味の残る甘酸っぱい林檎に、胡桃などの木の実が入っていてしっかりしているのに後を引く美味しさが、紅茶の香りを引き立てて、杯を重ねてしまう。
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本来なら侍女が主と同席でお茶するなんてことはあってはならないことだけど、そこは私との付き合ってきた年月がある。その上、主たる私が許しているのだからそこはそれ。ということだ。
他の誰より的確な話相手をなるサーシャをお茶に誘わない手はない。
ただ、彼女の手が空いていたらの話で、彼女の仕事に支障が出るまでの無茶はしない。
だから、今、着席をしてくれたということは、これからの優雅なお茶の時間は、女子トークの花で満開になることは必至なのである。
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