意地を張ろうとしたら嫌味美形の王太子妃になる事が決まりました。

碧天

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 キャデル・シャラ・エクール・カルディア。

 これが十年前からの私の名前。

 義兄あにの名はフォールブラッデイ・フォン・ウォル・エクール・カルディア。

 本名はもっとちゃんと長いが、大きくなっても覚える気はない。本人だとてそれこそ結婚の宣誓書ぐらいのものでなければ本名など書かないであろう。

 それがこのカルディア国の王太子だ。

 お母様の再婚相手が国王陛下だったから、必然で王太子と義理の兄妹になった。

 誕生日は二か月しか違わない。

 お母様と陛下は元々私のお父様も含めた三人で幼馴染みだったそう。

 そこにフォールのお母様が嫁いで来られて仲良くしていらっしゃったみたい。

 でもフォールのお母様はフォールを産んでからの肥立ちひだちが悪く、長く臥ふせっていたところへやはり残念なこととなり、同じような時期に私のお父様も馬車の事故でお亡くなりになったと聞いた。

 大切な人を次々と亡くしたお母様達は前よりも一層支え合って、今の家族の形になる決意をしたそう。

 ただ幼かった私がお父様を覚えているかというと正直、断片的にしか思い出せない。

 それよりも、新しく出来た美しい義兄の方が自分にとっては大きなことだった。

 初めて会った日から今日まで思い出にはすべてフォールがいる。

 普段喧嘩をしていてもいざとなれば彼なりの、素直でない優しさでも私には分かる幸せが溢れた思い出ばかりだ。

 王宮で同じ年で遊べる子どもがいただけでもラッキーなのに、いつまでも見飽きないあの見目麗しい顔は時々口を開かなければ…と幼心に本気で思いつつも、初めて暮らす王宮の生活に楽しさを大いに与えてくれた。

 そう。

 そんな喧嘩してても仲がいい、二人の関係を私が昨日壊した。

 いつもであれば何か憎まれ口を叩いていく彼が、何も言わずに私の前から去って、初めて本当にフォールを怒らせたのだと思い知った。



 (なのに……)



 お義父様に私の婚約の取り止めを願い出るなんて……

 私への新しい嫌がらせにしては度が過ぎている。

 そんな考えもしてみたが、やはり普通に考えてもフォールの意図が分からない。

 ならばフォールに直接聞くしかない。

 クレアに身支度の続きを急ぐよう頼み、フォールの自室に行くこと決めた。





 
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