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約束(1)
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レムナの街から戻ったアマンダは、ステファンの私室を訪ねて何か話していた。窓の外からつい様子を窺っていると、アマンダが気づいて軽く手を振る。フランも手を振り返すが、にこりと笑って、アマンダはすぐに部屋を出ていってしまった。
ステファンが窓を開けてフランを呼ぶ。
「アマンダのことが気になるのか」
昼食後、話の流れから、フランもネルダール同様、ずっとアマンダをオメガだと信じていたことを打ち明けた。ステファンはなぜか嬉しそうな顔でこう聞いた。
『アマンダが来てから時々しょんぼりしていたのは、彼女をオメガだと思っていたからか』
フランは正直に頷くしかなかった。
その後のステファンは、なぜだかずっと機嫌がいい。ずいぶんと重い話をした後だというのに、妙に自信に溢れた、キラキラした笑顔を見せていた。
今も嬉しそうにフランを見ている。フランはドキドキしてしまい、赤くなる顔を伏せて作業に戻った。
作業をしていると、おなかのあたりがもぞもぞとくすぐったくなる。ここ数日、こういう状態が続いていて、何か悪い病気に罹っていたらどうしようと心配になっていた。
ヒートの時とは少し違う。ステファンと目が合ったり、ステファンのことを考えたりすると、胸がドキドキして、それと一緒におなかの下のほうがもぞもぞしてくるのだ。
夕食後、ステファンの私室で勉強を見てもらっている時も、もぞもぞした感じが強くなった。
「ステファン……」
不安になったフランは、思い切って聞いてみることにした。
「おなかが、もぞもぞする……」
「ん?」
「なんか、ヘンなの……」
赤くなってステファンを見上げると、頭を引き寄せられて、髪に鼻を付けられる。クンクンと匂いを嗅がれて、フランは自分から「ヒートじゃないと思う」と言った。「そうだな」と、ステファンも頷く。
「どこが、どうヘンなんだ」
「えっとね、あのね……」
フランは真っ赤になって、とても言いにくいことを口にする。
「おちんちんが、ヘン……」
「あ?」
「ひ、ヒートのときみたいに、なんか、びゅって、出したい……」
カーッと頬に血がのぼってくる。ステファンが何も言わないことが気になって、チラリと視線を上げた。
半分口を開けたステファンが、すーっと視線を泳がせる。そうかと思うとふいに片手で口元を覆って、顔を背けた。
「ステファン……」
その間も、フランはもぞもぞした感じに耐えていた。
「ステファン、僕、どうしちゃったんだろう。それとも、これもヒートのせいなのかな」
言うのが恥ずかしくてとても言えそうにないけれど、本当はヒートの時にステファンとしたことや、ステファンの手の感触や、お風呂に入った時のステファンの身体の美しさなどが頭に浮かんで、そうするとドキドキするようなヘンな気分になって、もっともぞもぞしてしまうのだ。たぶん、少しでも手で触ったりしたら、ヒートの時のような白いおしっこ液が出てしまう。
「ステファン……」
「あー。フラン……」
視線を泳がせたままステファンが顔をこちらに向けた。
「何?」
「ヒートから二週間くらい経つな」
「うん」
「その間、一度も自分でしてないのか?」
「何を?」
処理だ、と短く言われた。
「しょり……」
ステファンは困ったように笑い、視線を戻した。
「出すんだ、それは。溜めるな」
「え……」
「自分で触って、出す」
できない、と涙目になると、引きつった笑いが返される。
「それも、俺が手伝うのか……」
ステファンが窓を開けてフランを呼ぶ。
「アマンダのことが気になるのか」
昼食後、話の流れから、フランもネルダール同様、ずっとアマンダをオメガだと信じていたことを打ち明けた。ステファンはなぜか嬉しそうな顔でこう聞いた。
『アマンダが来てから時々しょんぼりしていたのは、彼女をオメガだと思っていたからか』
フランは正直に頷くしかなかった。
その後のステファンは、なぜだかずっと機嫌がいい。ずいぶんと重い話をした後だというのに、妙に自信に溢れた、キラキラした笑顔を見せていた。
今も嬉しそうにフランを見ている。フランはドキドキしてしまい、赤くなる顔を伏せて作業に戻った。
作業をしていると、おなかのあたりがもぞもぞとくすぐったくなる。ここ数日、こういう状態が続いていて、何か悪い病気に罹っていたらどうしようと心配になっていた。
ヒートの時とは少し違う。ステファンと目が合ったり、ステファンのことを考えたりすると、胸がドキドキして、それと一緒におなかの下のほうがもぞもぞしてくるのだ。
夕食後、ステファンの私室で勉強を見てもらっている時も、もぞもぞした感じが強くなった。
「ステファン……」
不安になったフランは、思い切って聞いてみることにした。
「おなかが、もぞもぞする……」
「ん?」
「なんか、ヘンなの……」
赤くなってステファンを見上げると、頭を引き寄せられて、髪に鼻を付けられる。クンクンと匂いを嗅がれて、フランは自分から「ヒートじゃないと思う」と言った。「そうだな」と、ステファンも頷く。
「どこが、どうヘンなんだ」
「えっとね、あのね……」
フランは真っ赤になって、とても言いにくいことを口にする。
「おちんちんが、ヘン……」
「あ?」
「ひ、ヒートのときみたいに、なんか、びゅって、出したい……」
カーッと頬に血がのぼってくる。ステファンが何も言わないことが気になって、チラリと視線を上げた。
半分口を開けたステファンが、すーっと視線を泳がせる。そうかと思うとふいに片手で口元を覆って、顔を背けた。
「ステファン……」
その間も、フランはもぞもぞした感じに耐えていた。
「ステファン、僕、どうしちゃったんだろう。それとも、これもヒートのせいなのかな」
言うのが恥ずかしくてとても言えそうにないけれど、本当はヒートの時にステファンとしたことや、ステファンの手の感触や、お風呂に入った時のステファンの身体の美しさなどが頭に浮かんで、そうするとドキドキするようなヘンな気分になって、もっともぞもぞしてしまうのだ。たぶん、少しでも手で触ったりしたら、ヒートの時のような白いおしっこ液が出てしまう。
「ステファン……」
「あー。フラン……」
視線を泳がせたままステファンが顔をこちらに向けた。
「何?」
「ヒートから二週間くらい経つな」
「うん」
「その間、一度も自分でしてないのか?」
「何を?」
処理だ、と短く言われた。
「しょり……」
ステファンは困ったように笑い、視線を戻した。
「出すんだ、それは。溜めるな」
「え……」
「自分で触って、出す」
できない、と涙目になると、引きつった笑いが返される。
「それも、俺が手伝うのか……」
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