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【23】ー4
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「はいんないと思う」
「はいんなくても、挿れるの」
えー、とさらにしかめた顔にいくつものキスが落ちる。
「光、おまえマジで可愛い。めちゃくちゃにしたい」
「な、……っ」
何を言っているのだと思うが、清正があまりに幸せそうに笑うので、よくわからないながらも光は清正を許した。
「清正……」
腕を伸ばして抱き付く。
清正の肌は温かく、少し湿っていて気持ちいい。
キスがしたくなって唇を寄せると、小さいキスと、軽く唇を舐めるキスと、深くて官能的なキスが繰り返し与えられた。
「清正、好きだ……」
「うん」
ぎゅっと抱きしめられて胸がいっぱいになる。
光の髪を清正が何度も撫でた。
「光……、あの時、起きてたんだな」
あの時というのは、おそらく十二年前の五月のことだ。
薔薇の下の記憶。
「うん」
「俺、どうしても光の唇に触れてみたくて、寝てるとこ盗んだ」
「うん」
胸の奥がズキリと痛んだ。
同時に、笑みが零れる。
ああ、あれは夢などではなかったのだ。
そう思った瞬間、心が、羽根が生えたように軽くなった。
「キスをして、それから俺は、これはヤバイと自分に言い聞かせた。これ以上はダメだと思って、逃げるように目を逸らしてきた。なのに、おまえは……」
Under the Rose――薔薇の下には秘密がある。
「あんなに綺麗なまま、大事にしまっておいてくれたのか……」
零れるように咲く薔薇の花。
その下に、光は一番綺麗で大切な秘密を隠した。
誰にも奪われないように。
誰にも壊されないように。
名前さえ付けずに、鍵をかけて封じた。
ずっと、見ないふりをしてきたのは光も同じだった。それが壊れたら生きていけないと思ったから。
相変らず順序のわからない言い方で、たどたどしく告げると、清正は「うん」と頷いて微笑んだ。
「綺麗だった」
作品のことを言っているのだと思った。
「清正……」
覗き込んでくる顔を両手で包む。
清正の目がじっと光を見ている。
清正の黒い瞳が好きだ。
初めて会った日からずっと。
顔が近付いてくる。
ギリギリまで綺麗な黒い光を見ていた。睫毛を伏せながら、清正の睫毛も唇もみんな好きだと思った。
口づけを繰り返すうちに、焦燥に似た渇きが大きくなる。
熱く張り詰めた清正の雄が何かとても大切なものに思えて、こんなに硬くなっているのは何かに埋め込むためなのだとふいに気付いた。
求める何かを抉り、突き立てるために必要な硬さ。
これを自分の身の裡に欲しいと、ごく自然に思った。
暴れる猛りに指を絡めると、清正が苦しげに呻く。
「光……」
キスが深くなり、喉の奥まで舌を差し込まれる。
「ああ、挿れたい……。光が欲しい……。全部、欲しい」
「清正……」
「光の中に入りたい……」
ここから、と掴んだ尻を割り開かれ、固い蕾に熱を押し当てられる。
「はいんなくても、挿れるの」
えー、とさらにしかめた顔にいくつものキスが落ちる。
「光、おまえマジで可愛い。めちゃくちゃにしたい」
「な、……っ」
何を言っているのだと思うが、清正があまりに幸せそうに笑うので、よくわからないながらも光は清正を許した。
「清正……」
腕を伸ばして抱き付く。
清正の肌は温かく、少し湿っていて気持ちいい。
キスがしたくなって唇を寄せると、小さいキスと、軽く唇を舐めるキスと、深くて官能的なキスが繰り返し与えられた。
「清正、好きだ……」
「うん」
ぎゅっと抱きしめられて胸がいっぱいになる。
光の髪を清正が何度も撫でた。
「光……、あの時、起きてたんだな」
あの時というのは、おそらく十二年前の五月のことだ。
薔薇の下の記憶。
「うん」
「俺、どうしても光の唇に触れてみたくて、寝てるとこ盗んだ」
「うん」
胸の奥がズキリと痛んだ。
同時に、笑みが零れる。
ああ、あれは夢などではなかったのだ。
そう思った瞬間、心が、羽根が生えたように軽くなった。
「キスをして、それから俺は、これはヤバイと自分に言い聞かせた。これ以上はダメだと思って、逃げるように目を逸らしてきた。なのに、おまえは……」
Under the Rose――薔薇の下には秘密がある。
「あんなに綺麗なまま、大事にしまっておいてくれたのか……」
零れるように咲く薔薇の花。
その下に、光は一番綺麗で大切な秘密を隠した。
誰にも奪われないように。
誰にも壊されないように。
名前さえ付けずに、鍵をかけて封じた。
ずっと、見ないふりをしてきたのは光も同じだった。それが壊れたら生きていけないと思ったから。
相変らず順序のわからない言い方で、たどたどしく告げると、清正は「うん」と頷いて微笑んだ。
「綺麗だった」
作品のことを言っているのだと思った。
「清正……」
覗き込んでくる顔を両手で包む。
清正の目がじっと光を見ている。
清正の黒い瞳が好きだ。
初めて会った日からずっと。
顔が近付いてくる。
ギリギリまで綺麗な黒い光を見ていた。睫毛を伏せながら、清正の睫毛も唇もみんな好きだと思った。
口づけを繰り返すうちに、焦燥に似た渇きが大きくなる。
熱く張り詰めた清正の雄が何かとても大切なものに思えて、こんなに硬くなっているのは何かに埋め込むためなのだとふいに気付いた。
求める何かを抉り、突き立てるために必要な硬さ。
これを自分の身の裡に欲しいと、ごく自然に思った。
暴れる猛りに指を絡めると、清正が苦しげに呻く。
「光……」
キスが深くなり、喉の奥まで舌を差し込まれる。
「ああ、挿れたい……。光が欲しい……。全部、欲しい」
「清正……」
「光の中に入りたい……」
ここから、と掴んだ尻を割り開かれ、固い蕾に熱を押し当てられる。
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