71 / 74
【20】ー2
しおりを挟む
「シンさん……」
テルが涙をこらえるように顔を歪ませた。慎一は「やる気があるなら、はっきり岩田さんたちに言え」と素っ気なく言った。
姿勢を正した六人は身体を折るように深く頭を下げた。
「お願いします!」
白いものの目立つ三つの頭が嬉しそうに頷く。
「おまえら、シンさんの顔をつぶすようなことをしたら、俺が許さねえからな」
泣き笑いで手下たちを脅したテルは、きらきらした目で「シンさん……」と振り返った。
慎一は、やけに冷たく言った。
「用が済んだらさっさと帰れ。そろそろ店を開けるし」
少しガッカリしつつも、テルはもう一度、岩田たちと慎一に深く頭を下げ、手下を連れて出ていった。
岩田たちも一度仕事場に戻ると言って帰っていった。
「仕事中に、すみません。ありがとうございました」
礼を言う慎一に、スカウトや面接も大事な仕事だと言って三人は店を出ていった。
「テルくんたち、よかったね」
「テルに『くん』なんかつけるなよ」
さっきから若干機嫌が悪い慎一だ。
「俺は、まだテルを許してないからな。和希を野外で……」
ぶつぶつ呟いて鼻に皺を寄せている。
(あ、そのことね……)
それでも、岩田たちに縁をつないだのだ。
「えらいね、慎一」
そばに行って頭を撫でると、慎一はすぐに機嫌を直して、いつものようににこりと笑った。
氷を削り、グラスを磨きながら、慎一は店で起きた事件やちょっとした笑い話をいくつかしてくれた。
堀は交番勤務の時にこの地区を担当し、一度よそに異動になってから、刑事として戻ってきたそうだ。
「刑事になってから、どんどん目つきが悪くなってる」
少し嫌そうに言って笑った。
テルが涙をこらえるように顔を歪ませた。慎一は「やる気があるなら、はっきり岩田さんたちに言え」と素っ気なく言った。
姿勢を正した六人は身体を折るように深く頭を下げた。
「お願いします!」
白いものの目立つ三つの頭が嬉しそうに頷く。
「おまえら、シンさんの顔をつぶすようなことをしたら、俺が許さねえからな」
泣き笑いで手下たちを脅したテルは、きらきらした目で「シンさん……」と振り返った。
慎一は、やけに冷たく言った。
「用が済んだらさっさと帰れ。そろそろ店を開けるし」
少しガッカリしつつも、テルはもう一度、岩田たちと慎一に深く頭を下げ、手下を連れて出ていった。
岩田たちも一度仕事場に戻ると言って帰っていった。
「仕事中に、すみません。ありがとうございました」
礼を言う慎一に、スカウトや面接も大事な仕事だと言って三人は店を出ていった。
「テルくんたち、よかったね」
「テルに『くん』なんかつけるなよ」
さっきから若干機嫌が悪い慎一だ。
「俺は、まだテルを許してないからな。和希を野外で……」
ぶつぶつ呟いて鼻に皺を寄せている。
(あ、そのことね……)
それでも、岩田たちに縁をつないだのだ。
「えらいね、慎一」
そばに行って頭を撫でると、慎一はすぐに機嫌を直して、いつものようににこりと笑った。
氷を削り、グラスを磨きながら、慎一は店で起きた事件やちょっとした笑い話をいくつかしてくれた。
堀は交番勤務の時にこの地区を担当し、一度よそに異動になってから、刑事として戻ってきたそうだ。
「刑事になってから、どんどん目つきが悪くなってる」
少し嫌そうに言って笑った。
10
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
おいしいじかん
ストロングベリー
BL
愛重めの外国人バーテンダーと、IT系サラリーマンが織りなす甘くて優しい恋物語です。美味しい料理もいくつか登場します。しっとりしたBLが読みたい方に刺されば幸いです。
今夜も琥珀亭で
深水千世
ライト文芸
【第15回恋愛小説大賞奨励賞受賞作品】
北海道にあるバー『琥珀亭』でひょんなことから働きだした尊。 常連客のお凛さん、先輩バーテンダーの暁、そして美しくもどこか謎めいた店長の真輝たちと出会うことで、彼の人生が変わりだす。
第15回恋愛小説大賞奨励賞を受賞しました。ありがとうございます。
記念に番外編を追加しますのでお楽しみいただければ幸いです。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
しのぶ想いは夏夜にさざめく
叶けい
BL
看護師の片倉瑠維は、心臓外科医の世良貴之に片想い中。
玉砕覚悟で告白し、見事に振られてから一ヶ月。約束したつもりだった花火大会をすっぽかされ内心へこんでいた瑠維の元に、驚きの噂が聞こえてきた。
世良先生が、アメリカ研修に行ってしまう?
その後、ショックを受ける瑠維にまで異動の辞令が。
『……一回しか言わないから、よく聞けよ』
世良先生の哀しい過去と、瑠維への本当の想い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる