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【13】ー5

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 それはすぐに離れていった。

「ありがとな、和希」

 おだやかな声が耳に届いた。

(あれ……?)

 目を開けると、慎一が和希を見つめていた。いつもの優しい笑みを浮かべて。

「あ……」

 何を期待していたのだ。火を噴きそうなほど熱い頬を押さえて視線を泳がせる。

「和希……。そういう反応が、ヤバいんだけど」
「え……」
「二十八の男のくせに」

 顎の下を指で掬われ、顔を上げた。
 整った顔が再び目の前に近づいてくるのを、じっと見ていた。唇に吐息がふれる。
 ふっと、慎一が笑った。

「なんで、さっきは閉じたのに、目、閉じないんだよ」
「え……?」

 閉じて……と言う囁きは、和希の唇の中に消えた。

 軽くふれるだけの、短いキス。

 初めてのキスは、胸がいっぱいになって、心臓がドキドキして、息をするタイミングがつかめなくて、苦しかった。

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