27 / 74
【8】ー3
しおりを挟む
そうできたらと、和希も思う。
「でも、慣れるために誰かにさわるのが、そもそも怖いんだよ。どうやって……」
「和希、俺にさわられるのは、わりと平気だろ?」
「あ、確かに」
魔法の酒のせいかと思っていたが、今、こうして近くにいても、慎一の存在は少しも怖くない。
「もしかして、慎一って、特殊能力があるんじゃない?みるくも簡単に捕まっちゃったし」
「それは知らない。でも、こうやって……」
みるくを下ろして、慎一が手を伸ばしてくる。その手が頬にふれた。
「こうやって、俺が和希をさわってれば……」
なぜだか心臓がドキドキして、視線を逸らしてしまった。
「嫌……?」
首を振ると、そのまま抱き寄せられて、鼓動が早くなる。
「こうやって、父さんや母さんのかわりに抱いてやるから。そしたらきっと、だんだんよくなるよ」
長い腕に包まれて、和希は目を閉じた。
「怖くないだろ?」
「うん」
本当はずっと、こんなふうに誰かにふれてほしかったのかもしれない。
人の身体が温かいことを、和希は生まれて初めて知った気がした。
「和希はいい子だよ」
髪を撫でられて、「何、それ」と笑う。
「自分の父さんや母さんを、責めてない。苦しくても、人のせいにしない。強くて優しい、いい子だ……」
バカ、と口の中で言いながら、慎一の背にそっと手を回した。和希を抱く力を強くして、「いい子だ」と慎一が繰り返す。
「俺は、和希が大好きだ。和希のご両親も、きっとそうだ」
とんとんと背中を叩かれて、なんだか泣きたくなった。
「少し間が悪かったんだな。だから、こうしてるうちに、きっと慣れる。大丈夫だ」
うん、と温かい腕の中で頷いた。
瞼を開くと、広い肩越しに飛行機雲が一本、青い空に綺麗な軌跡を描くのが見えた。
「でも、慣れるために誰かにさわるのが、そもそも怖いんだよ。どうやって……」
「和希、俺にさわられるのは、わりと平気だろ?」
「あ、確かに」
魔法の酒のせいかと思っていたが、今、こうして近くにいても、慎一の存在は少しも怖くない。
「もしかして、慎一って、特殊能力があるんじゃない?みるくも簡単に捕まっちゃったし」
「それは知らない。でも、こうやって……」
みるくを下ろして、慎一が手を伸ばしてくる。その手が頬にふれた。
「こうやって、俺が和希をさわってれば……」
なぜだか心臓がドキドキして、視線を逸らしてしまった。
「嫌……?」
首を振ると、そのまま抱き寄せられて、鼓動が早くなる。
「こうやって、父さんや母さんのかわりに抱いてやるから。そしたらきっと、だんだんよくなるよ」
長い腕に包まれて、和希は目を閉じた。
「怖くないだろ?」
「うん」
本当はずっと、こんなふうに誰かにふれてほしかったのかもしれない。
人の身体が温かいことを、和希は生まれて初めて知った気がした。
「和希はいい子だよ」
髪を撫でられて、「何、それ」と笑う。
「自分の父さんや母さんを、責めてない。苦しくても、人のせいにしない。強くて優しい、いい子だ……」
バカ、と口の中で言いながら、慎一の背にそっと手を回した。和希を抱く力を強くして、「いい子だ」と慎一が繰り返す。
「俺は、和希が大好きだ。和希のご両親も、きっとそうだ」
とんとんと背中を叩かれて、なんだか泣きたくなった。
「少し間が悪かったんだな。だから、こうしてるうちに、きっと慣れる。大丈夫だ」
うん、と温かい腕の中で頷いた。
瞼を開くと、広い肩越しに飛行機雲が一本、青い空に綺麗な軌跡を描くのが見えた。
10
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
恋した貴方はαなロミオ
須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。
Ω性に引け目を感じている凛太。
凛太を運命の番だと信じているα性の結城。
すれ違う二人を引き寄せたヒート。
ほんわか現代BLオメガバース♡
※二人それぞれの視点が交互に展開します
※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m
※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です
【完結】帝王様は、表でも裏でも有名な飼い猫を溺愛する
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
離地暦201年――人類は地球を離れ、宇宙で新たな生活を始め200年近くが経過した。貧困の差が広がる地球を捨て、裕福な人々は宇宙へ進出していく。
狙撃手として裏で名を馳せたルーイは、地球での狙撃の帰りに公安に拘束された。逃走経路を疎かにした結果だ。表では一流モデルとして有名な青年が裏路地で保護される、滅多にない事態に公安は彼を疑うが……。
表も裏もひっくるめてルーイの『飼い主』である権力者リューアは公安からの問い合わせに対し、彼の保護と称した強制連行を指示する。
権力者一族の争いに巻き込まれるルーイと、ひたすらに彼に甘いリューアの愛の行方は?
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう
【注意】※印は性的表現有ります
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる