ふれて、とける。

花波橘果(はななみきっか)

文字の大きさ
上 下
21 / 74

【6】ー2

しおりを挟む
「飲む前に、何か食べる?」
「何があるの?」

 簡単なものしかないと慎一は言ったが、日替わりのつまみはそらまめのチーズ焼き、サラダはカプレーゼ、あとはパスタや軽食が数種類と聞いて、十分だと思った。
 ついでに食事も済ませてしまおうと考えて、文字だけ並んだメニューを見せてもらった。

「カプレーゼと和風パスタをお願いします」
「了解」

 手を動かしながら、ほかの客はたいてい食事を別のところで済ませてくる。たまに早い時間に顔を出す常連客のために、簡単なメニューを用意しているのだと慎一が教えた。

「あれ、この前の兄さんかい?」

 パスタにフォークを入れたところで、入ってきたばかりの客に声をかけられた。

 身なりがよく、そのわりと気さくな雰囲気の初老の男性で、金曜日の夜、堀と同じテーブルにいた人だとわかった。

「眼鏡だと感じが変わるなぁ。せっかくイケメンなんだから、コンタクトにすればいいのに。な、慎一」

 ポン、と両方の肩に手を置かれて、思い切り飛び上がった。
 男が驚いてのけぞった。

「ど、どうした、兄さん?」
「な、なんでも……。ちょっと、ビックリして……」

 ボトルを手にした慎一が「岩田さん、気やすくさわらないでね」と笑う。

「酒とつまみ、いつもの感じでいいの?」
「ああ。ボトル、まだ残ってるよな」
「今日の分くらいはね」

 岩田と呼ばれた男は奥のボックス席に向かった。
 ほかに連れが二人いて、慎一がおしぼりと、グラスを三つ、手早く用意して運んでいった。

 すぐに次の客が来て、同じような言葉を交わしてボックス席に座る。
 人数分の酒とつまみを慎一が運んでいくと、客は慣れた様子で飲み始めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺達の関係

すずかけあおい
BL
自分本位な攻め×攻めとの関係に悩む受けです。 〔攻め〕紘一(こういち) 〔受け〕郁也(いくや)

優しい恋に酔いながら

すずかけあおい
BL
一途な攻め×浅はかでいたい受けです。 「誰でもいいから抱かれてみたい」 達哉の言葉に、藤亜は怒って――。 〔攻め〕藤亜(とうあ)20歳 〔受け〕達哉(たつや)20歳 藤の花言葉:「優しさ」「歓迎」「決して離れない」「恋に酔う」「忠実な」

好きだからキスしたい

すずかけあおい
BL
「たまには実晴からキスしてみろ」攻めからキスを求められた受けの話です。 〔攻め〕玲央 〔受け〕実晴

夢じゃない

すずかけあおい
BL
優しいけど一言多い攻め×素直になれない受け。 ケンカ別れした幼馴染の再会ラブです。 〔攻め〕航希(こうき) 〔受け〕泰斗(たいと)

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ

樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー 消えない思いをまだ読んでおられない方は 、 続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。 消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が 高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、 それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。 消えない思いに比べると、 更新はゆっくりになると思いますが、 またまた宜しくお願い致します。

処理中です...