サンドリヨンは眠れない

花波橘果(はななみきっか)

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【29】-4

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 家具はないし、段ボール箱に詰めれば自力で運べる量だ。
 無駄に広い周防の家にはリビングと主寝室のほかにゲストルームが二部屋と書斎と納戸と家政婦用の部屋、そのほか何かよくわからない小部屋があちこちにあった。ちなみに部屋はあっても住み込みの家政婦はいない。
 台車で運んだ三つの箱を玄関ホールに置き、どこに落ち着けばいいのだろうと思っていると、当然のように全ての荷物を主寝室に運ばれた。
「そちら側のクローゼットが空いている。そこに全部、荷物は置けるだろう」
 クローゼットと言ってもやけに広い。六畳か八畳はありそうだ。
「ベッドがあれば、ここに住めそう」
 箱から服を出しながら言うと、「ベッドはこっちだよ」と、ドアの横に立った周防が主寝室を指差す。
 玲の手を引いて、一つしかないベッドに座らせた。
「今日から、玲はここで、僕と寝るんだよ。毎晩……」
 黒い瞳にまっすぐ見つめられ、頬が赤く染まってゆく。心臓がバカみたいにドキドキと騒いだ。
「玲……」
 キスをされる。そのまま抱き合って質のいいスプリングの上に倒れこんだ。シャツの裾から手のひらが差し込まれる。
「トモ、待って……。お風呂は……?」
「後で」
「でも……」
「待てない」
 手首を掴んで伸《の》し掛かられ、身体の自由を奪われたまま深く口腔を犯された。
「ん……」
 唇が、耳や首筋や鎖骨に移る。小さな喘ぎが口から零れた。
「ん……、あ、トモ……」
「玲……、僕の赤ちゃん、産んで」
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