サンドリヨンは眠れない

花波橘果(はななみきっか)

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【24】-9

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 周防という家に生まれ、期待と責任と義務にまみれて将来の道を模索していた時でもあった。そんな時に、玲の言葉を聞いた。
「玲は、『ホテルは、自分の家と同じくらい安心できる場所』だと言った。しかも、家にいるより、ちょっとだけ幸せ度が増すのだと言った。それは、僕やまわりのスタッフが魔法をかけているからだと言っていた」
 魔法をかける。
 一人のポーターとして働く時も、グループの中心に組み込まれて多くの責任を負わされる時も、願うことは同じだと気づいた。
『僕も、大きくなったら、トモみたいになる。魔法を使う人になる』
 玲の言葉が周防に魔法をかけた。
「それが、僕の本質になった。けれど、何年も働く間に忘れかけていた」
 大きな組織を動かしながら、その重さを仕方ないものと諦めて、安定だけを求めるようになって、本質を忘れてかけていたのだという。
「それでも、神様は僕を見捨てなかった」
 役員面接に玲を送り込んできた。その後は少し弄ばれた気がするが、どうにかここまで来ることができたと笑う。
 席を離れ、玲の前にくると周防は跪いた。片足を立てた王子様のポーズだ。
「玲、愛している。僕のものになって」
 断る理由も言葉もない。
「トモ……」
 右手を預けると王子が立ち上がり玲を抱きしめる。そして……。
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