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【23】-1

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 雨が窓を叩く。
 厚いガラスに無数の水滴が当たって砕ける。風が低く唸る。
 夢の中の玲は、アイスブルーのシフォンドレスを着て『ホテル周防』のメインバンケットを走っていた。
 色とりどりの華やかなドレス、宝石、光の洪水、美しく着飾った淑女たち。
 金色のシャンパンと赤いワインを満たしたグラス。
 まばゆいほどのガラスのシャンデリア。
『王子様はどこ?』
 三人の淑女がイライラと通り過ぎてゆく。
『噂は本当なの?』
『確かな筋からの情報ですって』
『いつもの……』
 いつもの。
 なあに、あれ?
『サンドリヨン、さっさとそこをおどき』
『汚い灰かぶり』
 嘲笑が降ってくる。
 王子がこちらを向いてにっこりと笑った。美しい微笑。麗しの王子が右手を差し出す。踊ろう、シンデレラ。
『ドレスや馬車は外見にすぎないんだ。立場や経歴、その人の生い立ちや経済力、人種、性別、国籍、宗教、年齢も、人の本質とは別の次元にある』
 本質……。
『その人の優しさや、心の美しさのことだよ』
 玲の頬に触れ、唇を見つめて囁く。
『誰かを好きだと思う気持ちも……』
『トモ……』
 でもね。
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