サンドリヨンは眠れない

花波橘果(はななみきっか)

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【21】-4

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『さんはいらないよ』
『トモ』
『玲……』
 好きだよ。笑って髪を撫で、頬や唇にいくつもキスをしてくれた。軽く触れるだけの、挨拶のようなくすぐったいキス。
『トモ、大好き』
『玲……』
 最後の日、どこに行きたいか聞かれた玲は、もう一度バタフライサンクチュアリに行きたいと言った。
 トモは嬉しそうに頷いた。
 数日前に家族と乗ったスカイレールのゴンドラに、その日はトモと二人だけで乗り込んだ。
 レインフォレストの上空を鳥のように渡る。
 深い緑の森を見下ろしていると、二頭の青い蝶が目に入った。
『トモ、見て』
『ああ、オオルリアゲハだ……。別名、ユリシスともいう』
『ユリシス……?』
『幸福の蝶だよ。しかも、あれは番《つがい》だ』
 ユリシスは美しい蝶だ。その姿を見ると幸せになれるという言い伝えがあると言う。
『ただし、それは観光客のためにできた、とても新しい言い伝えみたいだけど』
『嘘なの?』
『嘘とは違うかな。綺麗なものを見て、きっといいことがあるんだと信じたり、そうだったらいいなと願ったりする気持ちは、本物だと思うよ』
 それからなぜか、トモはシンデレラの話をした。
 美しいドレスもかぼちゃの馬車も、魔女が魔法で作り上げたいわば「偽物」だけれど、彼女の心の奥にあった王子に会いたいという気持ちは本物だった。
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