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「グレース・ケリーがモナコのレーニエ大公に会った時、直前に導きのようなことがあったっていう逸話があるの。星占いだったか、何だったか、よく覚えてないんだけど……。運命の相手に会うことを予感したっていうエピソードがあって、実際、彼女は大公に出会って、運命の恋に落ちたのよ」
 大公とアメリカ女優の大恋愛については、世界の誰もが知るところだ。
「それと似たようなエピソードが、周防家当主と原瑤子さんの間にもあったの。つまり、彼女も天啓のようなものを受けて、それがあったから、住む世界が違う人との恋に飛び込んでいけたんですって。あの頃、彼女自身がそう言ってたのを読んだことがあるの」
 今の週刊誌やネットの情報には出てこないが、当時を知る伊藤の記憶には、特にまだ夢見る少女だった頃の記憶には、ロマンチックな逸話として鮮明に残っているという。 
 そのこともあって、モデルでもあり女優でもあった周防の母親のことをよく覚えていたのだと言った。 
「ご自身が大恋愛の末に結婚してらっしゃるから、周防さんにも素敵な恋をしてほしいのかもね」
 紅茶を用意しながら、伊藤はそう締めくくった。
 彼女の印象では、周防の母親は、単に息子の恋愛に口出しする過保護な母親とは違うらしい。
 いずれにしても、周防家が跡取り息子に花嫁を望んでいることは確かなようだと玲は思った。
 伊藤がケーキの箱を開ける。
「エレナと私は半分ずつよ。玲ちゃん、二つ食べちゃってね。残すとエレナを誘惑するから」
「え、でも……」
 じっとりとエレナに見据えられて、ちょっと慄く。
「じ、じゃあ、エレナが好きなの選んでいいよ……」
 玲の言葉を無視して、伊藤がシンプルなチーズケーキをエレナの皿に載せた。ティラミスとミルフィーユが玲に押し付けられる。
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