84 / 190
【18】-2
しおりを挟む
身を起こした周防にさらりと髪を撫でられた。時計を見る。
まだ七時だ。
しかし、周防はさっさとスーツに着替え始めている。仕方なく玲も起きだし、前日ハンガーにかけておいたシャツとスラックスを、もそもそと身に着けた。
完璧な形状のオムレツとベーコン二枚が載った皿が、丸いパンと一緒に運ばれてくる。ポットにはコーヒー。サラダとヨーグルトとキウイフルーツ。
それらを寝室の小さなテーブルで向かい合って食べた。
「ユリシスの伝説を知っているか」
周防が聞いた。
玲は首を振った。そうかと頷き、それきり何も言わない。知らないのなら知らないでもいい、特に構わない。そんなスタンスだ。
「あの、ネックレスは……」
今度は玲が聞いた。
「昨夜のあれで、返すと思うのか?」
「お、思いません……」
だよな、と片方の眉を軽く上げて、周防が玲の顔を見る。
「だが、そうだな……。玲次第では、もう返していいのかもしれないな。玲がどこにいるのかもわかったし……」
「本当に?」
「玲次第では、だぞ」
じっと周防の目を見た。次の言葉を待つ。
「篠田と相談して、考えておく」
「拓馬と……」
「それで、いいんだろう?」
玲の返事を待たずに、周防は席を立った。
「余計なことに時間を使ったから、仕事がたまっているんだ」
「あ……、ごめん……」
「何が?」
「昨日、いっぱい時間取らせて……」
まだ七時だ。
しかし、周防はさっさとスーツに着替え始めている。仕方なく玲も起きだし、前日ハンガーにかけておいたシャツとスラックスを、もそもそと身に着けた。
完璧な形状のオムレツとベーコン二枚が載った皿が、丸いパンと一緒に運ばれてくる。ポットにはコーヒー。サラダとヨーグルトとキウイフルーツ。
それらを寝室の小さなテーブルで向かい合って食べた。
「ユリシスの伝説を知っているか」
周防が聞いた。
玲は首を振った。そうかと頷き、それきり何も言わない。知らないのなら知らないでもいい、特に構わない。そんなスタンスだ。
「あの、ネックレスは……」
今度は玲が聞いた。
「昨夜のあれで、返すと思うのか?」
「お、思いません……」
だよな、と片方の眉を軽く上げて、周防が玲の顔を見る。
「だが、そうだな……。玲次第では、もう返していいのかもしれないな。玲がどこにいるのかもわかったし……」
「本当に?」
「玲次第では、だぞ」
じっと周防の目を見た。次の言葉を待つ。
「篠田と相談して、考えておく」
「拓馬と……」
「それで、いいんだろう?」
玲の返事を待たずに、周防は席を立った。
「余計なことに時間を使ったから、仕事がたまっているんだ」
「あ……、ごめん……」
「何が?」
「昨日、いっぱい時間取らせて……」
11
お気に入りに追加
264
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~
みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。
成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪
イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる