サンドリヨンは眠れない

花波橘果(はななみきっか)

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【18】-1

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 翌日、玲は休日だった。なのに、早い時間に周防に起こされた。
「玲……」
 目を開けると、やけに出来のいい顔が目の前にあった。同じベッドの中に人がいる。
 すっきりと整っているのに、なんだか甘い。麗しの王子の顔。
 前髪が乱れて、額にかかっている。そのせいでいつもより若く見えた。
 誰かに似ている気がしてじっと見つめていると、王子の顔がすっと近づいてきた。
 唇が触れる。羽のようなキス。
「おはよう」
「お、おはよ……」
「よく眠れたかな」
 たぶん、と曖昧に頷く。
「玲、『生殺し』という言葉を知っているか」
「ええと……、超新鮮なお刺身……」
「……それは、『活造り』だ」
 周防はふっと小さく笑い、もう一度キスをした。
 玲の背中に腕を回し、身体全体を抱き寄せる。手のひらで頭を支えるようにして、軽く舌を絡める。
「ん……」
 逃げようともがく。すると、いっそう強く引き寄せられた。
 腰が強く押し付けられ、朝の生理現象で膨らんでいた場所に硬い熱を押し当てられる。
「んん……っ」
 玲は慌て、暴れた。キスがほどける。
 周防の胸に手を当てて黒い瞳をじっと見ていると、突然、はあっと深いため息を吐かれた。
 周防が離れる。熱く汗ばんでいた股間に、急にすうすうとした風が吹き抜けた。
「そろそろ起きる時間だな」
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