37 / 190
【9】-3
しおりを挟む
高層階の専用フロアまではわずかな時間しかかからなかった。
廊下の内装からほかの階より豪華なフロアに降り立ち、ふかふかの絨毯を踏んで周防の後をついてゆく。
玲は努めて冷静を装った。
周防グループの役員と二人きりで対面することへの緊張はあまり感じなかった。それなのに、心臓はドキドキしていた。
慣れない空間に身を置いているせいだと自分で自分を納得させる。
廊下の奥のドアの前に立ち、周防がカードキーをセンサーにかざす。ドアを開いて、玲を先に中に入れた。
広いホールがあり、その向こうにリビングルームがあった。十人以上が楽に座れそうなソファがコの字型に置かれている。中央に四角いテーブル。入り口の反対側は大きな窓で、右手の壁に薄型の大画面テレビが組み込まれていた。
左手には十人掛けのテーブルセットが置かれたダイニングが続いていた。そちらもかなり広い。短辺側の一人掛けを背にする形で大きな窓があり、もう一方の一人掛けの後ろは壁で、端にドアがあった。キッチンに続いていると周防が教えた。
ダイニングの壁面にも薄型テレビが組み込んである。
リビングの一角に書き物机があり、デスクトップのパソコンが二台載っていた。それ以外は仕事場らしい気配のない落ち着いた部屋だった。
「入り口は三か所だ。今入ってきたドアと奥のキッチンに一ヵ所、ベッドルーム側にも一ヵ所ある。非常口は部屋を出て右側に進んだ突き当り。いいかな」
玲は黙って頷いた。確かに、これだけ広い部屋ならばちょっとしたパーティーが開ける。ダイニングでは会議もできそうだ。
「好きなところに座って。食事は何が……」
周防の言葉が終わる前に、ドアがノックされた。
「失礼」
玲を残してホールの向こう側に消えた周防は、外の人間と二言三言会話を交わしてから戻ってきた。
「予定にない来客なんだが、会わないわけにいかないようだ。申し訳ないが、少しの間そちらの部屋で待ってもらって構わないだろうか」
廊下の内装からほかの階より豪華なフロアに降り立ち、ふかふかの絨毯を踏んで周防の後をついてゆく。
玲は努めて冷静を装った。
周防グループの役員と二人きりで対面することへの緊張はあまり感じなかった。それなのに、心臓はドキドキしていた。
慣れない空間に身を置いているせいだと自分で自分を納得させる。
廊下の奥のドアの前に立ち、周防がカードキーをセンサーにかざす。ドアを開いて、玲を先に中に入れた。
広いホールがあり、その向こうにリビングルームがあった。十人以上が楽に座れそうなソファがコの字型に置かれている。中央に四角いテーブル。入り口の反対側は大きな窓で、右手の壁に薄型の大画面テレビが組み込まれていた。
左手には十人掛けのテーブルセットが置かれたダイニングが続いていた。そちらもかなり広い。短辺側の一人掛けを背にする形で大きな窓があり、もう一方の一人掛けの後ろは壁で、端にドアがあった。キッチンに続いていると周防が教えた。
ダイニングの壁面にも薄型テレビが組み込んである。
リビングの一角に書き物机があり、デスクトップのパソコンが二台載っていた。それ以外は仕事場らしい気配のない落ち着いた部屋だった。
「入り口は三か所だ。今入ってきたドアと奥のキッチンに一ヵ所、ベッドルーム側にも一ヵ所ある。非常口は部屋を出て右側に進んだ突き当り。いいかな」
玲は黙って頷いた。確かに、これだけ広い部屋ならばちょっとしたパーティーが開ける。ダイニングでは会議もできそうだ。
「好きなところに座って。食事は何が……」
周防の言葉が終わる前に、ドアがノックされた。
「失礼」
玲を残してホールの向こう側に消えた周防は、外の人間と二言三言会話を交わしてから戻ってきた。
「予定にない来客なんだが、会わないわけにいかないようだ。申し訳ないが、少しの間そちらの部屋で待ってもらって構わないだろうか」
11
お気に入りに追加
264
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。


鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる