18 / 190
【3】-3
しおりを挟む
頷きかけた玲は、造り付けの頑丈な金庫の前に立ち、水色の箱を見下ろした。アイスブルーのエナメルでできた四角い宝石箱だ。『サンドリヨンの微笑』を入れるはずの……。
(あれ……?)
違和感を覚える。
(ネックレス、しまったっけ?)
箱に入れた記憶がなかった。首に手をやるが、そこにネックレスはない。箱の蓋を開けてみる。
白いサテンの上には何もない。
「え……? え? あ、あれ……?」
もう一度自分の首を触ってみる。あちこち触ってみる。けれど、やはりネックレスはない。
顔が引きつってゆく。
身体中の血の気が一気に引く。
(ない……)
箱を見て、首の周囲を両手で何度も触る。
「ない……」
頭の中が真っ白になる。
「ない……、ない……。ない、ない、ないないないない……、ないっ!」
二百数十個の星の塊、都心のマンションまるっと一戸分のダイヤ『サンドリヨンの微笑』が、ないっ!
「う、嘘だ……。落ち着け! 落ち着くんだ……。きっと、先にどこかに外して……」
思い出せ。
自分に言い聞かせた。
「どこに、置いた?」
狭い事務所の中、探せる限りの場所を探した。ホテルのリニューアルに合わせてできた新支店には、まだたいした荷物は置いていない。四つしかない事務机の上もきれいだし、ロッカーの中はほとんど空だ。金庫の前のカウンターにも余分なものは置かれていない。
(あれ……?)
違和感を覚える。
(ネックレス、しまったっけ?)
箱に入れた記憶がなかった。首に手をやるが、そこにネックレスはない。箱の蓋を開けてみる。
白いサテンの上には何もない。
「え……? え? あ、あれ……?」
もう一度自分の首を触ってみる。あちこち触ってみる。けれど、やはりネックレスはない。
顔が引きつってゆく。
身体中の血の気が一気に引く。
(ない……)
箱を見て、首の周囲を両手で何度も触る。
「ない……」
頭の中が真っ白になる。
「ない……、ない……。ない、ない、ないないないない……、ないっ!」
二百数十個の星の塊、都心のマンションまるっと一戸分のダイヤ『サンドリヨンの微笑』が、ないっ!
「う、嘘だ……。落ち着け! 落ち着くんだ……。きっと、先にどこかに外して……」
思い出せ。
自分に言い聞かせた。
「どこに、置いた?」
狭い事務所の中、探せる限りの場所を探した。ホテルのリニューアルに合わせてできた新支店には、まだたいした荷物は置いていない。四つしかない事務机の上もきれいだし、ロッカーの中はほとんど空だ。金庫の前のカウンターにも余分なものは置かれていない。
11
お気に入りに追加
263
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる