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その国は、人道に異常な程こだわる国だった。国の利益など二の次で、ただ国民が幸せに住めればいいと。
時代は中世ヨーロッパだろう科学と魔法が蔓延る世界だった。その国の一角、私は貴族「ルリ」で生まれた。
生憎にも私は魔法の素質を持っていて、それが優れていた。私自身、どうでもいい。しかし家の者たちは大喜びして私を褒め称え、そんな景色が気色が悪い。こうも本気で、どうでもいい事柄を本気で褒められると鬱陶しいの何故だろうか。それは一歳頃の話だ。
四歳の頃、考え方が間違っていたと初めて自覚するようになった。どうも、私の上に兄が一人、姉が二人居るようだったが、いずれも魔法を使えず使うには杖を要した。もとより魔法に優れた「ルリ家」であったためか、そのような者は側近如く雑務に務めていた。一方で私は、多くの本を渡され学を積めと言われる。主に歴史、地理、数学の三点で、まるで領主である父の後を継がせるような雰囲気。
そして十一となった今、私は書庫で魔導書を読んでいる。錬金術に関する一見すると胡散臭い魔導書ではあるが、立派に禁術書で封印魔法がかけられていた。ホムンクルスや鉛を金に変える術が事細かく書かれたそれは、暇潰しに丁度良い。
それにしても、魔法にも系統があり得意苦手があるのだろうか。理由は分からないが、攻撃魔法や防御魔法が面白い程に上手くいかない。空気等を鉛に変える術や鉛をまた別の金属に変える術は無詠唱で唱えられるも、攻撃防御は正規法に呪文を正確に唱えても成功しない。ただ、この万物を鉛に変換する術と、その反対があれば正直、攻撃も防御も出来るだろうから別に問題視はしていない。そうだとしても、童心に帰った私の事だから、格好の良い攻撃魔法には憧れるものがある。
とりあえず、暇は潰れた。再び魔導書を封印しオヤツを食べに食堂に行こうと思う。この体になってから、オヤツが楽しみで堪らない。
この館は相変わらずの雰囲気で、中世洋風の寂れた館内に、慌ただしい足音。足音?
そんな中、駆け足に廊下を過ぎて行く召使を呼び止めた私は「何事?」と訊いた。
返答は、目を丸くした。
「父上が?」
呆れた。館外からの射殺。そう言っている。溜息案件だ。同時に非常によろしく無い状態である事も伺える。
金属が近寄る感覚。それは尋常じゃないく速い。
鉛、金、オリハルコン、壁。手を叩く。空中に空気から生成された靭性の高いオリハルコンは甲高い声を上げ少し震えた。
「父上を殺した武器はこれですか?」
ガラスの割れる音。掌ほどのオリハルコンの落ちる音。
と訊いたものの返答は無く、その場で崩れ落ちている。情けない。
「やっべ」
その視線の先にあったのは、銃弾が入り込んだにしてはあまりにも大き過ぎる割れ方をした窓ガラス。恥ずかしながら質量保存の法則を忘れたが為に空気圧で窓ガラスが割れてしまった。また怒れる。あいにく、まだガラスを作り出す術は知らない。
多分大丈夫だろう。そう思いたい。今度はもっとゆっくり作ろう。今この現状は無理だけど。
私は割れたガラス片を手に取り、二つの球状の鉄へ変えた。
「魔力探知」
術は使えるものの、常駐や手を叩く等の無詠唱発動はまだ難しい。
「見つけた」
鉛、金、オリハルコン、筒、蓋。手を叩く。
筒に鉄球を流し入れ、窓に空いた穴へ向かって銃口を向ける。
犯人は、中庭の木陰に隠れそのままでは弾は当たらない。ならば弾道を曲げればいい。そうでしょ?
思考計算。鉛、玉。舌打ち。
「術、空気化。発射」
二つ連なった球の内、後方だけを大気と同じ空気にする。質量保存があるから、瀑台な空気圧を得られる。つまり平たく言って物凄く強力な吹き矢ってこと。
それを空中で落ちてくる最中だった鉛玉をまた空気へ戻す。弾はその圧力を受けて挙動を変えるはずだと思う。
うん。見えない。当たったとは思う。何せテンヤワンヤしている館内で聞き耳など立てても意味ないから聞こえないし。まあいっか。
「とりあえず、父上を見に行くか」
時代は中世ヨーロッパだろう科学と魔法が蔓延る世界だった。その国の一角、私は貴族「ルリ」で生まれた。
生憎にも私は魔法の素質を持っていて、それが優れていた。私自身、どうでもいい。しかし家の者たちは大喜びして私を褒め称え、そんな景色が気色が悪い。こうも本気で、どうでもいい事柄を本気で褒められると鬱陶しいの何故だろうか。それは一歳頃の話だ。
四歳の頃、考え方が間違っていたと初めて自覚するようになった。どうも、私の上に兄が一人、姉が二人居るようだったが、いずれも魔法を使えず使うには杖を要した。もとより魔法に優れた「ルリ家」であったためか、そのような者は側近如く雑務に務めていた。一方で私は、多くの本を渡され学を積めと言われる。主に歴史、地理、数学の三点で、まるで領主である父の後を継がせるような雰囲気。
そして十一となった今、私は書庫で魔導書を読んでいる。錬金術に関する一見すると胡散臭い魔導書ではあるが、立派に禁術書で封印魔法がかけられていた。ホムンクルスや鉛を金に変える術が事細かく書かれたそれは、暇潰しに丁度良い。
それにしても、魔法にも系統があり得意苦手があるのだろうか。理由は分からないが、攻撃魔法や防御魔法が面白い程に上手くいかない。空気等を鉛に変える術や鉛をまた別の金属に変える術は無詠唱で唱えられるも、攻撃防御は正規法に呪文を正確に唱えても成功しない。ただ、この万物を鉛に変換する術と、その反対があれば正直、攻撃も防御も出来るだろうから別に問題視はしていない。そうだとしても、童心に帰った私の事だから、格好の良い攻撃魔法には憧れるものがある。
とりあえず、暇は潰れた。再び魔導書を封印しオヤツを食べに食堂に行こうと思う。この体になってから、オヤツが楽しみで堪らない。
この館は相変わらずの雰囲気で、中世洋風の寂れた館内に、慌ただしい足音。足音?
そんな中、駆け足に廊下を過ぎて行く召使を呼び止めた私は「何事?」と訊いた。
返答は、目を丸くした。
「父上が?」
呆れた。館外からの射殺。そう言っている。溜息案件だ。同時に非常によろしく無い状態である事も伺える。
金属が近寄る感覚。それは尋常じゃないく速い。
鉛、金、オリハルコン、壁。手を叩く。空中に空気から生成された靭性の高いオリハルコンは甲高い声を上げ少し震えた。
「父上を殺した武器はこれですか?」
ガラスの割れる音。掌ほどのオリハルコンの落ちる音。
と訊いたものの返答は無く、その場で崩れ落ちている。情けない。
「やっべ」
その視線の先にあったのは、銃弾が入り込んだにしてはあまりにも大き過ぎる割れ方をした窓ガラス。恥ずかしながら質量保存の法則を忘れたが為に空気圧で窓ガラスが割れてしまった。また怒れる。あいにく、まだガラスを作り出す術は知らない。
多分大丈夫だろう。そう思いたい。今度はもっとゆっくり作ろう。今この現状は無理だけど。
私は割れたガラス片を手に取り、二つの球状の鉄へ変えた。
「魔力探知」
術は使えるものの、常駐や手を叩く等の無詠唱発動はまだ難しい。
「見つけた」
鉛、金、オリハルコン、筒、蓋。手を叩く。
筒に鉄球を流し入れ、窓に空いた穴へ向かって銃口を向ける。
犯人は、中庭の木陰に隠れそのままでは弾は当たらない。ならば弾道を曲げればいい。そうでしょ?
思考計算。鉛、玉。舌打ち。
「術、空気化。発射」
二つ連なった球の内、後方だけを大気と同じ空気にする。質量保存があるから、瀑台な空気圧を得られる。つまり平たく言って物凄く強力な吹き矢ってこと。
それを空中で落ちてくる最中だった鉛玉をまた空気へ戻す。弾はその圧力を受けて挙動を変えるはずだと思う。
うん。見えない。当たったとは思う。何せテンヤワンヤしている館内で聞き耳など立てても意味ないから聞こえないし。まあいっか。
「とりあえず、父上を見に行くか」
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