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終わり。
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ただ、夜空に咲く火薬は轟音を散らし、無常と言い消えていった。私は思う、記憶は積もり積もる扇状の末、冷えて圧され固まる有象無象な石だと。人はそれを夢だとか、大切な物と称してたけれど、結局は砂岩やら礫岩の砕屑岩にカテゴライズされる。
「祭なんて楽しい?」
誰も居ない水面のそば、やむなく華やかな浴衣を着た私は、その背にいる甚平の男にポツリと問いた。
自己確立は建築に似て基礎石の上に豊かなたてものが出来上がる。そんな基礎石は、思い出により出来て、積もりに積もり最後には潰された石。
私は泥岩だ。
「泣いてるの?」
忘れたい思い出は体積が減って隅による。大きな思い出ほど体積が増え皆で積み重なる。
そう、私は泥岩。
「泣いてない」
きっと、目に入る景色が揺れ動くのは水面越しに見ているから。
蛙は知っているように嘲笑し水面で手を叩く。
蝉はかける言葉すら無いとその口を閉じ眠る。
雀は同乗する事すら面倒がり飛び去っていく。
アイツラを見ると怖くて涙が溢れてくる。でも君が、君が行こうと誘ってくれたお祭だから、行きたくて手を繋ぎたくて。
泥岩に染み込む涙は、内包物を崩し溶け出させ、人魚姫のように泡すら入った基礎石に無常と笑った。墓石のように石に刺さるアイスの棒は傾き、その全容を笑う自分と焦る自分。
触れたい。助けを求めたい。好きなのに。何を言われるか分からない。ただ君は、無邪気に笑い私を祓ってくれる。そんな明るさが好きで、でも自分が満たされ笑う像を想像できずにいて、幸せになってはいけない気がして、何もかも朽ちてすらいる負け犬根性を捨てられずにいて、それが私なんだって、でも満たされて笑いたいだけで。今だって悪い気がする。君は私より友達が多くて、それだったら、つまらない私とのお祭よりもきっと楽しくて。
「私は疲れたから帰るね」
君は何故か驚いた顔をして雫みたいに「そっか」と肩を落とした。
「家まで送って行くね」
なんで。なんで、私に優しくするの。私は君にとって大事な時間を汚す存在なのに。君は私なんかと居るよりも、トモダチと一緒に楽しんだほうがいいのに。
「大丈夫。一人で帰れる」
「だめ。絶対送っていく」
脅迫みたいな声。
私は君の後ろで歩き続けた。人混みの中、時に人の目が気になって。それでもお構い無しに君は進んでいく。待ってよ。と言いたいけど、言葉が出ない。
私がグシャグシャな顔を吊るし、歩く道、横なんて歩いてはいけない。ただ一緒に居たいけど許してくれない私は、その後ろに付いて行く事すら良くないと、私を怒鳴った。
足が止まる。
君を見失った。
やっぱり、私を嗤う為だったんだ。
「祭なんて楽しい?」
誰も居ない水面のそば、やむなく華やかな浴衣を着た私は、その背にいる甚平の男にポツリと問いた。
自己確立は建築に似て基礎石の上に豊かなたてものが出来上がる。そんな基礎石は、思い出により出来て、積もりに積もり最後には潰された石。
私は泥岩だ。
「泣いてるの?」
忘れたい思い出は体積が減って隅による。大きな思い出ほど体積が増え皆で積み重なる。
そう、私は泥岩。
「泣いてない」
きっと、目に入る景色が揺れ動くのは水面越しに見ているから。
蛙は知っているように嘲笑し水面で手を叩く。
蝉はかける言葉すら無いとその口を閉じ眠る。
雀は同乗する事すら面倒がり飛び去っていく。
アイツラを見ると怖くて涙が溢れてくる。でも君が、君が行こうと誘ってくれたお祭だから、行きたくて手を繋ぎたくて。
泥岩に染み込む涙は、内包物を崩し溶け出させ、人魚姫のように泡すら入った基礎石に無常と笑った。墓石のように石に刺さるアイスの棒は傾き、その全容を笑う自分と焦る自分。
触れたい。助けを求めたい。好きなのに。何を言われるか分からない。ただ君は、無邪気に笑い私を祓ってくれる。そんな明るさが好きで、でも自分が満たされ笑う像を想像できずにいて、幸せになってはいけない気がして、何もかも朽ちてすらいる負け犬根性を捨てられずにいて、それが私なんだって、でも満たされて笑いたいだけで。今だって悪い気がする。君は私より友達が多くて、それだったら、つまらない私とのお祭よりもきっと楽しくて。
「私は疲れたから帰るね」
君は何故か驚いた顔をして雫みたいに「そっか」と肩を落とした。
「家まで送って行くね」
なんで。なんで、私に優しくするの。私は君にとって大事な時間を汚す存在なのに。君は私なんかと居るよりも、トモダチと一緒に楽しんだほうがいいのに。
「大丈夫。一人で帰れる」
「だめ。絶対送っていく」
脅迫みたいな声。
私は君の後ろで歩き続けた。人混みの中、時に人の目が気になって。それでもお構い無しに君は進んでいく。待ってよ。と言いたいけど、言葉が出ない。
私がグシャグシャな顔を吊るし、歩く道、横なんて歩いてはいけない。ただ一緒に居たいけど許してくれない私は、その後ろに付いて行く事すら良くないと、私を怒鳴った。
足が止まる。
君を見失った。
やっぱり、私を嗤う為だったんだ。
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