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第13章 2度目の学園生活
70 アリアとロナのお願い
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「常闇の大迷宮の案内をしてほしい……ですか?」
「ええ。どちらかというと周辺の森が主軸ですけどね。可能であればダンジョンの中も少し見たいですがどうでしょうか?」
アリアとロナの依頼は、今日と明日の二日間で常闇の大迷宮周辺の森と可能であれば第1階層を案内して欲しいというものだった。
マリアから話を聞いている2人は、王立学園の演習でダンジョンに潜ったことを知っている。私の存在を含めたとしても適当な冒険者とパーティを組むよりは良いはずだ。
「私はマリアさえ良ければ」
「……私もティアが気にしないのなら行きたいです」
マリアは私に気を遣ってくれているようだが、心なしかアリアたちと依頼を受けることにワクワクしているようだった。
2人はマリアにとって育て親であると同時に師匠でもあるようだ。きっと今までは教わるだけしかできなかったことが力になれることが嬉しいのだろう。
マリアが嬉しそうにしているのは私にとっても嬉しいことだ。
それに、向こうが私のことを知らないとはいえアリアやロナと接することができるのは私も嬉しい。
「でも驚きました。あの森も常闇の大迷宮も王国が管理している地域のはず。普段は結界による封鎖を行っていたのでは?」
「結界は現在もありますよ。ただ北側の解放されていて許可証を持っている者であれば立ち入ることを許されているのです」
アリアの話によると、常闇の大迷宮は先日のダンジョン演習で色々と問題が発生したこともあり、現在はレイガード侯爵率いる調査団がベースキャンプの維持管理を務めているらしい。代わりにBランク以上の依頼を受けた冒険者パーティが下層への攻略を行っていて守りを固めている状態だそうだ。
さらには夏頃に国王直属部隊と精霊教会直属部隊による合同遠征を行う予定あるという。
そこで、精霊教会出身でAランク冒険者でもあるアリアとロナが先遣隊として調査と確認に来た、というのが話の顛末となるようだ。
「では半刻後にここで落ち合いましょうか。互いに準備もあるでしょうからね」
アリアとロナはそう言うと冒険者ギルドの建物を後にした。
「ありがとうね」
すると、隣にいるマリアは嬉しそうな顔でお礼を告げた。
「アリアさんの依頼を受けたこと?」
「それもそうだけど……アリア様のことを受け入れてくれているみたいだから」
「ん?精霊教って庶民にとっては信仰の対象でしょ?嫌いな人の方が少ないんじゃない?それにアリアさん固定なの?」
「司祭様みたいに役職付きでも触れ合う機会が多いと馴染みがあるのだけどね。教会騎士の団長ともなれば司教様と同格だから信徒からは敬いと恐れの対象になりやすいの。特に教会騎士は対魔物のスペシャリストでもあるから」
感覚的には一般の人たちが領主や騎士に向けているような感情に近いのだろう。特にアリアの場合は数年前に発生したスタンピードからたった一人で村を守りきった功績から英雄視されていることも影響しているらしい。
反対にロナの場合は治癒院長として周りの人たちの触れ合う機会が多く、たまに司祭として教会を訪れる人の悩みを聞いていて、親しみを覚えている人が多いそうだ。
「私は精霊教の信者じゃないし……そもそも恐れる必要がないもの。親しくしてくれる人には、同じだけ親しみを返すのが私だから」
それから、私とマリアは依頼のための準備を始めた。
数日分の食料やポーション類などを補充し武具などの手入れを終えて、ギルドの酒場で簡単な食事をして待つことにした。
少ししてアリアとロナがやってくると2人が手配した馬車で目的地の森まで移動する。移動する時間を使って
馬車の中で互いの立ち回りなどを含めた最後の打ち合わせをすることにした。
「ティアさん。貴方は精霊についてどれくらい知っていますか?」
「それなりには知っているかと。私も縁あって契約していますし」
「え!?初めて聞いたんだけど?」
「ごめんごめん。別に隠してたわけじゃないけど、話すきっかけがなかったから」
プレアデスと契約していることはローザリンデなど一部の人にしか話していない。けれど、絶対に隠したいわけということでもない。プレアデスの存在は切り札だが信頼できる相手なら問題ないだろう。
「契約といっても基本的には自由に過ごしてもらっているし、王立学園に入学してからは一緒にいないからね。気がつかなくても仕方ないよ」
「まさか精霊と契約している者が我々以外にもいるとは驚きました……ですが、話は早くて助かりますね。詳しくは話せませんが教会で一定の階位以上の人のほぼ全員が精霊と契約しています。なので、私やロナは精霊術が扱えます」
アリアとロナは精霊術も含めた得意とする立ち回りを教えてくれた。
元々、アリアは武具を使わずに素手で魔術を扱うタイプで、ロナも聖杖を用いて魔術を扱うタイプだ。どちらも支援や治癒を得意としていて単独での戦闘は得意としていなかった。
しかし、この10年くらいで2人の戦い方は大きく変化したらしい。
アリアは聖属性魔術が主体なことは変わらないが、聖霊教流剣術を修めていて聖剣を使った近接戦と攻撃系統の精霊術も合わせれば全距離に対応できるそうだ。
ロナも近接戦闘が苦手なのは変わらないが下級くらいであれば聖属性以外でも魔術を行使することができるとのこと。精霊術と合わせれば攻撃、防御、治癒、支援の全ての系統を扱うことが可能らしい。
2人のことを聞いた後は私の戦い方や扱える魔術について話していると、ゆっくりと馬車が止まった。
どうやら、目的地である森の入り口に着いたようだ。
「ええ。どちらかというと周辺の森が主軸ですけどね。可能であればダンジョンの中も少し見たいですがどうでしょうか?」
アリアとロナの依頼は、今日と明日の二日間で常闇の大迷宮周辺の森と可能であれば第1階層を案内して欲しいというものだった。
マリアから話を聞いている2人は、王立学園の演習でダンジョンに潜ったことを知っている。私の存在を含めたとしても適当な冒険者とパーティを組むよりは良いはずだ。
「私はマリアさえ良ければ」
「……私もティアが気にしないのなら行きたいです」
マリアは私に気を遣ってくれているようだが、心なしかアリアたちと依頼を受けることにワクワクしているようだった。
2人はマリアにとって育て親であると同時に師匠でもあるようだ。きっと今までは教わるだけしかできなかったことが力になれることが嬉しいのだろう。
マリアが嬉しそうにしているのは私にとっても嬉しいことだ。
それに、向こうが私のことを知らないとはいえアリアやロナと接することができるのは私も嬉しい。
「でも驚きました。あの森も常闇の大迷宮も王国が管理している地域のはず。普段は結界による封鎖を行っていたのでは?」
「結界は現在もありますよ。ただ北側の解放されていて許可証を持っている者であれば立ち入ることを許されているのです」
アリアの話によると、常闇の大迷宮は先日のダンジョン演習で色々と問題が発生したこともあり、現在はレイガード侯爵率いる調査団がベースキャンプの維持管理を務めているらしい。代わりにBランク以上の依頼を受けた冒険者パーティが下層への攻略を行っていて守りを固めている状態だそうだ。
さらには夏頃に国王直属部隊と精霊教会直属部隊による合同遠征を行う予定あるという。
そこで、精霊教会出身でAランク冒険者でもあるアリアとロナが先遣隊として調査と確認に来た、というのが話の顛末となるようだ。
「では半刻後にここで落ち合いましょうか。互いに準備もあるでしょうからね」
アリアとロナはそう言うと冒険者ギルドの建物を後にした。
「ありがとうね」
すると、隣にいるマリアは嬉しそうな顔でお礼を告げた。
「アリアさんの依頼を受けたこと?」
「それもそうだけど……アリア様のことを受け入れてくれているみたいだから」
「ん?精霊教って庶民にとっては信仰の対象でしょ?嫌いな人の方が少ないんじゃない?それにアリアさん固定なの?」
「司祭様みたいに役職付きでも触れ合う機会が多いと馴染みがあるのだけどね。教会騎士の団長ともなれば司教様と同格だから信徒からは敬いと恐れの対象になりやすいの。特に教会騎士は対魔物のスペシャリストでもあるから」
感覚的には一般の人たちが領主や騎士に向けているような感情に近いのだろう。特にアリアの場合は数年前に発生したスタンピードからたった一人で村を守りきった功績から英雄視されていることも影響しているらしい。
反対にロナの場合は治癒院長として周りの人たちの触れ合う機会が多く、たまに司祭として教会を訪れる人の悩みを聞いていて、親しみを覚えている人が多いそうだ。
「私は精霊教の信者じゃないし……そもそも恐れる必要がないもの。親しくしてくれる人には、同じだけ親しみを返すのが私だから」
それから、私とマリアは依頼のための準備を始めた。
数日分の食料やポーション類などを補充し武具などの手入れを終えて、ギルドの酒場で簡単な食事をして待つことにした。
少ししてアリアとロナがやってくると2人が手配した馬車で目的地の森まで移動する。移動する時間を使って
馬車の中で互いの立ち回りなどを含めた最後の打ち合わせをすることにした。
「ティアさん。貴方は精霊についてどれくらい知っていますか?」
「それなりには知っているかと。私も縁あって契約していますし」
「え!?初めて聞いたんだけど?」
「ごめんごめん。別に隠してたわけじゃないけど、話すきっかけがなかったから」
プレアデスと契約していることはローザリンデなど一部の人にしか話していない。けれど、絶対に隠したいわけということでもない。プレアデスの存在は切り札だが信頼できる相手なら問題ないだろう。
「契約といっても基本的には自由に過ごしてもらっているし、王立学園に入学してからは一緒にいないからね。気がつかなくても仕方ないよ」
「まさか精霊と契約している者が我々以外にもいるとは驚きました……ですが、話は早くて助かりますね。詳しくは話せませんが教会で一定の階位以上の人のほぼ全員が精霊と契約しています。なので、私やロナは精霊術が扱えます」
アリアとロナは精霊術も含めた得意とする立ち回りを教えてくれた。
元々、アリアは武具を使わずに素手で魔術を扱うタイプで、ロナも聖杖を用いて魔術を扱うタイプだ。どちらも支援や治癒を得意としていて単独での戦闘は得意としていなかった。
しかし、この10年くらいで2人の戦い方は大きく変化したらしい。
アリアは聖属性魔術が主体なことは変わらないが、聖霊教流剣術を修めていて聖剣を使った近接戦と攻撃系統の精霊術も合わせれば全距離に対応できるそうだ。
ロナも近接戦闘が苦手なのは変わらないが下級くらいであれば聖属性以外でも魔術を行使することができるとのこと。精霊術と合わせれば攻撃、防御、治癒、支援の全ての系統を扱うことが可能らしい。
2人のことを聞いた後は私の戦い方や扱える魔術について話していると、ゆっくりと馬車が止まった。
どうやら、目的地である森の入り口に着いたようだ。
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