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第13章 2度目の学園生活
63 ティアへの想い
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食事会を終えてティアを平民用の寮に送り届けた後。
コルネリアスとアスカルテは高位貴族向けのそれぞれの寮へ戻ろうとしていた。寮と寮を繋ぐ道を引き返しながら周りに人がいないことを確認し、隣にいる人がギリギリ聞き取れるくらいの声で「今日はありがとう。助かった」とお礼を告げる。
「いえいえ。わたくしも楽しかったので構いませんよ」
元々、今回の食事会はコルネリアスがティアのことを誘おうとしていたのが始まりだ。
流石に今の状況でコルネリアスとティアが2人きりで出掛けるのは色々と問題があるためアスカルテにも付いてきてもらっていた。ティアの様子を探ってもらいたかったのも理由としては大きくアスカルテには事前にお願いをしていた。
「感謝しているのは今日のことだけじゃない。王立学園での根回しについてもだ」
「わたくしが仲良くしている友人たちにそれとなくお願いしただけですから……思いのほか抑えが効いていますが、いつまで効果があるかは分かりませんよ」
コルネリアスが今以上にティアとの仲を深めようとすれば王立学園に通う貴族令嬢からの当たりが強くなる可能性が高い。
だからこそ公爵家の中でも特に影響力が強いアスカルテから他の令嬢たちに手を回してもらっていた。
王太子と公爵令嬢を敵に回してまで嫌がらせをする人はいないからだ。
「最低でもティアが答えをくれるまで持てばいい……正式に関係を進めることができれば表立って守ることができるからな」
もしもティアがコルネリアスの告白を断るの出れば今まで通りの関係に戻るだけだ。王太子妃を狙っている令嬢から何かされることはなくなるだろう。
反対に告白を受け入れてくれるのであれば正式に婚約者になれる。そうすれば一緒に過ごす時間も増やすことができるし婚約者を守るという大義名分が立つ。
「ティアは私のことを受け入れてくれると思うか?」
コルネリアスは少しだけ自信がない声を出すがアスカルテは大きくため息を吐くと呆れた表情を向けてきた。
「それをわたくしに聞きますか?」
「いや、その……な?仲の良い同姓の友人なら何か分かるのではないかと……」
コルネリアスもティアから好意を向けられていることは分かっている。ただそれが友愛なのか恋愛なのか判断することができない。
せめてアスカルテなら何か分からないかと期待を込めて視線を向けると呆れた表情に変わりはなかった。
「わたくしも直接は聞いてないのでなんとも。ただティアのことですから、きちんとした答えはくれるでしょう」
アスカルテはティアのことを傍で見ていて、何となく彼女の気持ちを察しているつもりだ。ティアはコルネリアスと一緒にいてとても楽しそうにしている。一見友情のように見えるがコルネリアスの熱い視線に照れて恥ずかしさを覚えているところを見るに恋情も少なからずあるのだろう。
何より相手が誰であっても、むしろ親しい相手であればこそはっきりとした答えを返すティアのことだ。コルネリアスの告白に嫌だとは言わない時点で間違いはないはずだ。
「夏の長期休暇までには答えを貰えると嬉しいものだな……」
「国王陛下への報告ですか?」
「ああ。私がティアのことを好いているのは影からの報告で聞き及んでいるはずだ。改めて父上には話すが……間違いなく反対されるだろうな」
「それはそうでしょうね。貴族たちからの圧力が高まっているなかで、ギリギリのところで均衡が取れているのはコルネリアスが優秀でリーベルが兄を立てているからです。コルネリアスとティアが婚約し、わたくしとリーベルが婚約した場合、貴族たちはリーベルを次期国王に推す可能性が高い」
いくら国王であるリーファスが第一王子のコルネリアスを次期国王に任命していても、有力貴族たちが第二王子のリーベルの味方をした場合は第一王子派を排除しようと動く可能性が高い。
「私の決断が混乱を呼ぶということは分かっている。だが……それでも隣に居て欲しいと思えたのはティアだけだ。だからどう転んでも良いように準備だけはしておくさ」
どちらにせよコルネリアスの心は既に決まっている。あとはティアがどのような答えを出すかに次第だが、告白を受け入れてくれたとしても断られたとしてもティアに敵意が向けられないように上手く立ち回るつもりだった。
「もしコルネリアスがティアと婚約することになれば貴族たちからの反発は必至です。グラディウス公爵家は大丈夫だとして、残りの公爵家の力も必要になりそうですね」
「ああ。父上が認めてくれればノーティア公爵家は味方になってくれるはずだ。あとはスエンティア公爵家とマギルス公爵家だろうな」
スエンティア公爵家は代々の宰相を輩出した貴族なだけあり感情よりも理を大切にしている。直接的な国政への影響力が強いことも含めて味方にできれば心強いが、敵に回られてしまうと大勢の貴族たちとも敵対することになってしまうだろう。
そしてマギルス公爵家は直接的な影響力は少ないものの領主としての力が王国の中でも随一だ。広大な辺境の領地を守護し栄えさせていて、経済や軍事、農業や工業などの産業など幅広い影響力がある。
彼らの支持をなくして王太子としてティアの隣にいることはできない。
「もちろんわたくしもできる限りの協力は惜しまないですけど……ティアのことは親友とも思っているのですから泣かせるようなことはしないでくださいよ」
「……わかっているとも」
アスカルテの言葉にコルネリアスは重々しい表情で深く頷いた。
コルネリアスとアスカルテは高位貴族向けのそれぞれの寮へ戻ろうとしていた。寮と寮を繋ぐ道を引き返しながら周りに人がいないことを確認し、隣にいる人がギリギリ聞き取れるくらいの声で「今日はありがとう。助かった」とお礼を告げる。
「いえいえ。わたくしも楽しかったので構いませんよ」
元々、今回の食事会はコルネリアスがティアのことを誘おうとしていたのが始まりだ。
流石に今の状況でコルネリアスとティアが2人きりで出掛けるのは色々と問題があるためアスカルテにも付いてきてもらっていた。ティアの様子を探ってもらいたかったのも理由としては大きくアスカルテには事前にお願いをしていた。
「感謝しているのは今日のことだけじゃない。王立学園での根回しについてもだ」
「わたくしが仲良くしている友人たちにそれとなくお願いしただけですから……思いのほか抑えが効いていますが、いつまで効果があるかは分かりませんよ」
コルネリアスが今以上にティアとの仲を深めようとすれば王立学園に通う貴族令嬢からの当たりが強くなる可能性が高い。
だからこそ公爵家の中でも特に影響力が強いアスカルテから他の令嬢たちに手を回してもらっていた。
王太子と公爵令嬢を敵に回してまで嫌がらせをする人はいないからだ。
「最低でもティアが答えをくれるまで持てばいい……正式に関係を進めることができれば表立って守ることができるからな」
もしもティアがコルネリアスの告白を断るの出れば今まで通りの関係に戻るだけだ。王太子妃を狙っている令嬢から何かされることはなくなるだろう。
反対に告白を受け入れてくれるのであれば正式に婚約者になれる。そうすれば一緒に過ごす時間も増やすことができるし婚約者を守るという大義名分が立つ。
「ティアは私のことを受け入れてくれると思うか?」
コルネリアスは少しだけ自信がない声を出すがアスカルテは大きくため息を吐くと呆れた表情を向けてきた。
「それをわたくしに聞きますか?」
「いや、その……な?仲の良い同姓の友人なら何か分かるのではないかと……」
コルネリアスもティアから好意を向けられていることは分かっている。ただそれが友愛なのか恋愛なのか判断することができない。
せめてアスカルテなら何か分からないかと期待を込めて視線を向けると呆れた表情に変わりはなかった。
「わたくしも直接は聞いてないのでなんとも。ただティアのことですから、きちんとした答えはくれるでしょう」
アスカルテはティアのことを傍で見ていて、何となく彼女の気持ちを察しているつもりだ。ティアはコルネリアスと一緒にいてとても楽しそうにしている。一見友情のように見えるがコルネリアスの熱い視線に照れて恥ずかしさを覚えているところを見るに恋情も少なからずあるのだろう。
何より相手が誰であっても、むしろ親しい相手であればこそはっきりとした答えを返すティアのことだ。コルネリアスの告白に嫌だとは言わない時点で間違いはないはずだ。
「夏の長期休暇までには答えを貰えると嬉しいものだな……」
「国王陛下への報告ですか?」
「ああ。私がティアのことを好いているのは影からの報告で聞き及んでいるはずだ。改めて父上には話すが……間違いなく反対されるだろうな」
「それはそうでしょうね。貴族たちからの圧力が高まっているなかで、ギリギリのところで均衡が取れているのはコルネリアスが優秀でリーベルが兄を立てているからです。コルネリアスとティアが婚約し、わたくしとリーベルが婚約した場合、貴族たちはリーベルを次期国王に推す可能性が高い」
いくら国王であるリーファスが第一王子のコルネリアスを次期国王に任命していても、有力貴族たちが第二王子のリーベルの味方をした場合は第一王子派を排除しようと動く可能性が高い。
「私の決断が混乱を呼ぶということは分かっている。だが……それでも隣に居て欲しいと思えたのはティアだけだ。だからどう転んでも良いように準備だけはしておくさ」
どちらにせよコルネリアスの心は既に決まっている。あとはティアがどのような答えを出すかに次第だが、告白を受け入れてくれたとしても断られたとしてもティアに敵意が向けられないように上手く立ち回るつもりだった。
「もしコルネリアスがティアと婚約することになれば貴族たちからの反発は必至です。グラディウス公爵家は大丈夫だとして、残りの公爵家の力も必要になりそうですね」
「ああ。父上が認めてくれればノーティア公爵家は味方になってくれるはずだ。あとはスエンティア公爵家とマギルス公爵家だろうな」
スエンティア公爵家は代々の宰相を輩出した貴族なだけあり感情よりも理を大切にしている。直接的な国政への影響力が強いことも含めて味方にできれば心強いが、敵に回られてしまうと大勢の貴族たちとも敵対することになってしまうだろう。
そしてマギルス公爵家は直接的な影響力は少ないものの領主としての力が王国の中でも随一だ。広大な辺境の領地を守護し栄えさせていて、経済や軍事、農業や工業などの産業など幅広い影響力がある。
彼らの支持をなくして王太子としてティアの隣にいることはできない。
「もちろんわたくしもできる限りの協力は惜しまないですけど……ティアのことは親友とも思っているのですから泣かせるようなことはしないでくださいよ」
「……わかっているとも」
アスカルテの言葉にコルネリアスは重々しい表情で深く頷いた。
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