453 / 460
第13章 2度目の学園生活
63 ティアへの想い
しおりを挟む
食事会を終えてティアを平民用の寮に送り届けた後。
コルネリアスとアスカルテは高位貴族向けのそれぞれの寮へ戻ろうとしていた。寮と寮を繋ぐ道を引き返しながら周りに人がいないことを確認し、隣にいる人がギリギリ聞き取れるくらいの声で「今日はありがとう。助かった」とお礼を告げる。
「いえいえ。わたくしも楽しかったので構いませんよ」
元々、今回の食事会はコルネリアスがティアのことを誘おうとしていたのが始まりだ。
流石に今の状況でコルネリアスとティアが2人きりで出掛けるのは色々と問題があるためアスカルテにも付いてきてもらっていた。ティアの様子を探ってもらいたかったのも理由としては大きくアスカルテには事前にお願いをしていた。
「感謝しているのは今日のことだけじゃない。王立学園での根回しについてもだ」
「わたくしが仲良くしている友人たちにそれとなくお願いしただけですから……思いのほか抑えが効いていますが、いつまで効果があるかは分かりませんよ」
コルネリアスが今以上にティアとの仲を深めようとすれば王立学園に通う貴族令嬢からの当たりが強くなる可能性が高い。
だからこそ公爵家の中でも特に影響力が強いアスカルテから他の令嬢たちに手を回してもらっていた。
王太子と公爵令嬢を敵に回してまで嫌がらせをする人はいないからだ。
「最低でもティアが答えをくれるまで持てばいい……正式に関係を進めることができれば表立って守ることができるからな」
もしもティアがコルネリアスの告白を断るの出れば今まで通りの関係に戻るだけだ。王太子妃を狙っている令嬢から何かされることはなくなるだろう。
反対に告白を受け入れてくれるのであれば正式に婚約者になれる。そうすれば一緒に過ごす時間も増やすことができるし婚約者を守るという大義名分が立つ。
「ティアは私のことを受け入れてくれると思うか?」
コルネリアスは少しだけ自信がない声を出すがアスカルテは大きくため息を吐くと呆れた表情を向けてきた。
「それをわたくしに聞きますか?」
「いや、その……な?仲の良い同姓の友人なら何か分かるのではないかと……」
コルネリアスもティアから好意を向けられていることは分かっている。ただそれが友愛なのか恋愛なのか判断することができない。
せめてアスカルテなら何か分からないかと期待を込めて視線を向けると呆れた表情に変わりはなかった。
「わたくしも直接は聞いてないのでなんとも。ただティアのことですから、きちんとした答えはくれるでしょう」
アスカルテはティアのことを傍で見ていて、何となく彼女の気持ちを察しているつもりだ。ティアはコルネリアスと一緒にいてとても楽しそうにしている。一見友情のように見えるがコルネリアスの熱い視線に照れて恥ずかしさを覚えているところを見るに恋情も少なからずあるのだろう。
何より相手が誰であっても、むしろ親しい相手であればこそはっきりとした答えを返すティアのことだ。コルネリアスの告白に嫌だとは言わない時点で間違いはないはずだ。
「夏の長期休暇までには答えを貰えると嬉しいものだな……」
「国王陛下への報告ですか?」
「ああ。私がティアのことを好いているのは影からの報告で聞き及んでいるはずだ。改めて父上には話すが……間違いなく反対されるだろうな」
「それはそうでしょうね。貴族たちからの圧力が高まっているなかで、ギリギリのところで均衡が取れているのはコルネリアスが優秀でリーベルが兄を立てているからです。コルネリアスとティアが婚約し、わたくしとリーベルが婚約した場合、貴族たちはリーベルを次期国王に推す可能性が高い」
いくら国王であるリーファスが第一王子のコルネリアスを次期国王に任命していても、有力貴族たちが第二王子のリーベルの味方をした場合は第一王子派を排除しようと動く可能性が高い。
「私の決断が混乱を呼ぶということは分かっている。だが……それでも隣に居て欲しいと思えたのはティアだけだ。だからどう転んでも良いように準備だけはしておくさ」
どちらにせよコルネリアスの心は既に決まっている。あとはティアがどのような答えを出すかに次第だが、告白を受け入れてくれたとしても断られたとしてもティアに敵意が向けられないように上手く立ち回るつもりだった。
「もしコルネリアスがティアと婚約することになれば貴族たちからの反発は必至です。グラディウス公爵家は大丈夫だとして、残りの公爵家の力も必要になりそうですね」
「ああ。父上が認めてくれればノーティア公爵家は味方になってくれるはずだ。あとはスエンティア公爵家とマギルス公爵家だろうな」
スエンティア公爵家は代々の宰相を輩出した貴族なだけあり感情よりも理を大切にしている。直接的な国政への影響力が強いことも含めて味方にできれば心強いが、敵に回られてしまうと大勢の貴族たちとも敵対することになってしまうだろう。
そしてマギルス公爵家は直接的な影響力は少ないものの領主としての力が王国の中でも随一だ。広大な辺境の領地を守護し栄えさせていて、経済や軍事、農業や工業などの産業など幅広い影響力がある。
彼らの支持をなくして王太子としてティアの隣にいることはできない。
「もちろんわたくしもできる限りの協力は惜しまないですけど……ティアのことは親友とも思っているのですから泣かせるようなことはしないでくださいよ」
「……わかっているとも」
アスカルテの言葉にコルネリアスは重々しい表情で深く頷いた。
コルネリアスとアスカルテは高位貴族向けのそれぞれの寮へ戻ろうとしていた。寮と寮を繋ぐ道を引き返しながら周りに人がいないことを確認し、隣にいる人がギリギリ聞き取れるくらいの声で「今日はありがとう。助かった」とお礼を告げる。
「いえいえ。わたくしも楽しかったので構いませんよ」
元々、今回の食事会はコルネリアスがティアのことを誘おうとしていたのが始まりだ。
流石に今の状況でコルネリアスとティアが2人きりで出掛けるのは色々と問題があるためアスカルテにも付いてきてもらっていた。ティアの様子を探ってもらいたかったのも理由としては大きくアスカルテには事前にお願いをしていた。
「感謝しているのは今日のことだけじゃない。王立学園での根回しについてもだ」
「わたくしが仲良くしている友人たちにそれとなくお願いしただけですから……思いのほか抑えが効いていますが、いつまで効果があるかは分かりませんよ」
コルネリアスが今以上にティアとの仲を深めようとすれば王立学園に通う貴族令嬢からの当たりが強くなる可能性が高い。
だからこそ公爵家の中でも特に影響力が強いアスカルテから他の令嬢たちに手を回してもらっていた。
王太子と公爵令嬢を敵に回してまで嫌がらせをする人はいないからだ。
「最低でもティアが答えをくれるまで持てばいい……正式に関係を進めることができれば表立って守ることができるからな」
もしもティアがコルネリアスの告白を断るの出れば今まで通りの関係に戻るだけだ。王太子妃を狙っている令嬢から何かされることはなくなるだろう。
反対に告白を受け入れてくれるのであれば正式に婚約者になれる。そうすれば一緒に過ごす時間も増やすことができるし婚約者を守るという大義名分が立つ。
「ティアは私のことを受け入れてくれると思うか?」
コルネリアスは少しだけ自信がない声を出すがアスカルテは大きくため息を吐くと呆れた表情を向けてきた。
「それをわたくしに聞きますか?」
「いや、その……な?仲の良い同姓の友人なら何か分かるのではないかと……」
コルネリアスもティアから好意を向けられていることは分かっている。ただそれが友愛なのか恋愛なのか判断することができない。
せめてアスカルテなら何か分からないかと期待を込めて視線を向けると呆れた表情に変わりはなかった。
「わたくしも直接は聞いてないのでなんとも。ただティアのことですから、きちんとした答えはくれるでしょう」
アスカルテはティアのことを傍で見ていて、何となく彼女の気持ちを察しているつもりだ。ティアはコルネリアスと一緒にいてとても楽しそうにしている。一見友情のように見えるがコルネリアスの熱い視線に照れて恥ずかしさを覚えているところを見るに恋情も少なからずあるのだろう。
何より相手が誰であっても、むしろ親しい相手であればこそはっきりとした答えを返すティアのことだ。コルネリアスの告白に嫌だとは言わない時点で間違いはないはずだ。
「夏の長期休暇までには答えを貰えると嬉しいものだな……」
「国王陛下への報告ですか?」
「ああ。私がティアのことを好いているのは影からの報告で聞き及んでいるはずだ。改めて父上には話すが……間違いなく反対されるだろうな」
「それはそうでしょうね。貴族たちからの圧力が高まっているなかで、ギリギリのところで均衡が取れているのはコルネリアスが優秀でリーベルが兄を立てているからです。コルネリアスとティアが婚約し、わたくしとリーベルが婚約した場合、貴族たちはリーベルを次期国王に推す可能性が高い」
いくら国王であるリーファスが第一王子のコルネリアスを次期国王に任命していても、有力貴族たちが第二王子のリーベルの味方をした場合は第一王子派を排除しようと動く可能性が高い。
「私の決断が混乱を呼ぶということは分かっている。だが……それでも隣に居て欲しいと思えたのはティアだけだ。だからどう転んでも良いように準備だけはしておくさ」
どちらにせよコルネリアスの心は既に決まっている。あとはティアがどのような答えを出すかに次第だが、告白を受け入れてくれたとしても断られたとしてもティアに敵意が向けられないように上手く立ち回るつもりだった。
「もしコルネリアスがティアと婚約することになれば貴族たちからの反発は必至です。グラディウス公爵家は大丈夫だとして、残りの公爵家の力も必要になりそうですね」
「ああ。父上が認めてくれればノーティア公爵家は味方になってくれるはずだ。あとはスエンティア公爵家とマギルス公爵家だろうな」
スエンティア公爵家は代々の宰相を輩出した貴族なだけあり感情よりも理を大切にしている。直接的な国政への影響力が強いことも含めて味方にできれば心強いが、敵に回られてしまうと大勢の貴族たちとも敵対することになってしまうだろう。
そしてマギルス公爵家は直接的な影響力は少ないものの領主としての力が王国の中でも随一だ。広大な辺境の領地を守護し栄えさせていて、経済や軍事、農業や工業などの産業など幅広い影響力がある。
彼らの支持をなくして王太子としてティアの隣にいることはできない。
「もちろんわたくしもできる限りの協力は惜しまないですけど……ティアのことは親友とも思っているのですから泣かせるようなことはしないでくださいよ」
「……わかっているとも」
アスカルテの言葉にコルネリアスは重々しい表情で深く頷いた。
10
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
捨てられた転生幼女は無自重無双する
紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。
アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。
ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。
アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。
去ろうとしている人物は父と母だった。
ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。
朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。
クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。
しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。
アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。
王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。
アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。
※諸事情によりしばらく連載休止致します。
※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる