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第13章 2度目の学園生活
9 ダンジョン
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「まずダンジョンについて知らない人はいますか?」
元々ダンジョンという言葉自体は存在しているが遺跡のような物を指していた。学園都市近郊の森には遺跡のようなものは発見されてなく、あったとしても小さな洞窟くらいだったはずだ。
カトレアの言うダンジョンが私の知る物と同じか分からないため素直に手を挙げる。周りに視線を向けると、どうやら他の人は皆知っているようだった。
「ティアさんが知らないのは無理もないことなので気にしなくて構いませんよ。これから話す内容については秘密にしているわけではありませんが関係のある貴族や教会に所属する一部の人にしか伝わっていないでしょうし」
Aクラスには貴族以外の人が私を含めて3人いる。ロレアルは教会上層部の子息だしマリアも教会が聖女候補と認めている人間だ。何かしらの話を聞いていてもおかしくはないだろう。
「ダンジョンというのは遺跡や洞窟のような場所のうち魔力濃度が高く魔物などが独自の体系を持っているものを指します。例えば演習で向かうことになる常闇の大迷宮は、元々あった洞窟の一部が崩落したことにより発見された地下の古代遺跡になります。王国軍や騎士団が中心となり教会の協力を元に調査を続けているところですね」
カトレアの説明では常闇の大迷宮は相当深くまで続いているらしく全容の解明までは行えていないらしい。現在判明していることと言えば、発見済みの最深部が大きく分けて地下10階層に位置すること。それから魔力濃度が濃いせいなのか魔物の強さが一段階以上強いということだそうだ。
「ダンジョンの調査はエスペルト王国内でも優先している内容の一つです。王立学園を卒業した後に騎士や文官を選択する人であれば何かしらの関りを持つことでしょう。もし領地に帰ったり戦闘を行わなかったりしたとしても、いつどこで危険に巻き込まれるか分かりません。そのような事情を踏まえ、皆さんには出来る限り安全に配慮した状態でダンジョンでの3日間における演習を行ってもらいます」
エスペルト王国には王国全体を覆うような結界がいくつもあって魔物の侵入を防いでいる。その効果もあって国外に比べれば魔力濃度が薄く魔物の強さも比較的弱い状態だ。それでも10年近く前に比べれば魔物の強さは何段階も上がっていた。
学生のうちにダンジョンに慣れてもらいたい思いも当然あるだろうが急激に強化された魔物に対応してもらう狙いもありそうだ。
「本格的に授業が始まるのは明日からとなります。座学などに関しては先ほど説明した通りの予定で進めることになるでしょう。そして実技に関しては当面の間は学園内での基礎を学びつつ対人戦の中心に、慣れてきたのちに森での対魔物戦を学んでもらいます」
ちょうど説明が終わった時、鐘の音が鳴り響いた。これは王立学園に設置されていて時計とも繋がっている鐘だ。
「ちょうど時間のようなので本日の授業はここまでとします。お疲れ様でした」
カトレアが最後に挨拶をして王立学園の入学初日の授業は終わりとなる。カトレアが扉から去っていくと教室の中は少し騒がしくなった。
「アスカルテ様。聖女様と認定されている貴方様と一緒に過ごすことができ、とても嬉しく思います」
最初に動いたのはマリアだった。マリアはアスカルテの席まで向かうと、ゆっくりと頭を下げて挨拶し瞳をきらきらとさせる。まるで、長年追い求めた憧れの相手と漸く会えたかのような目だ。
「おい!貴様!平民風情が公爵令嬢であるアスカルテ様に話しかけるなど失礼だぞ!?」
それを見ていたデニードは激昂したような面持ちでマリアに向かって言い放った。教室の中は一触即発の空気に包まれるがそれを制したのはコルネリアスだった。
「デニードよせ……マリアとは学友になる。公式の場でなければ構わない」
「コルネリアス殿下……」
「わたくしもクラスメイトとは親交を深めたいですから。デニード様のお気持ちはありがたいですが大丈夫ですよ」
「かしこまりました……すまなかったな」
コルネリアスに続いてアスカルテもマリアを庇ったことでデニードは謝罪をして教室から去っていった。けれどマリアとすれ違った時、一瞬だけデニードの瞳に殺気がこもっていた。どうやら本心では納得していないようだ。
「コ、コルネリアス様……先ほどは助けていただきありがとうございました!」
「なに、クラスメイトとの仲がいいことに越したことはない。それに先ほども言ったが学園内なら無礼講でも構わないだろう」
「わたくしも色々な人たちと話したいので話しかけられるのは嬉しいですし。ですが様々な考えをもつ人がいるので、そのあたりは難しいところですね」
貴族社会としては身分が下の者から上の者に対して話しかけるのはマナー違反となる。これらは貴族にとっては常識ではあるが馴染みのないマリアからすれば知らなくて当然だろう。
けれど、そのようなルールを王立学園に適用してしまえば授業がままならなくなってしまう。だからこそ学園内においては身分に関係なく平等に扱う規則があるわけだ。
デニードを含め平民を下に見る貴族はそこそこいる。なかなか大変な学園生活になりそうだ。
元々ダンジョンという言葉自体は存在しているが遺跡のような物を指していた。学園都市近郊の森には遺跡のようなものは発見されてなく、あったとしても小さな洞窟くらいだったはずだ。
カトレアの言うダンジョンが私の知る物と同じか分からないため素直に手を挙げる。周りに視線を向けると、どうやら他の人は皆知っているようだった。
「ティアさんが知らないのは無理もないことなので気にしなくて構いませんよ。これから話す内容については秘密にしているわけではありませんが関係のある貴族や教会に所属する一部の人にしか伝わっていないでしょうし」
Aクラスには貴族以外の人が私を含めて3人いる。ロレアルは教会上層部の子息だしマリアも教会が聖女候補と認めている人間だ。何かしらの話を聞いていてもおかしくはないだろう。
「ダンジョンというのは遺跡や洞窟のような場所のうち魔力濃度が高く魔物などが独自の体系を持っているものを指します。例えば演習で向かうことになる常闇の大迷宮は、元々あった洞窟の一部が崩落したことにより発見された地下の古代遺跡になります。王国軍や騎士団が中心となり教会の協力を元に調査を続けているところですね」
カトレアの説明では常闇の大迷宮は相当深くまで続いているらしく全容の解明までは行えていないらしい。現在判明していることと言えば、発見済みの最深部が大きく分けて地下10階層に位置すること。それから魔力濃度が濃いせいなのか魔物の強さが一段階以上強いということだそうだ。
「ダンジョンの調査はエスペルト王国内でも優先している内容の一つです。王立学園を卒業した後に騎士や文官を選択する人であれば何かしらの関りを持つことでしょう。もし領地に帰ったり戦闘を行わなかったりしたとしても、いつどこで危険に巻き込まれるか分かりません。そのような事情を踏まえ、皆さんには出来る限り安全に配慮した状態でダンジョンでの3日間における演習を行ってもらいます」
エスペルト王国には王国全体を覆うような結界がいくつもあって魔物の侵入を防いでいる。その効果もあって国外に比べれば魔力濃度が薄く魔物の強さも比較的弱い状態だ。それでも10年近く前に比べれば魔物の強さは何段階も上がっていた。
学生のうちにダンジョンに慣れてもらいたい思いも当然あるだろうが急激に強化された魔物に対応してもらう狙いもありそうだ。
「本格的に授業が始まるのは明日からとなります。座学などに関しては先ほど説明した通りの予定で進めることになるでしょう。そして実技に関しては当面の間は学園内での基礎を学びつつ対人戦の中心に、慣れてきたのちに森での対魔物戦を学んでもらいます」
ちょうど説明が終わった時、鐘の音が鳴り響いた。これは王立学園に設置されていて時計とも繋がっている鐘だ。
「ちょうど時間のようなので本日の授業はここまでとします。お疲れ様でした」
カトレアが最後に挨拶をして王立学園の入学初日の授業は終わりとなる。カトレアが扉から去っていくと教室の中は少し騒がしくなった。
「アスカルテ様。聖女様と認定されている貴方様と一緒に過ごすことができ、とても嬉しく思います」
最初に動いたのはマリアだった。マリアはアスカルテの席まで向かうと、ゆっくりと頭を下げて挨拶し瞳をきらきらとさせる。まるで、長年追い求めた憧れの相手と漸く会えたかのような目だ。
「おい!貴様!平民風情が公爵令嬢であるアスカルテ様に話しかけるなど失礼だぞ!?」
それを見ていたデニードは激昂したような面持ちでマリアに向かって言い放った。教室の中は一触即発の空気に包まれるがそれを制したのはコルネリアスだった。
「デニードよせ……マリアとは学友になる。公式の場でなければ構わない」
「コルネリアス殿下……」
「わたくしもクラスメイトとは親交を深めたいですから。デニード様のお気持ちはありがたいですが大丈夫ですよ」
「かしこまりました……すまなかったな」
コルネリアスに続いてアスカルテもマリアを庇ったことでデニードは謝罪をして教室から去っていった。けれどマリアとすれ違った時、一瞬だけデニードの瞳に殺気がこもっていた。どうやら本心では納得していないようだ。
「コ、コルネリアス様……先ほどは助けていただきありがとうございました!」
「なに、クラスメイトとの仲がいいことに越したことはない。それに先ほども言ったが学園内なら無礼講でも構わないだろう」
「わたくしも色々な人たちと話したいので話しかけられるのは嬉しいですし。ですが様々な考えをもつ人がいるので、そのあたりは難しいところですね」
貴族社会としては身分が下の者から上の者に対して話しかけるのはマナー違反となる。これらは貴族にとっては常識ではあるが馴染みのないマリアからすれば知らなくて当然だろう。
けれど、そのようなルールを王立学園に適用してしまえば授業がままならなくなってしまう。だからこそ学園内においては身分に関係なく平等に扱う規則があるわけだ。
デニードを含め平民を下に見る貴族はそこそこいる。なかなか大変な学園生活になりそうだ。
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