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第13章 2度目の学園生活
1 新たな年を迎えて
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エスペルト王国の中心部に位置する王都エスペルトの王城前の広場。
建国祭の半ばにして年が明けてエスペルト歴1997年になった建国記念日でもある今日。城門のバルコニーから国王であるリーファスが顔を見せる日だ。
『すごい人ね。これだけ沢山の人はなかなか見ないわ』
プレアデスは実体化しない状態で私の傍から街の様子を眺めていて楽しそうに言葉にした。
この場所はもう一つ手前の門が閉じているため普段は立ち入ることのできなくなっている。基本的に王城に招待された客だけが通ることを許可される城の庭の一部となっているが、建国祭の期間だけは一般向けに開放されている。
そのような理由もあって、城門前の広場には大勢の人が集まっていた。それこそ、背の低い私では人ごみに押しつぶされてしまいそうなくらいだ。
『国王陛下の顔を見ることができる数少ない機会だからね。エスペルト王国の一年の中で一番めでたい日となっているから賑わいもかなりになるから』
即位式のように言葉をかけることはないが国王が顔を見せる数少ない機会だ。建国祭ということで王都を始めとした大都市は大規模な祭りとなっていて各国から商人たちがやってくることでも知られていた。様々な場所で出店なども多く出ていてかなりの賑わいを見せることで有名でもある。
『コルネリアスも顔を見せるのかしら?』
1年近く前に知り合ったコルネリアスやアスカルテとは、今でも定期的に手紙のやり取りをする関係が続いている仲だ。
互いの近況なども知っていてコルネリアスやアスカルテはそれぞれの両親の執務を手伝いつつも王立学園に通うための準備を進めていて、とても忙しい生活を送っているらしい。
逆に私の方は久しぶりのまったりとした1年だった。
できる限り魔力回路に治すために極力魔力を使わないようにしつつ、日々の鍛錬をして身体を鍛えたり各種武術を磨いていた。たまに王都の外にも出たが、王都近郊に発生した魔物の退治依頼を受けて冒険者としての実績を積むくらいだ。
『私の時も王位について初めて顔見せをしたから見せないんじゃないかな?』
『そう……少し残念ね』
『お願いすれば会えるといっても周りからの心証は良くないだろうし仕方がないわ』
一応、王城や公爵邸に面会依頼の手紙を出せば会うすることも可能だった。けれど、私たちの関係や事情を知らない人からすれば、ただの平民が王子や公爵令嬢と親しくしているわけで場違いなことだと思うだろう。
『あと少しもすれば王立学園で会えるから。それに会う機会はないと思うけれどラティアーナの頃に親しくしていた人たちと顔を合わせるのは……ね。今はこうして遠くから顔を見ることが出来れば十分だから』
コルネリアスの両親であり国王夫妻であるリーファスとコーネリア、アスカルテの両親でありグラディウス公爵夫妻であるアドリアスとスピカ。王城や公爵邸には他にもかつての知り合いや友人たちが大勢いるはずだ。
会いたい気持ちや罪悪感など様々な感情が混じっていて、複雑な気分で、気持ちの整理ができていない今では表情を変えずに接する自信はない。
「ただいまより陛下がお見えになる!」
「お!陛下が来るぞ」
「リーファス陛下!」
プレアデスと念話で会話をしていると城門からリーファスが姿を見せる知らせが響き渡り次第に辺りが騒がしくなってくる。
私は人と人の隙間を縫うようにしてできる限り前へと進み、のんとか人ごみの隙間から城門を見上げることができる場所に辿り着く。
すると、丁度リーファスが歩いてくるところだった。リーファスが城門のバルコニーに立って手を上げると周りから喝采の声が一斉に上がり歓声に場が包まれる。
私はリーファスの姿を見て、周りの雰囲気を感じて、懐かしさと嬉しさと喜びが胸一杯に広がった。
リーファスは、この10年と少しで随分と大人っぽくなっているが、どことなく当時の面影が残っている。背も更に伸びていて全体的に肉付きも良くなっていて身体も鍛え続けているのだろう。国王としての覇気が感じられて鋭い雰囲気と醸し出すいい男になっていた。
周りの反応からも、これらの歓声が言わされているものではなく本心からのものだと感じることができて民からも慕われていることを実感できる。
それらのことに、様々な感情が混ざり合い重なり合って、思わず目に涙が浮んできた。無意識に口角も上がってしまっていて涙を浮かべながら微笑んでいる状態だ。
『嬉しそうね』
『……ん。一目見ただけだけど、あんなに大きくなって、成長してるって感じることができたから』
いくつもの約束を破る結果にはなってしまったけれど、リーファスたちのことを守ることが出来て良かったと改めて思った。
『やっぱり直接会って話をしたいな。影から見守ることができたら良いと思っていたけれど……今世でも新しい関係を築きたい』
基本的に私から誰かにラティアーナの記憶を持っていることを告げるつもりはまだないけれど。それでも、少なくともティアとして新しい繋がりは持ちたい。そう思うことができた。
そして、さらに4ヶ月近い日々が過ぎて……
王立学園の入学試験の日がやってきた。
建国祭の半ばにして年が明けてエスペルト歴1997年になった建国記念日でもある今日。城門のバルコニーから国王であるリーファスが顔を見せる日だ。
『すごい人ね。これだけ沢山の人はなかなか見ないわ』
プレアデスは実体化しない状態で私の傍から街の様子を眺めていて楽しそうに言葉にした。
この場所はもう一つ手前の門が閉じているため普段は立ち入ることのできなくなっている。基本的に王城に招待された客だけが通ることを許可される城の庭の一部となっているが、建国祭の期間だけは一般向けに開放されている。
そのような理由もあって、城門前の広場には大勢の人が集まっていた。それこそ、背の低い私では人ごみに押しつぶされてしまいそうなくらいだ。
『国王陛下の顔を見ることができる数少ない機会だからね。エスペルト王国の一年の中で一番めでたい日となっているから賑わいもかなりになるから』
即位式のように言葉をかけることはないが国王が顔を見せる数少ない機会だ。建国祭ということで王都を始めとした大都市は大規模な祭りとなっていて各国から商人たちがやってくることでも知られていた。様々な場所で出店なども多く出ていてかなりの賑わいを見せることで有名でもある。
『コルネリアスも顔を見せるのかしら?』
1年近く前に知り合ったコルネリアスやアスカルテとは、今でも定期的に手紙のやり取りをする関係が続いている仲だ。
互いの近況なども知っていてコルネリアスやアスカルテはそれぞれの両親の執務を手伝いつつも王立学園に通うための準備を進めていて、とても忙しい生活を送っているらしい。
逆に私の方は久しぶりのまったりとした1年だった。
できる限り魔力回路に治すために極力魔力を使わないようにしつつ、日々の鍛錬をして身体を鍛えたり各種武術を磨いていた。たまに王都の外にも出たが、王都近郊に発生した魔物の退治依頼を受けて冒険者としての実績を積むくらいだ。
『私の時も王位について初めて顔見せをしたから見せないんじゃないかな?』
『そう……少し残念ね』
『お願いすれば会えるといっても周りからの心証は良くないだろうし仕方がないわ』
一応、王城や公爵邸に面会依頼の手紙を出せば会うすることも可能だった。けれど、私たちの関係や事情を知らない人からすれば、ただの平民が王子や公爵令嬢と親しくしているわけで場違いなことだと思うだろう。
『あと少しもすれば王立学園で会えるから。それに会う機会はないと思うけれどラティアーナの頃に親しくしていた人たちと顔を合わせるのは……ね。今はこうして遠くから顔を見ることが出来れば十分だから』
コルネリアスの両親であり国王夫妻であるリーファスとコーネリア、アスカルテの両親でありグラディウス公爵夫妻であるアドリアスとスピカ。王城や公爵邸には他にもかつての知り合いや友人たちが大勢いるはずだ。
会いたい気持ちや罪悪感など様々な感情が混じっていて、複雑な気分で、気持ちの整理ができていない今では表情を変えずに接する自信はない。
「ただいまより陛下がお見えになる!」
「お!陛下が来るぞ」
「リーファス陛下!」
プレアデスと念話で会話をしていると城門からリーファスが姿を見せる知らせが響き渡り次第に辺りが騒がしくなってくる。
私は人と人の隙間を縫うようにしてできる限り前へと進み、のんとか人ごみの隙間から城門を見上げることができる場所に辿り着く。
すると、丁度リーファスが歩いてくるところだった。リーファスが城門のバルコニーに立って手を上げると周りから喝采の声が一斉に上がり歓声に場が包まれる。
私はリーファスの姿を見て、周りの雰囲気を感じて、懐かしさと嬉しさと喜びが胸一杯に広がった。
リーファスは、この10年と少しで随分と大人っぽくなっているが、どことなく当時の面影が残っている。背も更に伸びていて全体的に肉付きも良くなっていて身体も鍛え続けているのだろう。国王としての覇気が感じられて鋭い雰囲気と醸し出すいい男になっていた。
周りの反応からも、これらの歓声が言わされているものではなく本心からのものだと感じることができて民からも慕われていることを実感できる。
それらのことに、様々な感情が混ざり合い重なり合って、思わず目に涙が浮んできた。無意識に口角も上がってしまっていて涙を浮かべながら微笑んでいる状態だ。
『嬉しそうね』
『……ん。一目見ただけだけど、あんなに大きくなって、成長してるって感じることができたから』
いくつもの約束を破る結果にはなってしまったけれど、リーファスたちのことを守ることが出来て良かったと改めて思った。
『やっぱり直接会って話をしたいな。影から見守ることができたら良いと思っていたけれど……今世でも新しい関係を築きたい』
基本的に私から誰かにラティアーナの記憶を持っていることを告げるつもりはまだないけれど。それでも、少なくともティアとして新しい繋がりは持ちたい。そう思うことができた。
そして、さらに4ヶ月近い日々が過ぎて……
王立学園の入学試験の日がやってきた。
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