王女の夢見た世界への旅路

ライ

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第12章 私を見つけるための旅

26 セルスト王都

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 セルスト王国の王都へ通じる正門へ辿り着いた私たちは衛兵の案内で詰め所のような場所にある広場へ向かった。
 そこにはセルスト王家の紋章を刻んだ馬車と近衛兵たちが待機していてサングレアのことを待っていたのだろう。
 サングレアが馬車から降りて無事な様子を見せると近衛兵たちは安堵したようで場の空気が少しだけ和らいだ。

「皆様、本当にありがとうございます。おかげさまで助かりました」

 サングレアは近衛兵たちと少し話をした後、私たちの元に戻ってきて頭を軽く下げる。隣ではアルマが小さな紙と袋を持って近付いてきた。

「レイさん依頼の完了証明です。それから追加の報酬分もこちらに」

「ありがとう。ギルドには伝えておく」

 レイが貰ったのは冒険者ギルドに提出する報告用の証明書の一部。
 護衛のように直接依頼者と接する依頼の達成は、冒険者ギルドの書類に依頼者がサインすることで完了と見做される。これを依頼者と冒険者がそれぞれギルドの受付に持っていくことで正式に完了となるわけだ。

 サングレアたちが近衛兵とともに王城へ向かったのを見送った後。
 私たちは依頼の完了を報告するために冒険者ギルド支部に向かうことにした。セルスト王都にある冒険者ギルド支部は正門前の広場に隣接しているようで直ぐ隣にある。依頼帰りの冒険者にとってはかなり使いやすい。

 冒険者ギルド支部の中に入ると、他のギルド支部よりも大きな喧騒に包まれていた。思ったよりも多くの人がギルドに滞在しているようだった。
 そのような中を突き進み、パーティーを代表してレイやレビンと共にカウンターへ向かって列へと並ぶ。
 待っている間に様々な視線が向けられて、耳を澄ませてみると様々な会話が聞こえてくる。

「レッドロアとブルーガーデンの合同か……隣の少女は誰だ?」
「大層な面子だな……」
「どっちもあと少しで昇格するかもしれないって噂だな」

 顔を見ただけで名前やパーティーが分かるほど知られている冒険者はそれほど多くない。それに加えて囁いている内容から感じるに両パーティの実力をほとんどの人が認めているようだ。

「お二人とも……どちらのパーティも有名なんですね」

「これでもそれなりに長い間冒険者をやってくるからな」

「レッドロアはベテランですからね。逆に私たちは全員魔術使いなので物珍しいだけですよ」

 レビンは謙遜しているが、珍しいだけではここまで褒め言葉は出てこないだろう。魔術が使えるだけで実力主義の冒険者たちが認めるほど甘くはないからだ。

「どっちも凄いと思いますよ?これだけたくさんの人が認めているんですから……それにしても王都とはいえ人が多すぎじゃないですか?」

 席は全て埋まっていて掲示板の近くにもスペースがないほど人が多い。これだけの人がギルドの中に居るのは、少なくとも緊急依頼の募集時のような場合を除いて初めて見るくらいだ。

「それは剣聖が王都にいるらしいからな

「剣聖って……二つ名ですか?」

「そうだ。Sランクパーティのヴァルキリア・ナイツ。疾風、武王、剣聖の二つ名を持つSランクの女冒険者三人構成と言われている」

 レイの説明では、数年前まで世界を旅していたパーティらしく王都のように人が多く住んでいる場所に滞在していることが少ないそうだ。顔を知っている者もほとんどいないそうだが、数々の逸話を残すくらいには活躍しているらしい。

「その中で剣聖は剣一本と体術だけであらゆる魔物を討伐する凄腕って聞いているな。噂じゃ姿を美しいらしくて貴族出身とか亡国の姫なんじゃないかとかっていう話もあるらしいぞ?」

 レイは噂なんて当てにならないほうが多いと断りつつも実力だけは確かだと告げた。

 そのような会話をしているうちに順番が回ってきたようで受付嬢から声を掛けられた。

「依頼の達成報告だ。これが証明書になる」

 レイが証明書を見せると「問題なさそうですね」と受付嬢が手続きをしてくれた。

「一人当たり小金貨三枚ですね。こちらをどうぞ。ご報告ありがとうございました」

 パーティごとに分けられた小金貨が入った袋を受けとって護衛依頼は完了となった。レッドロアやブルーガーデンはパーティメンバー分の報酬として受け取っているためパーティ分の報酬を引いてからそれぞれに分配するらしい。

「俺たちはこれから打ち上げるをするが皆はどうする?」

「私たちも参加しますよ。レッドロアの皆さんとも親睦を深めたいですし。ティアさんはどうします?」

「私は遠慮します。ちょっと疲れたので王都を少し見て回ってから休もうかと」

 無茶をしないように魔術を行使していたが負担が全くないわけじゃない。街に着いて安心したせいか身体が少し重くも感じていた。

「確かに顔色もあまり良くなさそうだしな。また機会があったら宴でもしようじゃないか」

「はい。また機会があれば」

 私はそう言って冒険者ギルドを後にして街へと出た。そして、宿を探しつつも街の様子を窺おうと繁華街のほうへ向かう。

「へぇ……石造りで綺麗な街だけど、なかなか複雑な造りをしているのね。それに意外と物騒じゃなくて平和かもね」

 王位争いやグランバルド帝国との問題もあって不穏だと聞いていたが王都に住んでいる人にまでは影響がないようだ。
 露店などもたくだんあって商売も盛んであるし、買い物を楽しんでいる人もそれなりにいる。少なくとも人気のある大通りから離れなければ物騒なことにはならなそうだった。

 そして、歩いているうちに見つけた丁度良さそうな宿に泊まることにした。一泊が小銀貨10枚くらいかかる部屋で、どれくらい滞在するか分からなかったので継続する時には追加で払っていく方法で部屋を借りる。

 この日は疲れも感じていたので早めに食事をとって眠ることにしたが、私が感じていたよりも消耗していたらしい。真夜中に暑苦しさと汗をかいた不快感で目を覚ますと熱があるようだった。
 結局、体調が回復するまでの二日ほど延長して寝込むことになった。
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