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第12章 私を見つけるための旅
18 ガロンとの別れ
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「んっ……ん?」
「おや。ティア起きましたか?」
ふとした揺れとガロンの声でどこかへと飛んでいた意識が覚醒する。いつの間にか寝ていたようで周りの景色は暗いものとなっていた。空には星が見えるようになっていて月明かりが私たちを静かに照らしていた。
「ごめん。結構寝てたみたい」
私たちが向かっている場所は、獣人国家の北東にある宿場街の近くの森。かつて私がカルラやガロンが出会った場所だ
予定では日が変わる前には目的地に到着することになる。
「大丈夫ですよ。長時間の飛行は慣れないと疲れますからね」
「私は背中に乗せてもらっているだけだから……むしろガロンにとっては寄り道だし本当に助かるよ」
桜花皇国から大陸まで地力で移動するなら船を使うしかない。だが、ラメルシェル王国方面とのやり取りが途絶えている以上は獣人国家よりも北側にある街へ行くしかなかった。
例えば過去に訪れたことのある冒険者の街グロリアスへは早くても二月かかるだろう。
そしてシャスタニアまで運んでくれたとしても、そこから獣人国家を出るまでは徒歩での移動になる。許可証があっても道中のことは自分でしなければならないため、一月以上はかかったはずだ。
「私の都合でもありますから……っと街が見えてきましたね」
ガロンが指し示した方向を見ると薄っすらと明かりが見える。それほど大きいわけではないようだが石造りの壁に覆われていて小さな街にしては、しっかりとしていそうだ。
「もっと集落みたいのを想像してたけど……」
「大陸の北側と獣人国家を結ぶとしたらこの場所が一番ですから」
地理的な問題になるが、北西部分は人間に対して敵対意識を持っている国が多く、東側は惑いの森があるせいで通行できない。
そのため、大陸の北側を拠点とする商人たちにとって、獣人国家と行き来するには重要な場所となっているそうだ。
最近では商人たちが向かうことが増えたこともあり街ができたらしい。
「だったらこの時間でも大丈夫そうね……」
街によっては夜間の間は門を開けないところもある。だが商隊を多く受け入れるような場所は例外な場合が多い。
この時間でも街に入れないという事はないだろう。
「これ以上近付くと危険なのでこの辺りで降りますよ」
「わかった。よろしくね」
ガロンはそう言うと森の中の少し開けた場所へワイバーンを着地させる。そして、ワイバーンの背から飛び降りると手をさし伸ばしてくれた。
「ありがとう」
私はガロンの手をとって地面へと降りる。
「どういたしまして。この辺りはそれなりに魔物も出るので気をつけて」
「ガロンこそ。帝国兵には気をつけてね」
この辺りは小国の領土にはなっているが管理されていない土地だった。だが最近になってグランバルド帝国の影響力が増していて、帝国の紋章を身につけた兵士たちを見かけることが多いそうだ。
今のガロンであればグランバルド帝国が相手でも負けないだろうが、見つからないに越したことはない。
「ええ。また会いましょう」
「またね」
ガロンは再びワイバーンに跨ると獣公国シャスタニアを目掛けて飛び立っていった。
見えなくなるまで空を見上げた私は大きく息を吐いて肩の力を抜く。
ラティアーナだった頃は一人旅も経験しているが、大半は誰かと一緒に過ごしていた。生まれ変わってからも誰かが常に近くにいた。
不意に訪れた静寂にふとこみ上げてくるものがある。
「静かね……」
私の言葉が風に乗って流れていく。風に揺られて、かさかさと鳴る葉の音に耳を傾けつつも、街のある方角へ向かうことにした。
見知らぬ森の中だが向かうべき方向は分かっている。加えて月が出ているこの夜は私にとって幸運だった。
一応歩いてきた道は覚えているが、月や星を見れば方角を見失うこともない。ある程度は今の時間を知ることができて、月明かりによって最低限の明かりも確保できている。
けれど、静寂な時間はすぐに終わりを迎える。
「っ……!?」
不意に足元に揺れを感じた。地震とはどこか違う大きな揺れ。
私は咄嗟に飛び退こうと身体強化を行使しようとするが、今の私では身体強化に耐えることができない。仕方がなく魔力を徐々に集めて右手に魔力糸を生成すると、近くにあった手頃な木に向けて放つ。放った魔力糸はアンカーのように私と木を繋ぎ合わせた。
「危なっ……」
地面が割れて黒い大きなものが湧き上がる瞬間、私は魔力糸を収縮させる。魔物の口に囚われる直前で私の身体は木の上へと手繰り寄せられた。
先程まで私がいた場所には、大きな魚のような魔物の姿があった。人くらいは簡単に飲み込めそうな口と牙を持つそれは、私を睨むような視線を向けてくる。
「初めて見る種類だし、この状況で戦うのは避けたいかな」
私は魔物を一瞥すると、そのまま魔力糸を使って木々の枝を伝うように移動するのだった。
そして、さらに半刻ほど経った頃、私はようやく森を出ることができた。そのまま近くの街道に向かって道沿いにしばらく歩き続けると、宿場街へ辿り着くことができた。
「おや。ティア起きましたか?」
ふとした揺れとガロンの声でどこかへと飛んでいた意識が覚醒する。いつの間にか寝ていたようで周りの景色は暗いものとなっていた。空には星が見えるようになっていて月明かりが私たちを静かに照らしていた。
「ごめん。結構寝てたみたい」
私たちが向かっている場所は、獣人国家の北東にある宿場街の近くの森。かつて私がカルラやガロンが出会った場所だ
予定では日が変わる前には目的地に到着することになる。
「大丈夫ですよ。長時間の飛行は慣れないと疲れますからね」
「私は背中に乗せてもらっているだけだから……むしろガロンにとっては寄り道だし本当に助かるよ」
桜花皇国から大陸まで地力で移動するなら船を使うしかない。だが、ラメルシェル王国方面とのやり取りが途絶えている以上は獣人国家よりも北側にある街へ行くしかなかった。
例えば過去に訪れたことのある冒険者の街グロリアスへは早くても二月かかるだろう。
そしてシャスタニアまで運んでくれたとしても、そこから獣人国家を出るまでは徒歩での移動になる。許可証があっても道中のことは自分でしなければならないため、一月以上はかかったはずだ。
「私の都合でもありますから……っと街が見えてきましたね」
ガロンが指し示した方向を見ると薄っすらと明かりが見える。それほど大きいわけではないようだが石造りの壁に覆われていて小さな街にしては、しっかりとしていそうだ。
「もっと集落みたいのを想像してたけど……」
「大陸の北側と獣人国家を結ぶとしたらこの場所が一番ですから」
地理的な問題になるが、北西部分は人間に対して敵対意識を持っている国が多く、東側は惑いの森があるせいで通行できない。
そのため、大陸の北側を拠点とする商人たちにとって、獣人国家と行き来するには重要な場所となっているそうだ。
最近では商人たちが向かうことが増えたこともあり街ができたらしい。
「だったらこの時間でも大丈夫そうね……」
街によっては夜間の間は門を開けないところもある。だが商隊を多く受け入れるような場所は例外な場合が多い。
この時間でも街に入れないという事はないだろう。
「これ以上近付くと危険なのでこの辺りで降りますよ」
「わかった。よろしくね」
ガロンはそう言うと森の中の少し開けた場所へワイバーンを着地させる。そして、ワイバーンの背から飛び降りると手をさし伸ばしてくれた。
「ありがとう」
私はガロンの手をとって地面へと降りる。
「どういたしまして。この辺りはそれなりに魔物も出るので気をつけて」
「ガロンこそ。帝国兵には気をつけてね」
この辺りは小国の領土にはなっているが管理されていない土地だった。だが最近になってグランバルド帝国の影響力が増していて、帝国の紋章を身につけた兵士たちを見かけることが多いそうだ。
今のガロンであればグランバルド帝国が相手でも負けないだろうが、見つからないに越したことはない。
「ええ。また会いましょう」
「またね」
ガロンは再びワイバーンに跨ると獣公国シャスタニアを目掛けて飛び立っていった。
見えなくなるまで空を見上げた私は大きく息を吐いて肩の力を抜く。
ラティアーナだった頃は一人旅も経験しているが、大半は誰かと一緒に過ごしていた。生まれ変わってからも誰かが常に近くにいた。
不意に訪れた静寂にふとこみ上げてくるものがある。
「静かね……」
私の言葉が風に乗って流れていく。風に揺られて、かさかさと鳴る葉の音に耳を傾けつつも、街のある方角へ向かうことにした。
見知らぬ森の中だが向かうべき方向は分かっている。加えて月が出ているこの夜は私にとって幸運だった。
一応歩いてきた道は覚えているが、月や星を見れば方角を見失うこともない。ある程度は今の時間を知ることができて、月明かりによって最低限の明かりも確保できている。
けれど、静寂な時間はすぐに終わりを迎える。
「っ……!?」
不意に足元に揺れを感じた。地震とはどこか違う大きな揺れ。
私は咄嗟に飛び退こうと身体強化を行使しようとするが、今の私では身体強化に耐えることができない。仕方がなく魔力を徐々に集めて右手に魔力糸を生成すると、近くにあった手頃な木に向けて放つ。放った魔力糸はアンカーのように私と木を繋ぎ合わせた。
「危なっ……」
地面が割れて黒い大きなものが湧き上がる瞬間、私は魔力糸を収縮させる。魔物の口に囚われる直前で私の身体は木の上へと手繰り寄せられた。
先程まで私がいた場所には、大きな魚のような魔物の姿があった。人くらいは簡単に飲み込めそうな口と牙を持つそれは、私を睨むような視線を向けてくる。
「初めて見る種類だし、この状況で戦うのは避けたいかな」
私は魔物を一瞥すると、そのまま魔力糸を使って木々の枝を伝うように移動するのだった。
そして、さらに半刻ほど経った頃、私はようやく森を出ることができた。そのまま近くの街道に向かって道沿いにしばらく歩き続けると、宿場街へ辿り着くことができた。
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