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第12章 私を見つけるための旅
11 桜花皇国へ
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ワイバーンによる長距離飛行の旅は順調そのものだった。
飛行ルートはシャスタニアから西に向かい獣人国家の上空を通って海へと抜ける。そして、海上からは南西に向かい桜花皇国を目指すというものだ。
獣人国家の上空全域は全ての国で共有するような仕組みらしい。獣人であれば上空を自由に通過できるそうだ。流石に外部の人間などは戦士団に囲まれてしまうそうだが、今回はガロンたちが同行しているため私たちも同じように通過することができる。
何度か小休止を挟みながらものんびりとした時間を過ごしていると昼過ぎくらいには海上まで辿り着いていた。
「さすがに早いね……もう少しきついかと思っていたから嬉しいわ」
ガロンの背中に捕まりながら周りを見渡しているとあっという間に陸地が遠ざかっていく。特別に用意してくれた風除けの魔術具のおかげで寒さも感じない。
「ですがここからが本番です。霊峰から離れると魔物が寄ってきますし、このあたりの海は天気が荒れやすい」
獣王がいる霊峰には外からやってくる魔物を遠ざける効果があるそうだ。中で育った魔物や下級な魔物であれば関係ないが強大な魔物は近付こうとしないらしい。
「早速お出ましのようですね」
私の眼では見えないがガロンからは魔物の姿を捉えているようだった。後ろのワイバーン部隊に対して手を向けて合図を出すと大きく旋回をする。
「魔物?」
「水龍の群れです。距離があればあまり襲ってきません」
ガロンの言葉通りしばらくすると青い鱗を纏っている飛龍のような物が十体近く飛んできた。
「あんなに遠くから見つけるなんて流石だね」
「鳥人種は視力が良いですから……っと。今度は艦隊がいます」
「ドルバイド帝国の船かな?」
「旗を見る限りは恐らく。ただ戦艦級が二隻。大型艦二隻、軽量級が四隻もいます。一応自由区域とはいえ穏やかじゃないですね」
空ばかり気にしていて気付かなかったが海上に小さな点のようなものが見える。もう少し近付いて見えるようになってくると、前後に戦艦を置いた単縦陣の艦隊が南西へと向かっていた。
「あの方向って……別の国とかないよね?」
「島国があるのはもう少し北です。あの方角は恐らくドルバイド帝国が保有している島ですね。住民は住んでいないはずですが軍の拠点になっていたはずです」
「そう……あまり時間はないのかもね」
大型艦は恐らく物資などを運ぶための輸送艦だろう。軍の拠点に大量の物資を運んでいるとなると、帝国軍は大きな動きを見せるかもしれない。
漠然とした不安を感じるのだった。
それからも、魔物の群れとは何度か遭遇することは会ったが幸い戦闘になることはなかった。。
そして、しばらく時間が経つと大きな影のような物が次第に見えてくるようになる。
「あの大きな木……?あれって何?」
最初、巨大な影に見えていた物は、巨大な木のような形をしていた。まるで海から巨大な樹木が生えているようだが、あまりの大きさに距離感が掴めそうになかった。
「あれが桜花皇国ですよ」
「……っ!?」
紫陽や黒羽から話は聞いていた。億年桜と呼ばれる原初より存在する霊樹。夜月や桜陽の原料でもあるその樹は、巨大な樹木で一生桜の華が咲き続けると。
だが、まさか国全体に及ぶほどの大きさだとは思ってもいなかった。
「桜花皇国には大地がありません。島の全ては霊樹の上にあるのです」
驚きのあまり言葉に詰まっていると紫陽が教えてくれた。
どうやら、億年桜は海底の地中深くから聳え立っているらしく、海上より少し高い位置くらいになると巨大な枝が外へと広がっているそうだ。中央部分は他の国と同じで大地があり山や川といった自然もあるらしい。
イメージとしては木の上にある島があるようなものだそうだ。
「あと少し近づくと視認できる結界があります。空から入ろうとすると弾かれるので海上近くに高度を落としてください。四方に扉があるので結界の周りを迂回すれば見つけられるはずです」
「全員高度を落とすぞ!」
ガロンは紫陽に首肯して戦士団に向けて号令を出してワイバーンの高度を徐々に落としていく。波に触れない程度に降下してしばらく飛び続けると、薄らと虹色に輝いている膜のようなものが見えてくる。
紫陽が説明してくれた結界なのだろう。
「私について来い……間違っても結界に触れないように」
「もし触れると物理的に吹き飛ばされるので気をつけてください。速度が速いほど衝撃が強くなりますから」
ガロンの指示に紫陽が補足して説明する。
結界の基幹となる部分がわからないため結界の細かい効果を知ることはできない。けれど、虹色の魔力は全属性であることを証明しているようなものだ。込められた魔力量をとってみても、かなりのものであることが考えられる。
戦士団の皆は紫陽の言葉に顔を引き攣らせながらも結界の周囲を旋回し始めた。少しだけ進むと虹色の膜が途切れていて、円状に開いている場所へと辿り着く。
「その中です!」
私たちは、扉のように開かれている場所へ飛び込んだ。
飛行ルートはシャスタニアから西に向かい獣人国家の上空を通って海へと抜ける。そして、海上からは南西に向かい桜花皇国を目指すというものだ。
獣人国家の上空全域は全ての国で共有するような仕組みらしい。獣人であれば上空を自由に通過できるそうだ。流石に外部の人間などは戦士団に囲まれてしまうそうだが、今回はガロンたちが同行しているため私たちも同じように通過することができる。
何度か小休止を挟みながらものんびりとした時間を過ごしていると昼過ぎくらいには海上まで辿り着いていた。
「さすがに早いね……もう少しきついかと思っていたから嬉しいわ」
ガロンの背中に捕まりながら周りを見渡しているとあっという間に陸地が遠ざかっていく。特別に用意してくれた風除けの魔術具のおかげで寒さも感じない。
「ですがここからが本番です。霊峰から離れると魔物が寄ってきますし、このあたりの海は天気が荒れやすい」
獣王がいる霊峰には外からやってくる魔物を遠ざける効果があるそうだ。中で育った魔物や下級な魔物であれば関係ないが強大な魔物は近付こうとしないらしい。
「早速お出ましのようですね」
私の眼では見えないがガロンからは魔物の姿を捉えているようだった。後ろのワイバーン部隊に対して手を向けて合図を出すと大きく旋回をする。
「魔物?」
「水龍の群れです。距離があればあまり襲ってきません」
ガロンの言葉通りしばらくすると青い鱗を纏っている飛龍のような物が十体近く飛んできた。
「あんなに遠くから見つけるなんて流石だね」
「鳥人種は視力が良いですから……っと。今度は艦隊がいます」
「ドルバイド帝国の船かな?」
「旗を見る限りは恐らく。ただ戦艦級が二隻。大型艦二隻、軽量級が四隻もいます。一応自由区域とはいえ穏やかじゃないですね」
空ばかり気にしていて気付かなかったが海上に小さな点のようなものが見える。もう少し近付いて見えるようになってくると、前後に戦艦を置いた単縦陣の艦隊が南西へと向かっていた。
「あの方向って……別の国とかないよね?」
「島国があるのはもう少し北です。あの方角は恐らくドルバイド帝国が保有している島ですね。住民は住んでいないはずですが軍の拠点になっていたはずです」
「そう……あまり時間はないのかもね」
大型艦は恐らく物資などを運ぶための輸送艦だろう。軍の拠点に大量の物資を運んでいるとなると、帝国軍は大きな動きを見せるかもしれない。
漠然とした不安を感じるのだった。
それからも、魔物の群れとは何度か遭遇することは会ったが幸い戦闘になることはなかった。。
そして、しばらく時間が経つと大きな影のような物が次第に見えてくるようになる。
「あの大きな木……?あれって何?」
最初、巨大な影に見えていた物は、巨大な木のような形をしていた。まるで海から巨大な樹木が生えているようだが、あまりの大きさに距離感が掴めそうになかった。
「あれが桜花皇国ですよ」
「……っ!?」
紫陽や黒羽から話は聞いていた。億年桜と呼ばれる原初より存在する霊樹。夜月や桜陽の原料でもあるその樹は、巨大な樹木で一生桜の華が咲き続けると。
だが、まさか国全体に及ぶほどの大きさだとは思ってもいなかった。
「桜花皇国には大地がありません。島の全ては霊樹の上にあるのです」
驚きのあまり言葉に詰まっていると紫陽が教えてくれた。
どうやら、億年桜は海底の地中深くから聳え立っているらしく、海上より少し高い位置くらいになると巨大な枝が外へと広がっているそうだ。中央部分は他の国と同じで大地があり山や川といった自然もあるらしい。
イメージとしては木の上にある島があるようなものだそうだ。
「あと少し近づくと視認できる結界があります。空から入ろうとすると弾かれるので海上近くに高度を落としてください。四方に扉があるので結界の周りを迂回すれば見つけられるはずです」
「全員高度を落とすぞ!」
ガロンは紫陽に首肯して戦士団に向けて号令を出してワイバーンの高度を徐々に落としていく。波に触れない程度に降下してしばらく飛び続けると、薄らと虹色に輝いている膜のようなものが見えてくる。
紫陽が説明してくれた結界なのだろう。
「私について来い……間違っても結界に触れないように」
「もし触れると物理的に吹き飛ばされるので気をつけてください。速度が速いほど衝撃が強くなりますから」
ガロンの指示に紫陽が補足して説明する。
結界の基幹となる部分がわからないため結界の細かい効果を知ることはできない。けれど、虹色の魔力は全属性であることを証明しているようなものだ。込められた魔力量をとってみても、かなりのものであることが考えられる。
戦士団の皆は紫陽の言葉に顔を引き攣らせながらも結界の周囲を旋回し始めた。少しだけ進むと虹色の膜が途切れていて、円状に開いている場所へと辿り着く。
「その中です!」
私たちは、扉のように開かれている場所へ飛び込んだ。
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