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第11章 壊れかけのラメルシェル
2 剣聖の技術
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「こちらとしても嬉しい申し出ですけど……アンクリース様じゃなくローエンディッシュ様と?」
「あと数年もすればアンクリースの方が強いだろうが今はまだ儂に分がある。まぁ儂であってもお主に勝てるかわからんがのう」
私としてもローエンディッシュの力をラメルシェル王国最強クラスの力を実感してみたいと考えていた。
それに実力者との戦いは私自身の成長にも繋がるだろう。
ここで断る理由もない。むしろ望むところだ。
「私もローエンディッシュ様とも戦ってみたいと思ってました。ぜひ、お願いします」
「そう言ってもらえると嬉しいの……ここは公平に訓練用の木剣でどうだ?」
私としても同じ武器で戦うほうが相手の技術を体感できる。その提案はむしろ大歓迎だった。
私とローエンディッシュは木剣を手に取ると訓練場にあがった。
そして、向き合ったまま互いに見つめあうこと少し。
私は身体強化とともに魔力を纏わせた剣を振り下ろす。
同時に剣と剣が交差して甲高い音とともに爆発したような衝撃が発生した。
合図を交わしたわけではないが私が動くのと同時にローエンディッシュも動いていたのだ。
「っ……重い剣ですね」
「そちらこそ……これでも全力なのだが、な!」
鍔競り合いになったことで少しだけ静かな時間が流れる。
そして、そのまま互いの剣の応酬が始まった。剣を受け流し弾き隙を見て攻撃する。
「むっ……」
すると次第に私が防御に回る回数が増えてきた。
ローエンディッシュの身体捌きから次の一手を予知している。それでも私の動きが読まれているかのようだった。
ローエンディッシュは私が今まで戦ってきた人間のなかでは一番上手いだろう。
経験が豊富な武人は今までもいた。それこそエスペルト王国の前元帥のドミニク、グランバルド帝国のデトロークなどだ。
総合的な戦力ではローエンディッシュよりも二人のほうが強いだろう。だが、魔剣や魔術を抜きにして考えるとローエンディッシュに分がある。
「っ!?」
長い剣戟のなかで僅かな隙が生じてしまった。時間からすればほんの一瞬、だけど高速で動く私たちからすれば十分な時間だ。
ローエンディッシュは両手で剣を構え直すと一気に振り下ろしてきた。
「なっ!?」
「ふむ。剣を砕くつもりで放ったのだがな。なかなかやりおる」
避けることも受け流すこともできなかった私は剣を交差させるように受け止めた。だが、剣にかかる衝撃は今までの比ではない。剣どころか持っている腕までも折られてしまいそうな威力だ。
咄嗟に後方に跳躍していなしたが剣を見ると僅かにひびが入ったのが見える。
「私の魔装を貫くとは……さすがですね」
私たちの武器は同じだ。つまり纏っている魔力を突破されない限りは片方の剣だけが傷つくことはありえないはずだった。
仮に衝撃に剣が耐えられなかったとしても刀身全体に負荷がかかるため、打ち合った部分にだけひびが入るはずがない。
「コツがあるのでな。制限なしでは勝てんじゃろうが剣くらいでは勝たねば立つ瀬がないと言うものよ!」
ローエンディッシュは素早く距離を詰めると連続して剣を振り続ける。
ひびが入った剣では先ほどと同等の威力のある斬撃を何度も受け止めることができなかった。
「私の負けね……」
何回目か剣を受け止めたときに私の剣がバキンと音を立てる。
剣が半ばから砕け折れたことで模擬戦は終了となった。
「その歳でそこまでとは恐れ入るわい。単純な剣術であれば儂に勝るとも劣らんだろう。魔力の扱いに差がでたの」
「これでも魔力の操作には自信があったはずですけどね……」
「悔しいが魔力制御だけで見ればお主に分がある。じゃが魔力の波長を変えるという点においては儂のほうが上手かった。ということじゃ」
私が思わず「魔力の波長?」と聞きかえるとローエンディッシュは「うむ」と言って説明してくれた。
私も使うことができる魔力を斬る技術。あれは対象の魔力と半分同調し、もう半分を反発させることで魔力の結びつきを斬っているそうだ。
そして波長は大きく分けて同調や反発、浸透、増幅、消滅などがあるらしい。
「むろん、波長の効果がそのままでるわけではないがの。例えば消滅などは相手の魔力と相殺させる形だが、相手も同じように消滅させようとすれば同じ波長同士となって普通に魔力同士をぶつけるのと変わらん」
「なるほど……でも、いいのですか?アイラに協力していても部外者だと思いますけど」
「剣を打ち合わせれば相手の在り方を感じ取ることができる。お主には悪いようにはならんだろうよ」
ローエンディッシュはニヤリと笑みを浮かべると「さあ訓練は終了じゃ!夜にでも話し合いたいのう」と言った。
訓練場を離れた私たちはアンクリースに連れられて外にでていた。
街の中でも山に近い場所へ歩いていくとどこからとなく独特な匂いがしてくる。
「わっ……ずいぶんときつい匂いですね」
「まるで卵が腐ったような刺激的な匂いだな……」
紫陽と黒羽は手で鼻を押さえながら顔を顰めている。そんな様子を苦笑しながら見ていたアンクリースは私のほうを見て意外そうに口を開いた。
「ティアさんは平気なのですね。国外から来る人は大体あのような反応をしますのに」
「硫黄の匂いですよね?他の場所で温泉に行ったことがありますから」
「なるほど……では、私のおすすめを案内しますからもう少しですよ!」
ノーランド王国のトランスポートスクエアでも温泉を訪れていた。だが、あの時は私一人だったため皆で入るのは今回が初めてだ。
「あと数年もすればアンクリースの方が強いだろうが今はまだ儂に分がある。まぁ儂であってもお主に勝てるかわからんがのう」
私としてもローエンディッシュの力をラメルシェル王国最強クラスの力を実感してみたいと考えていた。
それに実力者との戦いは私自身の成長にも繋がるだろう。
ここで断る理由もない。むしろ望むところだ。
「私もローエンディッシュ様とも戦ってみたいと思ってました。ぜひ、お願いします」
「そう言ってもらえると嬉しいの……ここは公平に訓練用の木剣でどうだ?」
私としても同じ武器で戦うほうが相手の技術を体感できる。その提案はむしろ大歓迎だった。
私とローエンディッシュは木剣を手に取ると訓練場にあがった。
そして、向き合ったまま互いに見つめあうこと少し。
私は身体強化とともに魔力を纏わせた剣を振り下ろす。
同時に剣と剣が交差して甲高い音とともに爆発したような衝撃が発生した。
合図を交わしたわけではないが私が動くのと同時にローエンディッシュも動いていたのだ。
「っ……重い剣ですね」
「そちらこそ……これでも全力なのだが、な!」
鍔競り合いになったことで少しだけ静かな時間が流れる。
そして、そのまま互いの剣の応酬が始まった。剣を受け流し弾き隙を見て攻撃する。
「むっ……」
すると次第に私が防御に回る回数が増えてきた。
ローエンディッシュの身体捌きから次の一手を予知している。それでも私の動きが読まれているかのようだった。
ローエンディッシュは私が今まで戦ってきた人間のなかでは一番上手いだろう。
経験が豊富な武人は今までもいた。それこそエスペルト王国の前元帥のドミニク、グランバルド帝国のデトロークなどだ。
総合的な戦力ではローエンディッシュよりも二人のほうが強いだろう。だが、魔剣や魔術を抜きにして考えるとローエンディッシュに分がある。
「っ!?」
長い剣戟のなかで僅かな隙が生じてしまった。時間からすればほんの一瞬、だけど高速で動く私たちからすれば十分な時間だ。
ローエンディッシュは両手で剣を構え直すと一気に振り下ろしてきた。
「なっ!?」
「ふむ。剣を砕くつもりで放ったのだがな。なかなかやりおる」
避けることも受け流すこともできなかった私は剣を交差させるように受け止めた。だが、剣にかかる衝撃は今までの比ではない。剣どころか持っている腕までも折られてしまいそうな威力だ。
咄嗟に後方に跳躍していなしたが剣を見ると僅かにひびが入ったのが見える。
「私の魔装を貫くとは……さすがですね」
私たちの武器は同じだ。つまり纏っている魔力を突破されない限りは片方の剣だけが傷つくことはありえないはずだった。
仮に衝撃に剣が耐えられなかったとしても刀身全体に負荷がかかるため、打ち合った部分にだけひびが入るはずがない。
「コツがあるのでな。制限なしでは勝てんじゃろうが剣くらいでは勝たねば立つ瀬がないと言うものよ!」
ローエンディッシュは素早く距離を詰めると連続して剣を振り続ける。
ひびが入った剣では先ほどと同等の威力のある斬撃を何度も受け止めることができなかった。
「私の負けね……」
何回目か剣を受け止めたときに私の剣がバキンと音を立てる。
剣が半ばから砕け折れたことで模擬戦は終了となった。
「その歳でそこまでとは恐れ入るわい。単純な剣術であれば儂に勝るとも劣らんだろう。魔力の扱いに差がでたの」
「これでも魔力の操作には自信があったはずですけどね……」
「悔しいが魔力制御だけで見ればお主に分がある。じゃが魔力の波長を変えるという点においては儂のほうが上手かった。ということじゃ」
私が思わず「魔力の波長?」と聞きかえるとローエンディッシュは「うむ」と言って説明してくれた。
私も使うことができる魔力を斬る技術。あれは対象の魔力と半分同調し、もう半分を反発させることで魔力の結びつきを斬っているそうだ。
そして波長は大きく分けて同調や反発、浸透、増幅、消滅などがあるらしい。
「むろん、波長の効果がそのままでるわけではないがの。例えば消滅などは相手の魔力と相殺させる形だが、相手も同じように消滅させようとすれば同じ波長同士となって普通に魔力同士をぶつけるのと変わらん」
「なるほど……でも、いいのですか?アイラに協力していても部外者だと思いますけど」
「剣を打ち合わせれば相手の在り方を感じ取ることができる。お主には悪いようにはならんだろうよ」
ローエンディッシュはニヤリと笑みを浮かべると「さあ訓練は終了じゃ!夜にでも話し合いたいのう」と言った。
訓練場を離れた私たちはアンクリースに連れられて外にでていた。
街の中でも山に近い場所へ歩いていくとどこからとなく独特な匂いがしてくる。
「わっ……ずいぶんときつい匂いですね」
「まるで卵が腐ったような刺激的な匂いだな……」
紫陽と黒羽は手で鼻を押さえながら顔を顰めている。そんな様子を苦笑しながら見ていたアンクリースは私のほうを見て意外そうに口を開いた。
「ティアさんは平気なのですね。国外から来る人は大体あのような反応をしますのに」
「硫黄の匂いですよね?他の場所で温泉に行ったことがありますから」
「なるほど……では、私のおすすめを案内しますからもう少しですよ!」
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