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第9章 ターニングポイント
44 生命を燃やして
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身体が許容できるぎりぎりの身体強化に加えて溢れた魔力を放出することによるブースト。
今までの中で最高速の斬撃だ。二本の刀も生命力を纏わせたことで、今まで以上の斬撃をもって十字に斬り裂こうとした。
「速度はましになった……でもその程度じゃ意味はない。何よりその剣じゃ斬れないよ」
二本の刀は悪魔の身体を捉えたがそれだけだった。より濃密な魔力を放っている悪魔の身体に刃が通らない。
悪魔は刃を受けたまま腕を振るう。咄嗟に魔術の盾を張るが、盾は砕かれ私は遠くへ吹き飛ばされた。
「ぐっ……文字通り、生命をかけているのに……今の攻撃が通らないのは嫌になってくるわね」
全身を強く打ちつけた衝撃で息が詰まる。何本か骨がやられた気がしたが気にしている余裕はなさそうだった。
「生命力っていうのは魔力の上位互換のようなものだ。扱い次第で莫大な力になるけど、人程度の生命力を纏ったところで意味がない。早く諦めてくれないかなぁ?」
悪魔は巨大な魔力弾を放つ。高速で飛来する魔力弾を前に、体勢を崩した私では避けられそうにない。辰月に魔力を込め、斬り伏せようと刀を振るう。けれど濃密な魔力を斬ることは叶わなかった。
直撃は避けたものの魔力弾に弾き飛ばされてしまう。
「諦めないって……言ったはずよ!」
何度も全身を痛めつけられたことで無理やり塞いだ傷口が開く。肩が真っ赤に染まり腕を血が伝う。刀にも血が流れて……
私は刀を横に薙ぎ払った。
刀に付いた血は私の魔力が多分に含まれている。魔力の核となり巨大な魔力の刃へと変貌した。
けれど魔力の刃も悪魔には通らない。悪魔は魔力の小さな針のようなものを複数顕現させると一斉に放ってきた。
咄嗟に横へ跳躍するが完全には避けることができなかった。
「はぁっ…本当に、悪魔ってのは……」
魔術による防御が施されているはずの服は、ぼろぼろに破れ赤黒く染まっている。身体強化も魔装も簡単に貫き、こちらの攻撃は一切通らない。
本当に次元が違う……理不尽な存在だ。今までどんな強敵と戦っても勝てる可能性は1%以上あった。だけど今回は勝てる見込みが全く見えない。逃げる手段もない。
それでも諦める選択肢はなかった。致命傷だけは避けるようにして悪魔へと斬りかかる。攻撃が通らなくても良い。ただ糸口だけでも見つかれば良い。そんな考えだった。
私は無心で空間を駆けて刀を振るう。徐々に周りの速度がゆっくりになっていくのを感じた。それでも悪魔の速度は速すぎて反応するのが関の山だった。
「君のその執念には驚きを隠せないね。絶望しかないこの状況で、それでも僕を倒す方法を考えている。仮に僕のことをどうにかできたとしても君の運命は変わらないのに……君も理解しているのだろう?君は傷を負いすぎた。魔術による治療は傷を治すことはできてもなかったことにはできないのだから」
悪魔の言った意味は理解しているつもりだ。治癒魔術も万能じゃない。傷を塞ぐことと、生命力を高めることで自然治癒と同じことまでしかできない。失った血液や生命力は戻らない。
今まで以上に死が間近にあるこの状況は、とても恐怖を感じている。けれど、それ以上に恐怖を覚え嫌だと感じることがある。
「みんなには謝らないといけないわね……約束を守れないことも私が嫌いなことを大切な人たちにさせてしまうことも」
私は持っていた回復薬や液状化魔力を全て口に流し込む。無理やり魔力を回復させさらに周囲の魔力を取り込み続けた。身体強化に回せなかった魔力は身体と刀に纏わせ、それでも余った分は回りに渦巻くように放出する。
「虹色の魔力……全属性の魔力を纏ったのか。本当に後のことは考えていないようだね」
「私の全力であなたを倒す!それに辰月も夜月も答えてくれたみたいね」
二本の刀には戦いの最中、魔力と生命力を注ぎ続けていた。二本の刀は、ここにきて漸く私になじんでくれたようだ。辰月からは黒龍の力を帯びた魔力が放たれていて、夜月からは黒い力が放たれるとともに刀に眠る記憶が流れ込んでくる。
「武器に眠る残滓や魂を解放したか……まさかこの時代で武器の完全解放を目にすることができるなんてね」
悪魔は大きな魔力の槍を放ってくる。それに対し、私は夜月を斬り下ろして魔力の槍を左右に斬った。
「へぇ?」
「やっと理解できたわ。外から見た技術だけじゃ上手くいかないわけよね」
カレナやフレアが会得している魔力を斬る技術。何度見ても何度練習を繰り返しても会得することができなかった技術の一つだった。
けれど夜月のかつての担い手の経験、戦いの記憶を感じ取ったことで技の本質を理解した。大事なのは力ではなく斬る魔力に合わせること。同調まではいかなくても魔力の波長をあわせることが鍵だったわけだ。
「魔力を斬ることができるようになったくらいで状況は変わらないよ。絶望して死ぬと良い」
「何があっても絶望なんてしないわ!」
たとえ力が及ばないとしても、悪魔だけは倒す。それだけは変わらないことだ。
私が全力で戦うことができる時間は残り少し。最後の勝負が始まった。
今までの中で最高速の斬撃だ。二本の刀も生命力を纏わせたことで、今まで以上の斬撃をもって十字に斬り裂こうとした。
「速度はましになった……でもその程度じゃ意味はない。何よりその剣じゃ斬れないよ」
二本の刀は悪魔の身体を捉えたがそれだけだった。より濃密な魔力を放っている悪魔の身体に刃が通らない。
悪魔は刃を受けたまま腕を振るう。咄嗟に魔術の盾を張るが、盾は砕かれ私は遠くへ吹き飛ばされた。
「ぐっ……文字通り、生命をかけているのに……今の攻撃が通らないのは嫌になってくるわね」
全身を強く打ちつけた衝撃で息が詰まる。何本か骨がやられた気がしたが気にしている余裕はなさそうだった。
「生命力っていうのは魔力の上位互換のようなものだ。扱い次第で莫大な力になるけど、人程度の生命力を纏ったところで意味がない。早く諦めてくれないかなぁ?」
悪魔は巨大な魔力弾を放つ。高速で飛来する魔力弾を前に、体勢を崩した私では避けられそうにない。辰月に魔力を込め、斬り伏せようと刀を振るう。けれど濃密な魔力を斬ることは叶わなかった。
直撃は避けたものの魔力弾に弾き飛ばされてしまう。
「諦めないって……言ったはずよ!」
何度も全身を痛めつけられたことで無理やり塞いだ傷口が開く。肩が真っ赤に染まり腕を血が伝う。刀にも血が流れて……
私は刀を横に薙ぎ払った。
刀に付いた血は私の魔力が多分に含まれている。魔力の核となり巨大な魔力の刃へと変貌した。
けれど魔力の刃も悪魔には通らない。悪魔は魔力の小さな針のようなものを複数顕現させると一斉に放ってきた。
咄嗟に横へ跳躍するが完全には避けることができなかった。
「はぁっ…本当に、悪魔ってのは……」
魔術による防御が施されているはずの服は、ぼろぼろに破れ赤黒く染まっている。身体強化も魔装も簡単に貫き、こちらの攻撃は一切通らない。
本当に次元が違う……理不尽な存在だ。今までどんな強敵と戦っても勝てる可能性は1%以上あった。だけど今回は勝てる見込みが全く見えない。逃げる手段もない。
それでも諦める選択肢はなかった。致命傷だけは避けるようにして悪魔へと斬りかかる。攻撃が通らなくても良い。ただ糸口だけでも見つかれば良い。そんな考えだった。
私は無心で空間を駆けて刀を振るう。徐々に周りの速度がゆっくりになっていくのを感じた。それでも悪魔の速度は速すぎて反応するのが関の山だった。
「君のその執念には驚きを隠せないね。絶望しかないこの状況で、それでも僕を倒す方法を考えている。仮に僕のことをどうにかできたとしても君の運命は変わらないのに……君も理解しているのだろう?君は傷を負いすぎた。魔術による治療は傷を治すことはできてもなかったことにはできないのだから」
悪魔の言った意味は理解しているつもりだ。治癒魔術も万能じゃない。傷を塞ぐことと、生命力を高めることで自然治癒と同じことまでしかできない。失った血液や生命力は戻らない。
今まで以上に死が間近にあるこの状況は、とても恐怖を感じている。けれど、それ以上に恐怖を覚え嫌だと感じることがある。
「みんなには謝らないといけないわね……約束を守れないことも私が嫌いなことを大切な人たちにさせてしまうことも」
私は持っていた回復薬や液状化魔力を全て口に流し込む。無理やり魔力を回復させさらに周囲の魔力を取り込み続けた。身体強化に回せなかった魔力は身体と刀に纏わせ、それでも余った分は回りに渦巻くように放出する。
「虹色の魔力……全属性の魔力を纏ったのか。本当に後のことは考えていないようだね」
「私の全力であなたを倒す!それに辰月も夜月も答えてくれたみたいね」
二本の刀には戦いの最中、魔力と生命力を注ぎ続けていた。二本の刀は、ここにきて漸く私になじんでくれたようだ。辰月からは黒龍の力を帯びた魔力が放たれていて、夜月からは黒い力が放たれるとともに刀に眠る記憶が流れ込んでくる。
「武器に眠る残滓や魂を解放したか……まさかこの時代で武器の完全解放を目にすることができるなんてね」
悪魔は大きな魔力の槍を放ってくる。それに対し、私は夜月を斬り下ろして魔力の槍を左右に斬った。
「へぇ?」
「やっと理解できたわ。外から見た技術だけじゃ上手くいかないわけよね」
カレナやフレアが会得している魔力を斬る技術。何度見ても何度練習を繰り返しても会得することができなかった技術の一つだった。
けれど夜月のかつての担い手の経験、戦いの記憶を感じ取ったことで技の本質を理解した。大事なのは力ではなく斬る魔力に合わせること。同調まではいかなくても魔力の波長をあわせることが鍵だったわけだ。
「魔力を斬ることができるようになったくらいで状況は変わらないよ。絶望して死ぬと良い」
「何があっても絶望なんてしないわ!」
たとえ力が及ばないとしても、悪魔だけは倒す。それだけは変わらないことだ。
私が全力で戦うことができる時間は残り少し。最後の勝負が始まった。
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